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すれ違い
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佐藤に誘われた。呉羽は思わずスマホを凝視する。
これってナンパかしら。
そう思ったが、何となく物腰がビジネスライクな気がした。
「今日は、怖いから一日ホテルから出ません、警察にもそういわれたし」
そう答えたら佐藤は黙ってうなずく。そしてさっさと歩いて行った。その後ろ姿をぼんやりと見ていた。
「いや、ナンパじゃないと思うけど。だってさっき場所を聞かれたのってホームセンターだよ」
フロント嬢の呉羽より少し年下のほうが答えた。
いつの間にか何となく世間話をするようになっていた。
「ええと名前は磯野?」
「サザエさんじゃないからね、ワカメでもない」
「ああ、そういう苗字だとねえ」
磯野と書かれた旨のネームプレートを見て呉羽は苦笑する。
「男の子だったらカツオ一択だったでしょうね」
そう言って笑いながら答えた。
「ゆかりですよ」
「普通ね」
「普通です」
磯野ゆかりは大まじめだった。
「そういえば、退屈じゃないですか?」
「さっき書店で本を買いだめしてきたわ、なんかナチュラルに絶版になった本が売ってたんだけどいいのかな」
「よくあるんですよねえ、なかなか在庫が動かないから」
ゆかりはへらっと笑った。「
「あ、さすがに食品は賞味期限内のものしか売ってませんよ、そういうもんは奥様方が怖いから」
隣の初老というには失礼なくらいのフロント嬢?が頷く。
「まあ、そうね」
スーパーで買い物をしようかと思ったがさすがに食欲があまりない。
「部屋で休んでいるわ」
読書をするか、或いはテレビを見ているかぐらいしか選択肢はない。
佐藤さんと出かけるべきだったかと思ったが、もともと知り合いでもなかったのだからと思い直す。
警察に身分を明かしたのだから公務員というのはうそではないだろうが、見ず知らずの人間をあまり信用しすぎるの不用心が過ぎると思った。
ベッドに寝転んでページをまくる。この体勢でうとうとすると、もれなく手が滑って本で顔面を打ち付ける。
顔をこすりながら起き上がると、何か飲み物が欲しくなった。
備え付けの茶器を見た限り置いてあるのは日本茶のみだ。
佐藤さんはわざわざ瓶でコーヒーを持ってきていたのかと出張が多い職場なのかななどと考えながらお茶を淹れる。
やはり一人だと味気ない。やはり暇つぶしにスーパーでも行ってこようかと考えた。
ついでにゆかりに何か差し入れでも買ってあげるべきだろうか。さっきちょっと迷惑をかけたかもしれない。
フロントまで降りていくと一人がテーブルに突っ伏していた。
「どうしたの?」
「山田さんが急に」
ゆかりは慌てているようだ。
山田さんの手に触れるとかなりの高熱だ。
「病院に行かなきゃ」
「でもどうしよう、今誰も」
少人数で仕事を回しているため、今出られる人間の数がいない。
「私が送っていくわ」
呉羽が言い出すと一瞬ゆかりはためらう。それを抑えて呉羽は押し通した。
「いいのいいの、どうせ暇してるんだから」
ゆかりは不承不承ながらタクシーを呼んだ。
これってナンパかしら。
そう思ったが、何となく物腰がビジネスライクな気がした。
「今日は、怖いから一日ホテルから出ません、警察にもそういわれたし」
そう答えたら佐藤は黙ってうなずく。そしてさっさと歩いて行った。その後ろ姿をぼんやりと見ていた。
「いや、ナンパじゃないと思うけど。だってさっき場所を聞かれたのってホームセンターだよ」
フロント嬢の呉羽より少し年下のほうが答えた。
いつの間にか何となく世間話をするようになっていた。
「ええと名前は磯野?」
「サザエさんじゃないからね、ワカメでもない」
「ああ、そういう苗字だとねえ」
磯野と書かれた旨のネームプレートを見て呉羽は苦笑する。
「男の子だったらカツオ一択だったでしょうね」
そう言って笑いながら答えた。
「ゆかりですよ」
「普通ね」
「普通です」
磯野ゆかりは大まじめだった。
「そういえば、退屈じゃないですか?」
「さっき書店で本を買いだめしてきたわ、なんかナチュラルに絶版になった本が売ってたんだけどいいのかな」
「よくあるんですよねえ、なかなか在庫が動かないから」
ゆかりはへらっと笑った。「
「あ、さすがに食品は賞味期限内のものしか売ってませんよ、そういうもんは奥様方が怖いから」
隣の初老というには失礼なくらいのフロント嬢?が頷く。
「まあ、そうね」
スーパーで買い物をしようかと思ったがさすがに食欲があまりない。
「部屋で休んでいるわ」
読書をするか、或いはテレビを見ているかぐらいしか選択肢はない。
佐藤さんと出かけるべきだったかと思ったが、もともと知り合いでもなかったのだからと思い直す。
警察に身分を明かしたのだから公務員というのはうそではないだろうが、見ず知らずの人間をあまり信用しすぎるの不用心が過ぎると思った。
ベッドに寝転んでページをまくる。この体勢でうとうとすると、もれなく手が滑って本で顔面を打ち付ける。
顔をこすりながら起き上がると、何か飲み物が欲しくなった。
備え付けの茶器を見た限り置いてあるのは日本茶のみだ。
佐藤さんはわざわざ瓶でコーヒーを持ってきていたのかと出張が多い職場なのかななどと考えながらお茶を淹れる。
やはり一人だと味気ない。やはり暇つぶしにスーパーでも行ってこようかと考えた。
ついでにゆかりに何か差し入れでも買ってあげるべきだろうか。さっきちょっと迷惑をかけたかもしれない。
フロントまで降りていくと一人がテーブルに突っ伏していた。
「どうしたの?」
「山田さんが急に」
ゆかりは慌てているようだ。
山田さんの手に触れるとかなりの高熱だ。
「病院に行かなきゃ」
「でもどうしよう、今誰も」
少人数で仕事を回しているため、今出られる人間の数がいない。
「私が送っていくわ」
呉羽が言い出すと一瞬ゆかりはためらう。それを抑えて呉羽は押し通した。
「いいのいいの、どうせ暇してるんだから」
ゆかりは不承不承ながらタクシーを呼んだ。
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