悪役令嬢はヒロインと関わりたくない【完結】

あくの

文字の大きさ
20 / 65

妾妃様のサロン

しおりを挟む
 「そういう時間、俺達側近候補は妾妃様のお茶会で『給仕係』をさせられてたよ。おかげでお茶を入れるのが上手くなった」

兄様が笑うが……何、それ?!

「大商人から爵位をもらい立てだったシリルの親を取り込みたかったのかあの頃はお召がすごかった。妾妃様……、俺らを色香の方で操ろうとしてたけど、いわば友達の母親な訳で。その上まだガキだったしな。俺とエリクとアルフォンスはあれで妾妃様が苦手になった。シリルはちゃっかり利用してたけど」

シリル様……。あの当時のシリル様、可愛いだけの年下の子に見えてましたよ、私とサラ姉様には。

「で、それがシリルの父親にバレて陛下に訴えて我々のお召は当初の通り殿下の遊び相手だけになったのと、正妃様の所に殿下が移ったのとで妾妃様の権力を削いだんだよな。シリルは……知ってたのかもしれないとは思ってるけど」

兄様達、シリル様をかなり頼ってて買ってる感じがあるのですよね。

「あの当時、10歳の頃だったな。シリルにその妾妃様が最初だったのかって聞いたら『まさか。もうとうの昔に済ませてるよ』って。8歳の頃に乳母から教わったそうで」

「はあ。……なんであの方女性に困らないのか」

「シリルから誘ったことはないと思う。お前の学友二人もよく待ち伏せしてたぞ」

彼女達自身は己を被害者だと主張してたけど。

「あと、シリル自身は相手に対してくるもの拒まず去る者追わずのスタンスだしな」

「お付き合いしてる方に誠実にあろうとは思っておられないって事ですね」

声に呆れが滲んでしまった。

「いや、誰とも付き合ってない」

「……乱れ切ってますわね」

「それでもかまわないって言う女性側もだろ?」

その辺は思うところはありますが。

「私としては許容外のお話になりますわね」

「ふむ」

兄様は私を考える目で見る。

「ブランシュは恋をしたことがない?」

ま、兄様は本当の事を行っておこう。いや、事実のみを言うって言うべきかな?

「今の所私の好奇心やなにやも含めて心を揺らす殿方はいらっしゃいません」

きっぱりと言う。

「あまり殿方を見ていても楽しくはないですね。可愛い女の子がきゃっきゃしてるのを見る方が楽しいくらい」

兄様が舞台に出ている俳優や女性に人気絶頂の美形の騎士様の名前を挙げる。

「ああいうやつらを見てときめいたりしないの?」

「造形が美しい男性だな、としか。兄様然り側近候補の皆さま然り、今兄様が名前を挙げた男性方よりも美形で造形が美しくはありますがそれによって心が動いたりはありません」

そうだよ、こっちの世界では父親も伯父様も含め美しい男性ばかり目に入ってて美形には目が慣れてしまっている。個人的な顔の好みの男性だとアルフォンス様かな、という程度で。
 関わりたくないけどアニエス様だって外見は可愛いとは思う。美形とは思わないけど。

「ブランシュの好みは難しいなぁ」

「難しいも何も好みがないので。強いて言えば好奇心をそそる方、ですかね」

兄様は呆れた顔になる。

「おいおい、悪い男に騙されそうな事を」

自分でもそれは気をつけたいと思ってる。前世でやらかしたしね、それ。

「貴族の娘ですもの。政略結婚するならそれはそれ、だと思ってます。割り切ってますよ?」

今の私ではだれか、というのもないですしね。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。 時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。 数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。 自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。 はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。 短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました を長編にしたものです。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく

犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。 「絶対駄目ーー」 と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。 何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。 募集 婿入り希望者 対象外は、嫡男、後継者、王族 目指せハッピーエンド(?)!! 全23話で完結です。 この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

[完結]私、物語りを改竄します。だって、女神様が全否定するんだもん

紅月
恋愛
病気で死んだけど、生まれ変わる前に号泣する女神様に会った。 何やらゲームのパッケージを見て泣きながら怒っている。 「こんなの私の世界で起こるなんて認めない」 あらすじを読んでいた私に向かって女神様は激おこです。 乙女ゲームはやった事ないけど、この悪役令嬢って書かれている女の子に対してのシナリオ、悲惨だ。 どのストーリーを辿っても処刑一択。 ならば私がこの子になってゲームのシナリオ、改ざんすると女神様に言うと号泣していた女神様が全属性の魔力と女神様の加護をくれる、と商談成立。 私は悪役令嬢、アデリーン・アドラー公爵令嬢としてサレイス王国で新しい家族と共に暮らす事になった。

処理中です...