恋の無駄騒ぎ

karon

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第十四章

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 しばらくベネディクトは煩悶していた。
「ビアトリスか、確かにあれは美しい。そして身持ちが堅いことは確かだ。そしてあれだけ口が回ることを考えれば頭も悪くないだろう」
そして、首を何度も振る。
「俺を愛しているだと、あの女が、愛しているがゆえに素直に慣れず悪口雑言。あの悪罵はすべて裏返しの愛の言葉だと、まったくもって信じがたい」
 そして深い深いため息をついた。
「そこまで愛されれば答えない男は血の代わりに氷が流れているのだろう。しかしだ、俺から何を言ってもあの女は答えないかもしれない、あの女は間違いなく美しい、そしてふしだらでないのは俺が誰より知っている。そしてあの女がもしその心根のまま淑やかにふるまえば俺とて答えないわけにはいかないのだ。たとえどうあってもあの女の美しさだけは間違いなく認めていたからな」
 ビアトリスは怪訝な思いで煩悶するベネディクトを見ていた。
「いったいどうしたのかしら、あの道化が。いったい何を悩んでいるのかしら。あの男に悩むだけの人格の深みがあるなんて思ったこともないけれど」
 気配を感じてベネディクトは顔を上げた。
 ビアトリスがじっと自分を見つめているのを見た。
「ビアトリス、確かに今一度この目で見ても美しい」
「心ならずも貴方に言づけをする羽目になりましたわ」
 ビアトリスはあえてつっけんどんな口調でそう言った。
「そろそろ食事の時間ですわ、支度をする者の迷惑になりましてよ」
「それはそれはご苦労を掛けてしまったようだ」
「私に礼を言わなければならない貴方こそ大変な苦労ですわね」
 ビアトリスは吐き捨てるように言った。
「別に苦労などとおっしゃることは無いのだわ、貴方のために苦労などするものですか。苦労と思えば放っておきますわ」
「では、何か楽しいことが?」
 どうも調子を狂わされた。
 ビアトリスは下にとげをより一層生やすことにした。
「楽しいですかしら。あなたはその手に留まること理でもバリバリ羽もむしらず食べておしまいになれば。どうせ野蛮人なんですもの」
 そして鼻を上向かした。
「どうやらお腹はすいていらっしゃらないようね、どうやら余計なことをしたようだわ、御免あそばせ」
 そう言ってビアトリスはすかさず背を向けた。
「これはそのままの意味にとるべきだろうか、あれはほんの少しでも本当の気持ちを漏らしはしなかったか?
 俺のために行動することを苦労だと思わないというのはほんのわずかでも愛情があるということだろうか。礼など言うなと?もしかしたらあれは謎かけなのか?」
 ベネディクトはしばらく立ち尽くしていた。
「さて、これからどうするべきか。やはり順序を考えよう。ビアトリス、あの言葉の遊戯の外の意味を考えよう」

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