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本編
家族団らん、そしてたくらみ事
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「前陛下の母親は側妃で早くに亡くなられた人でね」
マルグリットはジリオーラに対する説明を付け加える。
「で、彼の後ろ盾に前の前の正妃様が付いたんだけど……。あの二人の王子、エドワードとローランね、二人の王子をそれはそれは甘く育てたのよ。王太后様がシュガーコーティングした上に蜂蜜に漬けたくらい甘く育てたの。だから、婚約者の負担がすごかったわ。先代の陛下達自身はそこまででもなかったけど」
夕飯の時間になる。ソフィーはリナの手を借りて支度をする。胸の下で切り替えるさらりとしたドレスだ。セシルも同じデザインのドレスでセシルが嫁して以来のおそろいコーデで髪型まで揃えている。
二人は手を繋いでにこにこと笑いあっていてそこには少女時代の二人の姿が重なるようだった。が、父親と3人の兄が食堂に入ってきてソフィーを抱きしめた。みな横にいるセシルの頭を撫でる。子供の時とかわらない光景だった。
「あなたたち、ソフィーが潰れます」
マルグリットの冷静な声で兄達も父親も冷静になった。
「す、すまん、ソフィー」
「痛かったか?ソフィー」
ソフィーはジリオーラの店でジリオーラに強固に主張されて癒しの力をもつ治癒兵にあばらを治してもらっておいてよかったとしみじみ思った。教会の神官の手を煩わせるのをためらっていたソフィーにジリオーラはある提案をした。
傭兵団にいる治癒兵に手を借りよう、と。ソフィーはためらったがリナが同意し、さっさと治癒兵を雇って治してもらったのだ。
リナは娼館にいる間、娼婦たちのこまごまな用事をかたづけて小遣いを貰い、治癒兵を雇える程度の金を持っていたのだ。
「さて、私たちがローラン陛下が手に入れた小遣い、ソフィーを売ったという証文ごとソフィーを買い取った、そういう体裁にしたいの」
夕食後、マルグリット、ジリオーラ、ディオンで話し合っている。
「証文は持ってきてるわ」
「では売買契約書を」
「わかったわ。……うちの娼館のものではないとい証明にもなるしね」
今いるアラン王の国は魔法が発達しているがローランの国は魔法に重きをおいてはいない。治癒魔法士もこちらの国では街中に医院をもっていたり、錬金術師や薬師と組んで治癒院を開いたりしているがローランの国では治癒が出来るのは神官や傭兵団の治癒兵、そして冒険者くらいであった。
教会の神官の治癒は初歩の治癒魔法は無料で、喜捨を頂く形になっているが大がかりな治癒魔法はよほどお金を持っている人間や貴族にしか支払えない料金であった。
そういう諸々を考えてソフィーは魔法による治癒を考えなかったのだ。また傭兵団や冒険者の事は思いつかなかった。ジリオーラとリナは先ず冒険者を当たったが、その時期は王都に治癒能力のある冒険者がおらず次点の傭兵団となったのだ。
「傭兵雇ったって聞いたのだけど、その分のお金は我が家が出すわ」
「いえ、リナが出してるので彼女に支払ってあげてね。うちの娼婦たちの用事を片付けてお小遣いを貰っていたらしくて。あの子が買ってきた朝市の月夜草のオイルとかうちの子達にも大人気。愛用のオイルを変えた子もいたわ」
マルグリットはジリオーラの話にさもありなん、と頷く。
「それ、ソフィーの愛用のオイルね。5年くらい前に朝市でみつけたらしくて。我が家は店に直接頼んでたの……よね。そう言えばお店に連絡しなきゃ」
マルグリットが色々ぶつぶつ言い出した。ディオンがやっと口を開く。
「娘とリナをありがとうございました」
ジリオーラは艶然とほほ笑んだ。
「ローラン陛下が我が店にソフィー嬢を連れてきたので良かったです。まぁ、あの男の言い値を出せるのはうちくらいでしょうけど」
