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本編

話し合い(一方的に)

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 フレデリク以下、王太子の元側近たちは『人に仕事をさせて何やってんだよあのアホ』
と思いを一つにしていた。

「じゃ、エレーヌはどれを書いた?」

兄に言われて三冊の本を自分の前に置いた。問題の今回の事をローランに思いつかせた本とフーシェ家の兄妹の近親相姦もの、セシルが色に狂って手当たり次第男を家に引っ張り込むだけでは飽き足らず己から娼婦に落ちる、そんなポルノ小説が並ぶ。

「君、欲求不満?」

フレデリクが呆れた声を出す。

「……いくらフレデリク様でも失礼です」

エレーヌがかっとなって声を上げたがジェルマンがつかつかと近寄って拳骨を落した。

「ま、鉄拳制裁は後にしてね、ジェルマン。弟の我慢が切れそうだから早く終わらせるよ」

フレデリクは綺麗な顔をエレーヌに向ける。

「君は最初から容疑者に上がってたんだ。ランベール公爵家とラミナ公爵家の内部が生々しすぎたからね。そのくせヴィズール家だけ欠片もでてこない。ラファイエット侯爵家もえらく詳細で……、そんなのヴィズール家の誰かしかいないよね。ジェルマンは最初に容疑を父親からかけられてね」

フレデリクはふっと力を抜く。

「で、そのエロ本、王太子とエリカの恋をやっぱり主軸に置いたの理由は?」

「元の本が売れていたからですわ。元の本のファンであの世界をもとにしたこういう本を書くのがはやっておりましたの」

ふてくされながらエレーヌは話す。

「じゃ、なんでエロ本を?」

フレデリクの綺麗な顔からでる『エロ本』という言葉はかなり破壊力があった。

「……目立つからです」

「随分男女の交わりに詳しいよね、エレーヌ嬢。理由は?」

「え、あ……本です。本で読みました」

しかし実の兄から爆弾が落された。

「庭男達との戯れでおぼえたんだよな。実体験だよ。複数の人間とのやり方もそうやって覚えたのだろう?エレーヌ、縁談が来ない理由に思い至らないか?」

兄妹だからこその冷たい目だった。他の三人の少女たちは少女たちの社交界で流れていた噂が本当だったのだと衝撃を受けていた。『エレーヌ嬢はすでに純潔ではない』と。
 少年、青年たちにはもっと詳細に噂が回っていて、夜会の時にそういうことをした男達の下卑た噂が既に流れていた。ので高位貴族たちはエレーヌを敬遠していた。
 エレーヌはわなわな震えている。

「で、この本がローランの目に入った経緯は?」

「私にわかるわけないでしょ」

エレーヌは開き直った。

「それはそうか。君が渡したわけじゃないのはわかってる。エリカがローランのいる前で読んでたらしいけどね」

「……殿方のいる前で読むなんて、無粋です」

ジャクリーンが呟く。エレーヌもララもノエラも同意した。

「こういう自主流通本は学園の女生徒だけの楽しみでしたの」

エレーヌア言う。

「だから、そういう楽しみを知らなさそうなソフィー嬢にお教えしただけですわ」

「ピンポイントに君の物を、ね?」

ジャクリーンとララは自分たちが書いた、他家の美青年のいちゃいちゃを書いたものに言
及されないようにできるだけ気配を消していた。

「この本をアレが読んでいて今回の前陛下たちのご逝去を利用したというのがおおよその
筋書きだろうね」

フレデリクの長い指がこつこつと本を叩く。

「こういうのはもっと分かりにくくかくものだと思うけど。……ノエラのカフェ本は、新
聞社が女性のいちゃいちゃを抜いて書いてほしいってさ。評判がいいみたいだよ。……君
はその仕事を完遂してください、汚名返上したいだろ?」

フレデリクは言い渡す。

「本来は皆まとめてこの国の北の修道院にと思ったけど、そこまでアラン陛下に苦労を掛
けるのもね。処分は各家にまかせるよ。ただし余りに甘い処分だとジェラールと私とソ
フィーで殴りこみにいくからね?」

フレデリクは笑顔で令嬢達に言い渡した。
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