彼女は呪われている

karon

文字の大きさ
13 / 14

巻き込むな

しおりを挟む
 スティーブンに聞きだした情報にやはり私は利用されただけだと気が付いた。
 まったくくだらないことに巻き込まれたものだ。
 やはり、本人に文句を言ってさっさと帰ることにした。
「ジュディ、私の仕事はないようだね」
 私は呼び出した相手を睨む。まったくずいぶんな茶番に巻き込んでくれたものだ。
 私はジュディに向かって呟く。
「彼女が呪われていようと君はどうでもよかったんだろう?」
 私がジュディにそう言ってもジュディは心外だといい表情を崩さない。
「ひどい、私は心底彼女のことを案じていたのに」
 ジュディはそう言っていたが、私がスティーブンから聞いた話を考えると彼女に対して好意的な理由がない。
「君は本当のこの地の後継者だね」
 ここの地所の本当の所有者である老人。その実子は早世しているが、孫が一人それがジュディ。
「本来君がすべてを得るはずなのに、赤の他人がこの場所でわが物顔にふるまっている状況がうれしいわけがないな」
 私が尋ねたのはスティーブンにあの老人の身内がここにいるのかどうかだ。あっさりとジュディの名前が出た。
 予想していたのでそれほど驚かなかったが。
「ああ、別のところにいるあの夫婦とずいぶん親しいようだね。まさかあの人たちは共犯者かい?」
「あなたは一体」
「まさかと思うけど、本気で物騒なことを考えていたわけじゃないよね」
 ジュディは目を大きく見開いた。
「まるで私はアリバイ工作に利用されたような気がするんだ。あの犬を殺したのは共犯者で、猫を殺したのは君なんじゃないかな」
 ジュディが唇をかんだ。
「私たちが単なる嫌がらせをしたと思っているのかしら」
「まあ、何とか追い出したいんじゃないのかね。それでもだめなら究極の手段をとるつもりだったとか?」
「あら、証拠はある?」
 ジュディの目が瞬いている。その手は握りしめられて小刻みに震えていた。まったく関係ないのに巻き込まれた私は意地悪く微笑んでいたはずだ。
「犬は一匹だけは青酸で殺されたけれど、もう一匹は違うとか? 犬は玉葱や葱であるいはチョコレートのほうが簡単かね。そんなもので死ぬのだ。もちろん人間にはまったく害がないから持ち込みも簡単だ」
 そして私は動物の墓を指さした。
「死体はまだある。今でも青酸は発見できるだろう、そしてもう一匹から青酸は発見されない、あれだけの犬を殺せるほどの青酸を君は秘密裏に手に入れたわけだ」
 ジュディはもう何も言わなかった。
「君が何をしようが関係ない、私を巻き込まないでくれ。それと私に彼女を保護する義務もない」
 それで終わり、さて、駅までは結構な距離がある。さっさと出発しないと。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...