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23. 被害は鼻の頭だけ
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ノアイユの本館の一室ではリリーが少年たちの愚痴を聞いている。
「何を言ってるんだか。あのね、ちゃんと稼いでいったらいくらでも贅沢できるでしょうが」
リリーの低い声が走る。
「貴方たちはやり直しのチャンスを与えられてるのに。そんな誠意すら周りの大人に見せられないの?」
「縁きりの書類を送ってきたのは母親だ」
アンドレはふてくされている。
「アンドレもディオンも」
リリーの目が座っている。未だに王国のユリと呼ばれる美貌は健在で豊かな金褐色の髪はプライベートなので降ろされている。白い顔の中で緑色の瞳が光る。
「貴方達は万が一があれば自分が家を背負わなくてはいけないという覚悟をしていなかったでしょう。小娘に手玉に取られて。家の経済をがたがたにして」
リリーは一瞬息を継ぎディオンに向き直る。
「貴女の母親が北の領地の出身だから裕福なので国庫の穴埋めが出来たわ。王妃様もユージェニーの再従妹であるので連帯責任という事で手伝った。それでもまだ足りない。それを5年で返せるように、と仕事まで用意して」
リリーはアンドレに向き直る。
「アンドレはノアイユの名を騙った。ベル=イルはほぼ全財産を使って債権を買った。貴方はその責任をどうとるおつもり?ステファニーとの結婚でノアイユを自由にできるなんて思いあがった理由は?」
二人ともふてくされた表情だ。
「アンドレ、ディオン。あの小娘に煽られた自覚はある?」
リリーは侮蔑の表情になる。
「ディオンは、そうねぇ『王子でしょ?国のお金は貴方のお金よね?』とでも?アンドレは『ノアイユの一人娘の婿、それってノアイユの全財産自由にできるのよね』かしら。何一つ正しくないわ。……貴方達の祖母も似たような事言ってるでしょうね」
リリーは祖母世代が現モンテロー公爵と怪しいという噂が自分たちの世代の女性に根強く流れていたなと思い出し夫に告げている。
その噂はただの噂だとは思っていたが、些細な事でも告げておくとなにかのきっかけになるかもと思っていた。
二人は釈然としない顔をしている。そう、何故それが行けないのかわかっているのにアリシアの言葉の方が正義で正しいのだ、彼らの中で。
リリーはこの二人に対する魅了の根強さに戦慄した。
「そう。……貴方達は暫くうちに来てもらいます。ま、ディオンは知ってるわね。王弟宮。ジョフロアはまだ王籍離脱してないから。オディロンのボケは離脱して家を構えたけど。ジョフロアは貴方達になにかあった時の為のスペアとして王籍から離れてないの。そうね、王弟宮で大人しくしていたらどちらとも、近いうちに二人の父親と会わせるわ」
そういうとリリーは後ろに控えていた執事に合図をする。
「失礼します」
執事が低い声で呪文を唱え、ディオンとアンドレは一瞬で眠り込んだ。
リリーは庭に出て少年たちの間に治まった。
「ディオンもアンドレもまだ魅了が抜けきってない感じ」
「さっき話してたのですが」
レイが単刀直入にリリーに報告する。
「うちの手の者が魅了の石のほかに『魅了の香水』を使ったんではないかと。ここにいる四人はそれぞれの理由でその香水を嫌ったんですけど。今、フェルナンの同僚で落ちたやつに話を聞いてもらってます」
「あの娘、祟るわね。今はモンテロー公爵の囲い者、っていう体になってるんだって?」
「しかしあの娘も普通にしてたら可愛い子だしこんな馬鹿な事に関わらなきゃいいのに」
ノエルがそう言うとリリーは思いっきりノエルの鼻先を弾いた。
「っ」
声にならないくらい痛かったようで、ノエルは鼻を抑えて悶絶している。
「多分、貴方達が生まれるよりもっと前から仕込まれてる。それこそモンテロー公爵すら駒だろうしね」
