悪役令嬢はヒロインと関わりたくない【完結】

あくの

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陛下暴走した?

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 「陛下一人の暴走だとしたら?」

兄様がウワァ、という表情かおになる。

「ボンクラとはいえ……」

私と兄様の声が揃う。

「国で一番の権力者だから」

「国で一番の権力者ですもの」

二人で顔を見合わせて笑う。

「正妃様どうするんでしょう」

「明朝、この推測も含めて報告する。アルベルト殿下の話をまとめたのは正妃様とご実家だ。他家は口を出せない」

兄様は冷静に戻った。そしてアルベルト『殿』と敬称を付け出したと言うことは兄の中で『親しい人』と言うカテゴリーからアルベルト殿下が外れたのだな、と察する。
 エリーゼも居なくなったのでサラ姉様は実家に戻った。末っ子がお家に居て、と寂しがったからだ。先日ベルトラン兄様から丁寧な令状と私とサラ姉様におそろいのリボンのアクセサリーが贈られた。我が国ではリボンのアクセサリーは女性に対して贈るものの中で重い意味がないもので『妹みたいな存在』に贈るものだった。
 『妹みたい』って言葉のうさん臭さはどの世界だって変わらないと思ってるんですけどね。



 正妃様が母様と遊びに行くらしい。

「ブランシュも行く?」

「いえ、……マダム同士のお茶会に混じれるほど大人じゃありませんので。それに今日はキャロライン先輩とお菓子を作るので」

「あらぁ、女の子同士いいわねぇ」

正妃様が笑顔になる。

「帰ってきたらおすそ分け待ってるわ」

正妃様にねだられた!

「……普通のクッキーですよ?」

「娘が作ったクッキーは私には無理だったから可愛がってる親戚の子からのクッキーが欲しいな」

こういう時正妃様は大人なのに可愛い。

「ブランシュ、俺のも忘れないでよ?」

兄様が言う。知ってるチェッカークッキー好きだもんね。

「サラ姉様と食べる?」

「食べるよ!」

「わかった。多めに作る」

正妃様は私たち二人をちょっと羨まし気に見つめる。

「私も娘が欲しかった」

正妃様の本音なんだろうな。

「娘作る前にあの陛下バカと揉めちゃってね」

正妃様の口元が自嘲してるのか歪んでいる。

「エルシー、今日はどこにいきましょう?」

正妃ヴァイオレット様、ゆるっと一回り歩いて決めましょう」

母様と正妃様は少女のようにウキウキしながら部屋を出て行った。

「俺も菓子作り、手伝いたいところなんだけど。ジャックの復習に付き合うんで王宮へ行ってくる。護衛にシリルおいてるからなにかあったら俺の部屋に飛び込め」

「あら、シリル様いらっしゃってるの?」

「昨日から泊まり込みで執筆中」

ああ、『ローワン』のお仕事なのね。



 キャロライン先輩が我が家に来た。魔法杖を持って。これは氷魔法が出る杖で魔力さえあれば私のような魔法が使えない人間でも使えるという優れもの。使う魔石で使える魔法が変わるのだとか。魔法に関して興味がないから知らなかったけど……私、護身用に持っておこうかな。剣はどへただし、体術はもってのほか、レベルだし。

 と、とりあえず。二人できゃっきゃとクッキーを作っていく。二人の周りの数と予備を考えて1Kgの小麦粉で生地を作っていく。二人で材料は分担して持ち込んでいるので本当に半分こする予定。そうそう小麦粉を少し取り分けてチェッカークッキーとは別の柔らかめの生地を作る。生地を絞り出して……

 大きな天板一枚分だけ、ジャム付きのクッキーを作った。これは明後日の放課後の派閥のお茶会で出す予定。

「綺麗ですね、これ」

「作り終わった後のお茶で少し頂きましょう」


 後始末まで終えてお茶を、と思ったら昼ご飯を大分過ぎていた。余った卵白は監督でついていたメイド長がナッツをつかったガシガシしたマカロンを作ってくれた。

「マカロンは数がありませんからお茶の時に召し上がってください」

メイド長はそう言いながら調理台の上で冷めるのを待っているクッキーは部屋に持っていきますからお二人は食堂で軽食を、と追い立てられてしまった。

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