お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon

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マキシミリアン視点 ためらいがちに伸ばされる手

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 家にはもう僕のものは何もない。僕の家にあったものはすべて別の場所に移されて僕が学園を卒業したのち引き渡されることになっている。
 僕の家は親族に乗っ取られた。そんなことはたまに起きることだ。
 弟はどうするつもりなのかわからない。家に帰らないので情報は入ってこない。
 卒業まで一年ほど。その一年で自分の行き先を決めなければならない。
 父は家に残っているが、ほとんど軟禁状態だという。継母は修道院に入れられたらしいが。その場所も分からない。
 あの悪い継母を倒して亡き母の無念を晴らし、家を継いで盛り立てる。そう信じて生きてきた半生だった。
 その目標はすべてなくなってしまった。すべて失い残っているのは我が身一つだ。
 考えてみれば彼女もむなしい人だった。
 彼女がすべてをささげようとした弟は彼女と二度と会えないと言われても眉一つ動かさなかったらしい。
 弟にとって彼女はどうでもいい存在だった。弟のために僕まで殺そうとしたのに。
 アンリは弟の様子をたまに見ているようだが、もう必要ないのでやめてもらおう。弟は驚くほど何も変わらないで生活しているらしい。
 今となっては名ばかりの兄弟だ。まともに話したことすらない。
 いや、話す機会ならあったが僕は弟と話すことを避けた。あの時、ルナに弟が近づいたと知った時。
 ルナに近づくなと言えばよかった。その時弟はどんな顔をしたんだろう。笑っただろうか、怒っただろうか。
「あなた」
 小さな声がした。
「あなた」
 ディアナは涙を浮かべた目で僕を見た。
「ごめん、何もできなかった」
 この人も僕は失うのだろう。
「私、家を捨ててもあなたと」
 僕はみなまで言わせなかった。この人がそんな生活に耐えられるわけがない。
「駄目だよ」
「いや、それは駄目だ、君にはディアナと結婚して、シュナウザー侯爵になってもらう」
 ジェスター殿下がそこにいた。
「殿下、僕は身内から罪人を出し、その果てに家を乗っ取られた寄る辺ない実でございます。もはや皆様のおそばにいることも」
 ジェスター殿下は笑った。
「シュナウザーの家を継げ、今の侯爵にはこちらから手を回した」
 ディアナはそっと僕の手を取った。
「お願い、私を助けて、あなたが必要なの」
 甘い声、再びを期待していいのか?
 何かを言おうとして言葉が喉に引っかかる。本当にこんな都合のいいことを受け入れていいのか。
 僕はディアナの手を取るのを何度も逡巡した。
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