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やっぱりお茶会
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「ま、妾妃様の手から第一王子を引き取った正妃様が一番の功労者よね」
サラ姉様が小さな砂糖菓子を摘んで口に入れる。第一王子の引き取りは多分父が進言したんだろうと私と兄は読んでます。王子宮がかなり警備が厳しくて妾妃様からアルベルト殿下を引き離して再教育するのに最適だったのです。10歳頃まで私はアルベルト殿下を大嫌いでした。小学生男子の嫌な所を煮詰めたような子供だったので。
正妃様の元で育ち始めて数年、中等部に上がるころには王子らしい態度も身につけ、それまで殿下を毛嫌いしていた兄も殿下とちゃんと交流をもつようになったのです。
そんな経緯もあったな、と思い出していると。
「ブランシュ様はあの図書館の騒ぎどうするんですか?」
キトリー様が好奇心をみなぎらせて訊ねてきます。
「いえ、これと言って……。あれ、なんなんですか?」
キトリー様が呆れてます。
「ブランシュ様、頼みますよ。私たち評判最悪の派閥の長を抱くことになっちゃいます、このままじゃ」
「なんの話?」
サラ姉様に聞かれ先日の図書館の話をしたら……、やばいものが出てきました。サラ姉様のモンペムーブです。私が嫌かどうかを度外視するとベルトラン兄様にも負けないくらいの愛情を私に注ぐのがサラ姉様なのです。実妹のエリーゼと気が合わないけど私はそれこそ実妹であるかのように構い倒されたりしてました。キトリー様が話してしまいます。
「そう、やっぱりあの女……。みんな悪いけど力かして。見た通りブランシュはちょっと抜けてるし他人の悪意に慣れてないの」
いや、そんなことないのだけど……。面倒なんだけど、あの手のひと。
「面倒くさがってるし」
サラ姉様にはバレてた……。
「それが自分にかかってきた時、ひいては家の面子にかかわるって思ってないでしょ、ブランシュ」
……これは後で説教コースだな、きっと。怒り泣きするサラ姉様は可愛いので素直に話聞いてしまう。
「あの手のタイプは引いたら引いた分厚かましくなるのよ、わかってる?」
わかってるけど……わかってたんだけど、対処する気力が萎えるっていうか。
「叔母様の為にも妾妃様に付け入らせないようにしないとね、ブランシュ」
う、一番の弱みつかれた感。
「多分、ピンクの会は未だに妾妃様の息はかかってると思う。アニエス嬢が知らなくても、ね。あそこを実質動かしてるのは誰か調べないと」
「リディ様の件もありますし、公爵家の影を動かすのはまずいでね」
キャロライ様がお茶にやっと手をつけた。
「ああ、フェルナン使って王家の影使わせてもらうのが良いかな?」
「あの、私に王家の影がついているらしいのとフーシェ家の方が証言してくださるとか」
サラ姉様が悪い顔で微笑みます。
「利用できるものはしないとね」
「フーシェ伯爵家って王妃様の従妹の方が嫁がれた所ね」
サラ姉様が呟く。言われてみればそうでした。……王家の影ってフーシェ伯爵令息様自身なのかも。穿ちすぎかな。
リディ様を送っていった兄が帰ってくる頃令嬢方も帰宅して私と姉様も普段着のワンピースに着替えている。このワンピースは私が子供の頃、この世界のドレス然とした服が嫌で家のお針子さんに縫ってもらい、母がそれに目をつけて自分用に作ってもらい……と我が家の家着になってます。腰の低い位置で切り替えているので急ぐ時にはそこにサッシュを巻くだけである程度形になります。アンティークドールの服を連想していただければいいかと。
サラ姉様は気に入ったらしく私のものから幾枚かお譲りしました。お針子さんたちは張り切って私と姉様の為に新しいものを縫ってくれてます。今日は姉様はカスタードクリーム色のワンピースを、私は濃い灰色のワンピースを着ています。
「ふーん」
兄が感心したような声を上げます。
「どうしたの?」
サラ姉様が兄に声を掛けます。
「いや、我々は血縁があるんだなってしみじみ。サラ姉様とブランシュ、細部がよく似ててね。頤のラインとかうなじとか肌の色とか」
ヘンな所に関心持つのね、兄様って。
サラ姉様が小さな砂糖菓子を摘んで口に入れる。第一王子の引き取りは多分父が進言したんだろうと私と兄は読んでます。王子宮がかなり警備が厳しくて妾妃様からアルベルト殿下を引き離して再教育するのに最適だったのです。10歳頃まで私はアルベルト殿下を大嫌いでした。小学生男子の嫌な所を煮詰めたような子供だったので。
正妃様の元で育ち始めて数年、中等部に上がるころには王子らしい態度も身につけ、それまで殿下を毛嫌いしていた兄も殿下とちゃんと交流をもつようになったのです。
そんな経緯もあったな、と思い出していると。
「ブランシュ様はあの図書館の騒ぎどうするんですか?」
キトリー様が好奇心をみなぎらせて訊ねてきます。
「いえ、これと言って……。あれ、なんなんですか?」
キトリー様が呆れてます。
「ブランシュ様、頼みますよ。私たち評判最悪の派閥の長を抱くことになっちゃいます、このままじゃ」
「なんの話?」
サラ姉様に聞かれ先日の図書館の話をしたら……、やばいものが出てきました。サラ姉様のモンペムーブです。私が嫌かどうかを度外視するとベルトラン兄様にも負けないくらいの愛情を私に注ぐのがサラ姉様なのです。実妹のエリーゼと気が合わないけど私はそれこそ実妹であるかのように構い倒されたりしてました。キトリー様が話してしまいます。
「そう、やっぱりあの女……。みんな悪いけど力かして。見た通りブランシュはちょっと抜けてるし他人の悪意に慣れてないの」
いや、そんなことないのだけど……。面倒なんだけど、あの手のひと。
「面倒くさがってるし」
サラ姉様にはバレてた……。
「それが自分にかかってきた時、ひいては家の面子にかかわるって思ってないでしょ、ブランシュ」
……これは後で説教コースだな、きっと。怒り泣きするサラ姉様は可愛いので素直に話聞いてしまう。
「あの手のタイプは引いたら引いた分厚かましくなるのよ、わかってる?」
わかってるけど……わかってたんだけど、対処する気力が萎えるっていうか。
「叔母様の為にも妾妃様に付け入らせないようにしないとね、ブランシュ」
う、一番の弱みつかれた感。
「多分、ピンクの会は未だに妾妃様の息はかかってると思う。アニエス嬢が知らなくても、ね。あそこを実質動かしてるのは誰か調べないと」
「リディ様の件もありますし、公爵家の影を動かすのはまずいでね」
キャロライ様がお茶にやっと手をつけた。
「ああ、フェルナン使って王家の影使わせてもらうのが良いかな?」
「あの、私に王家の影がついているらしいのとフーシェ家の方が証言してくださるとか」
サラ姉様が悪い顔で微笑みます。
「利用できるものはしないとね」
「フーシェ伯爵家って王妃様の従妹の方が嫁がれた所ね」
サラ姉様が呟く。言われてみればそうでした。……王家の影ってフーシェ伯爵令息様自身なのかも。穿ちすぎかな。
リディ様を送っていった兄が帰ってくる頃令嬢方も帰宅して私と姉様も普段着のワンピースに着替えている。このワンピースは私が子供の頃、この世界のドレス然とした服が嫌で家のお針子さんに縫ってもらい、母がそれに目をつけて自分用に作ってもらい……と我が家の家着になってます。腰の低い位置で切り替えているので急ぐ時にはそこにサッシュを巻くだけである程度形になります。アンティークドールの服を連想していただければいいかと。
サラ姉様は気に入ったらしく私のものから幾枚かお譲りしました。お針子さんたちは張り切って私と姉様の為に新しいものを縫ってくれてます。今日は姉様はカスタードクリーム色のワンピースを、私は濃い灰色のワンピースを着ています。
「ふーん」
兄が感心したような声を上げます。
「どうしたの?」
サラ姉様が兄に声を掛けます。
「いや、我々は血縁があるんだなってしみじみ。サラ姉様とブランシュ、細部がよく似ててね。頤のラインとかうなじとか肌の色とか」
ヘンな所に関心持つのね、兄様って。
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