ソフィーを売ったローランは自分の年費の倍以上を手に入れて、そのあぶく銭を結局、ジリオーラの店にすべて落とす事になるとはジリオーラも想像していなかった。
マルグリットはジリオーラに対する説明を付け加える。
「で、彼の後ろ盾に前の前の正妃様が付いたんだけど……。あの二人の王子、エドワードとローランね、二人の王子をそれはそれは甘く育てたのよ。王太后様がシュガーコーティングした上に蜂蜜に漬けたくらい甘く育てたの。だから、婚約者の負担がすごかったわ。先代の陛下達自身はそこまででもなかったけど」
夕飯の時間になる。ソフィーはリナの手を借りて支度をする。胸の下で切り替えるさらりとしたドレスだ。セシルも同じデザインのドレスでセシルが嫁して以来のおそろいコーデで髪型まで揃えている。
二人は手を繋いでにこにこと笑いあっていてそこには少女時代の二人の姿が重なるようだった。が、父親と3人の兄が食堂に入ってきてソフィーを抱きしめた。みな横にいるセシルの頭を撫でる。子供の時とかわらない光景だった。
「あなたたち、ソフィーが潰れます」
マルグリットの冷静な声で兄達も父親も冷静になった。
「す、すまん、ソフィー」
「痛かったか?ソフィー」
ソフィーはジリオーラの店でジリオーラに強固に主張されて癒しの力をもつ治癒兵にあばらを治してもらっておいてよかったとしみじみ思った。教会の神官の手を煩わせるのをためらっていたソフィーにジリオーラはある提案をした。
傭兵団にいる治癒兵に手を借りよう、と。ソフィーはためらったがリナが同意し、さっさと治癒兵を雇って治してもらったのだ。
リナは娼館にいる間、娼婦たちのこまごまな用事をかたづけて小遣いを貰い、治癒兵を雇える程度の金を持っていたのだ。
「さて、私たちがローラン陛下が手に入れた小遣い、ソフィーを売ったという証文ごとソフィーを買い取った、そういう体裁にしたいの」
夕食後、マルグリット、ジリオーラ、ディオンで話し合っている。
「証文は持ってきてるわ」
「では売買契約書を」
「わかったわ。……うちの娼館のものではないとい証明にもなるしね」
今いるアラン王の国は魔法が発達しているがローランの国は魔法に重きをおいてはいない。治癒魔法士もこちらの国では街中に医院をもっていたり、錬金術師や薬師と組んで治癒院を開いたりしているがローランの国では治癒が出来るのは神官や傭兵団の治癒兵、そして冒険者くらいであった。
教会の神官の治癒は初歩の治癒魔法は無料で、喜捨を頂く形になっているが大がかりな治癒魔法はよほどお金を持っている人間や貴族にしか支払えない料金であった。
そういう諸々を考えてソフィーは魔法による治癒を考えなかったのだ。また傭兵団や冒険者の事は思いつかなかった。ジリオーラとリナは先ず冒険者を当たったが、その時期は王都に治癒能力のある冒険者がおらず次点の傭兵団となったのだ。
「傭兵雇ったって聞いたのだけど、その分のお金は我が家が出すわ」
「いえ、リナが出してるので彼女に支払ってあげてね。うちの娼婦たちの用事を片付けてお小遣いを貰っていたらしくて。あの子が買ってきた朝市の月夜草のオイルとかうちの子達にも大人気。愛用のオイルを変えた子もいたわ」
マルグリットはジリオーラの話にさもありなん、と頷く。
「それ、ソフィーの愛用のオイルね。5年くらい前に朝市でみつけたらしくて。我が家は店に直接頼んでたの……よね。そう言えばお店に連絡しなきゃ」
マルグリットが色々ぶつぶつ言い出した。ディオンがやっと口を開く。
「娘とリナをありがとうございました」
ジリオーラは艶然とほほ笑んだ。
「ローラン陛下が我が店にソフィー嬢を連れてきたので良かったです。まぁ、あの男の言い値を出せるのはうちくらいでしょうけど」
ソフィーを売ったローランは自分の年費の倍以上を手に入れて、そのあぶく銭を結局、ジリオーラの店にすべて落とす事になるとはジリオーラも想像していなかった。
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