リリーは悶絶しているノエルをちらりと見てにっこりとほほ笑んだ。
「何を言ってるんだか。あのね、ちゃんと稼いでいったらいくらでも贅沢できるでしょうが」
リリーの低い声が走る。
「貴方たちはやり直しのチャンスを与えられてるのに。そんな誠意すら周りの大人に見せられないの?」
「縁きりの書類を送ってきたのは母親だ」
アンドレはふてくされている。
「アンドレもディオンも」
リリーの目が座っている。未だに王国のユリと呼ばれる美貌は健在で豊かな金褐色の髪はプライベートなので降ろされている。白い顔の中で緑色の瞳が光る。
「貴方達は万が一があれば自分が家を背負わなくてはいけないという覚悟をしていなかったでしょう。小娘に手玉に取られて。家の経済をがたがたにして」
リリーは一瞬息を継ぎディオンに向き直る。
「貴女の母親が北の領地の出身だから裕福なので国庫の穴埋めが出来たわ。王妃様もユージェニーの再従妹であるので連帯責任という事で手伝った。それでもまだ足りない。それを5年で返せるように、と仕事まで用意して」
リリーはアンドレに向き直る。
「アンドレはノアイユの名を騙った。ベル=イルはほぼ全財産を使って債権を買った。貴方はその責任をどうとるおつもり?ステファニーとの結婚でノアイユを自由にできるなんて思いあがった理由は?」
二人ともふてくされた表情だ。
「アンドレ、ディオン。あの小娘に煽られた自覚はある?」
リリーは侮蔑の表情になる。
「ディオンは、そうねぇ『王子でしょ?国のお金は貴方のお金よね?』とでも?アンドレは『ノアイユの一人娘の婿、それってノアイユの全財産自由にできるのよね』かしら。何一つ正しくないわ。……貴方達の祖母も似たような事言ってるでしょうね」
リリーは祖母世代が現モンテロー公爵と怪しいという噂が自分たちの世代の女性に根強く流れていたなと思い出し夫に告げている。
その噂はただの噂だとは思っていたが、些細な事でも告げておくとなにかのきっかけになるかもと思っていた。
二人は釈然としない顔をしている。そう、何故それが行けないのかわかっているのにアリシアの言葉の方が正義で正しいのだ、彼らの中で。
リリーはこの二人に対する魅了の根強さに戦慄した。
「そう。……貴方達は暫くうちに来てもらいます。ま、ディオンは知ってるわね。王弟宮。ジョフロアはまだ王籍離脱してないから。オディロンのボケは離脱して家を構えたけど。ジョフロアは貴方達になにかあった時の為のスペアとして王籍から離れてないの。そうね、王弟宮で大人しくしていたらどちらとも、近いうちに二人の父親と会わせるわ」
そういうとリリーは後ろに控えていた執事に合図をする。
「失礼します」
執事が低い声で呪文を唱え、ディオンとアンドレは一瞬で眠り込んだ。
リリーは庭に出て少年たちの間に治まった。
「ディオンもアンドレもまだ魅了が抜けきってない感じ」
「さっき話してたのですが」
レイが単刀直入にリリーに報告する。
「うちの手の者が魅了の石のほかに『魅了の香水』を使ったんではないかと。ここにいる四人はそれぞれの理由でその香水を嫌ったんですけど。今、フェルナンの同僚で落ちたやつに話を聞いてもらってます」
「あの娘、祟るわね。今はモンテロー公爵の囲い者、っていう体になってるんだって?」
「しかしあの娘も普通にしてたら可愛い子だしこんな馬鹿な事に関わらなきゃいいのに」
ノエルがそう言うとリリーは思いっきりノエルの鼻先を弾いた。
「っ」
声にならないくらい痛かったようで、ノエルは鼻を抑えて悶絶している。
「多分、貴方達が生まれるよりもっと前から仕込まれてる。それこそモンテロー公爵すら駒だろうしね」
リリーは悶絶しているノエルをちらりと見てにっこりとほほ笑んだ。
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