538 / 585
クランに関わる人間関係
35 北の侯爵の領地の出来事 2
しおりを挟む
「ふーん、君もシルバーって言うんだ?それ、本名?」
「あ、当たり前だろ?」
シルバーはじーっと狼人の目を見ている。狼人は耐えられなくなったようでふと目を逸らす。そちらにはレッドが居て今度はレッドと目が合う。
この時シルバーとレッドは自白するように精神に作用する魔法を使っていた。最もレッドは自分では使えないのでシルバーから魔法の展開をそのまま送ってもらう形で使っている。他の世界風にいうとコピー&ペーストだとアキラに教わったなとレッドは思う。
そもそもはアキラが竜体から元に戻る戻り方を覚える時にシルバーに今のレッドと同じことをやられて覚えた事からこのやり方をコピー&ペーストと呼び始めたのだ。
空間転移やいくつかの攻撃魔法、ゴールディの得意とする癒しの魔法などをそのコピー&ペーストでアキラは手に入れていた。
下を向いてしまった狼人の顔をシルバーは両手にはさんで自分の方へ向けさせる。必死にシルバーから目を逸らすも既に視界の中にシルバーが居るので目を逸らす事に意味はなかった。
「君、本名は」
「グレイ」
竜人が竜の端末に従うのとはまた違う感じでこの狼人はシルバーに従った。
「グレイ、私の眼を見なさい」
シルバーとグレイは見つめあったまましばらくたつとグレイがそのまま椅子から落ちた。グレイは意識がなくなっていた。
「グレイは狼国を抜けて来た人間みたいだね。冒険者になって合法的に外に出る知恵すらなかったみたい」
シルバーはグレイを見下ろす。その目は相手に対する感情はない。この場にいたレッド、カイ、ヴァイキー以外はその人間味の無さにぞっとしていた。
「抜けた理由があの国の絶対的な身分制度に対する不満。あと、多分だけどというか本人は気が付いてないけど王家の誰かの落し胤だ。王家の血の匂いがする。……向こうの国に引き渡したらいいと思う。表の銀狼に街とか荒らした罪状はかぶってもらうのもありだしこの半端なガキを晒すもよし」
侯爵は眉間を揉んでいたが決心したようだ。
「冒険者ギルドに預けよう。ギルド長ならよしなにしてくれるだろう?」
「……侯爵、もしかしてデヴィッド達を揶揄うつもりが?」
侯爵はにやりとする。
「そもそも我が領は狼国とは離れているのにここにこの男が居るのは何故だ?もっと過ごしやすいところもあるはずだろう?なのにこの時期にここに来ている意味がわからん」
侯爵の指示でグレイは拘束された。レッドはクロに念話を送る。
『そっちにデヴィッドいるか?』
『いるな。書類と格闘しておる』
『今日中に狼人の厄介事持ち込むって言っといて。銀狼をつれた狼人』
『わかった。グレイとか言うやつか?』
『ん?シルバーから知らせてた?』
『いや、手配書が回ってきてる。その銀狼は第3王女でグレイが誘拐したと近隣の国に書類が回っとる。あ、手配書見たのは王宮にいる貴族端末な。クロで見たわけじゃない』
レッドは面倒くさい事にならなきゃいいが、と思っていた。
「侯爵、こいつら拠点に運ぶわ。拠点だったらデヴィッドと繋ぎやすい」
「わかった。どうやって連れて行く?」
「俺がグレイを担ぐ」
ヴァイキーが言い、レッドは外の銀狼を連れてくると。
「ちょい暴れると面倒だから、カイは坊主と遊んで気を逸らしててくれ。おっさんは……廊下は誰も出ないようにしててくれ。大人しく運べても大きい狼に怯えるやつがいても不思議じゃない」
そうしてヴァイキーは早々に拠点にグレイを持って行き捕縛袋を用意したりしてレッドを待った。
一方レッドは前庭の土山の一番上に開けた空気穴を自分が入れるくらいの大きさにする。
「失礼するよ、王女様」
銀狼がピクリと顔を上げた。
「あ、当たり前だろ?」
シルバーはじーっと狼人の目を見ている。狼人は耐えられなくなったようでふと目を逸らす。そちらにはレッドが居て今度はレッドと目が合う。
この時シルバーとレッドは自白するように精神に作用する魔法を使っていた。最もレッドは自分では使えないのでシルバーから魔法の展開をそのまま送ってもらう形で使っている。他の世界風にいうとコピー&ペーストだとアキラに教わったなとレッドは思う。
そもそもはアキラが竜体から元に戻る戻り方を覚える時にシルバーに今のレッドと同じことをやられて覚えた事からこのやり方をコピー&ペーストと呼び始めたのだ。
空間転移やいくつかの攻撃魔法、ゴールディの得意とする癒しの魔法などをそのコピー&ペーストでアキラは手に入れていた。
下を向いてしまった狼人の顔をシルバーは両手にはさんで自分の方へ向けさせる。必死にシルバーから目を逸らすも既に視界の中にシルバーが居るので目を逸らす事に意味はなかった。
「君、本名は」
「グレイ」
竜人が竜の端末に従うのとはまた違う感じでこの狼人はシルバーに従った。
「グレイ、私の眼を見なさい」
シルバーとグレイは見つめあったまましばらくたつとグレイがそのまま椅子から落ちた。グレイは意識がなくなっていた。
「グレイは狼国を抜けて来た人間みたいだね。冒険者になって合法的に外に出る知恵すらなかったみたい」
シルバーはグレイを見下ろす。その目は相手に対する感情はない。この場にいたレッド、カイ、ヴァイキー以外はその人間味の無さにぞっとしていた。
「抜けた理由があの国の絶対的な身分制度に対する不満。あと、多分だけどというか本人は気が付いてないけど王家の誰かの落し胤だ。王家の血の匂いがする。……向こうの国に引き渡したらいいと思う。表の銀狼に街とか荒らした罪状はかぶってもらうのもありだしこの半端なガキを晒すもよし」
侯爵は眉間を揉んでいたが決心したようだ。
「冒険者ギルドに預けよう。ギルド長ならよしなにしてくれるだろう?」
「……侯爵、もしかしてデヴィッド達を揶揄うつもりが?」
侯爵はにやりとする。
「そもそも我が領は狼国とは離れているのにここにこの男が居るのは何故だ?もっと過ごしやすいところもあるはずだろう?なのにこの時期にここに来ている意味がわからん」
侯爵の指示でグレイは拘束された。レッドはクロに念話を送る。
『そっちにデヴィッドいるか?』
『いるな。書類と格闘しておる』
『今日中に狼人の厄介事持ち込むって言っといて。銀狼をつれた狼人』
『わかった。グレイとか言うやつか?』
『ん?シルバーから知らせてた?』
『いや、手配書が回ってきてる。その銀狼は第3王女でグレイが誘拐したと近隣の国に書類が回っとる。あ、手配書見たのは王宮にいる貴族端末な。クロで見たわけじゃない』
レッドは面倒くさい事にならなきゃいいが、と思っていた。
「侯爵、こいつら拠点に運ぶわ。拠点だったらデヴィッドと繋ぎやすい」
「わかった。どうやって連れて行く?」
「俺がグレイを担ぐ」
ヴァイキーが言い、レッドは外の銀狼を連れてくると。
「ちょい暴れると面倒だから、カイは坊主と遊んで気を逸らしててくれ。おっさんは……廊下は誰も出ないようにしててくれ。大人しく運べても大きい狼に怯えるやつがいても不思議じゃない」
そうしてヴァイキーは早々に拠点にグレイを持って行き捕縛袋を用意したりしてレッドを待った。
一方レッドは前庭の土山の一番上に開けた空気穴を自分が入れるくらいの大きさにする。
「失礼するよ、王女様」
銀狼がピクリと顔を上げた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
64
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる