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第二十四章
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絢爛たる衣装をまとった花嫁花婿はしずしずと祭壇に向かう。
楽師たちが見えない場所でゆったりとした楽曲を大きすぎない音量で演奏されていた。
祭壇では司祭がクルスをいじりながら二人を待っていた。
花嫁花婿は緊張からかそろって顔をこわばらせていた。
それもまた微笑ましいと司祭は薄く微笑み目の前の二人に笑いかけた。
「これより神の御前にて婚礼の儀式を行います」
そう宣言したとたん花婿の背筋がすっと伸びた。
「この女を妻として認めますか」
花婿は答えない。
「認めますか」
再度尋ねたが一向に答えない。あきらめて花嫁に向かう。
「この男を夫として認めますか」
「はい、認めます」
細い甘い声がそう答えた。
そして再び花婿に向かった。
「私はこの女を妻になど絶対認めない」
こわばった表情で花婿は、クローディスは憎々し気に花嫁ヒローインを睨んだ。
「じゃあなんでここにいるんです?」
婚礼を上げる医師がないのにどうしてこのような場所に出てきたのだと司祭は頭を抱えた。
「決まっている、この美しい淫売がどれほど見下げはてた女か晒しものにしてやるためだ」
ヒローインは訳が分からず何かにすがるように周囲を見回している。
「お前は前夜何をしていたか私は知っている」
「前夜? 私は夕餉の後は部屋に下がりずっと部屋におりましたが」
「嘘をつくな、お前はすでに生娘ではない」
たまりかねたレイナートが祭壇に向かってくる。
「まさか、婚礼まで待ちかねて娘を傷物に?」
「私が激情に耐えきれず思いを遂げたならどうしてこのようなことを言いましょうか謹んで婚礼を上げ妻と呼ぶでしょう。私は見たのですこの女が夜ごと男を引き入れているのを」
その言葉に答えたのはヒローインではなかった。
「そんなことあるはずないでしょう、これまで私とヒローインは寝室を共にしておりましたわ、もしそのようなことがあったなら私が気づかないはずないでしょう」
「ならば昨夜も共にいたと?」
「いいえ、昨夜は別の部屋で休みました。明日は婚礼だと思ったから」
それを聞いて勝ち誇ったようにクローディスは言いつのった。
「ならば証人となりえない。何度でもいう。貴女の従妹は淫売だ」
さすがにたまりかねたレイナートがペドロに救いを求めた。
「いったい貴方の騎士は何を言っているのです。私の娘が何をしたと」
「残念ながら、私の目が曇っていた。あのようなふしだらな娘を私の騎士と娶せようとしたとは」
「いったいどうしたのです、ペドロ様もクローディスも昨日までの貴方方はどこに行ってしまいましたか?」
あまりの事態にベネディクトすら状況を把握できないでいた。
「本当にそんな真似をしたのかヒローイン、お前はわしのただ一人の娘だが、そのようなことをしたなら私にはただ一人の子などいらないと神に申し上げなければならない」
「私があっていたという男を知っているのはクローディス様貴方お一人ですわ、私ですらそのような人は知らないのですもの。どうしてそんなことをおっしゃるの、私は一人で自分の部屋で過ごしていたという本当のことしか言えませんわ」
「白々しい、よくそのようなすまし顔ですらすらと噓をつくものだ」
ヒローインを打ち捨ててクローディスとペドロはその場を立ち去っていく。そしてペドロ配下の者達もそれに倣う。
「素晴らしいお嬢様をお持ちですな」
背後でその騒ぎを見ていたヨハンは立ち去る前ににんまりと笑ってそう言った。
楽師たちが見えない場所でゆったりとした楽曲を大きすぎない音量で演奏されていた。
祭壇では司祭がクルスをいじりながら二人を待っていた。
花嫁花婿は緊張からかそろって顔をこわばらせていた。
それもまた微笑ましいと司祭は薄く微笑み目の前の二人に笑いかけた。
「これより神の御前にて婚礼の儀式を行います」
そう宣言したとたん花婿の背筋がすっと伸びた。
「この女を妻として認めますか」
花婿は答えない。
「認めますか」
再度尋ねたが一向に答えない。あきらめて花嫁に向かう。
「この男を夫として認めますか」
「はい、認めます」
細い甘い声がそう答えた。
そして再び花婿に向かった。
「私はこの女を妻になど絶対認めない」
こわばった表情で花婿は、クローディスは憎々し気に花嫁ヒローインを睨んだ。
「じゃあなんでここにいるんです?」
婚礼を上げる医師がないのにどうしてこのような場所に出てきたのだと司祭は頭を抱えた。
「決まっている、この美しい淫売がどれほど見下げはてた女か晒しものにしてやるためだ」
ヒローインは訳が分からず何かにすがるように周囲を見回している。
「お前は前夜何をしていたか私は知っている」
「前夜? 私は夕餉の後は部屋に下がりずっと部屋におりましたが」
「嘘をつくな、お前はすでに生娘ではない」
たまりかねたレイナートが祭壇に向かってくる。
「まさか、婚礼まで待ちかねて娘を傷物に?」
「私が激情に耐えきれず思いを遂げたならどうしてこのようなことを言いましょうか謹んで婚礼を上げ妻と呼ぶでしょう。私は見たのですこの女が夜ごと男を引き入れているのを」
その言葉に答えたのはヒローインではなかった。
「そんなことあるはずないでしょう、これまで私とヒローインは寝室を共にしておりましたわ、もしそのようなことがあったなら私が気づかないはずないでしょう」
「ならば昨夜も共にいたと?」
「いいえ、昨夜は別の部屋で休みました。明日は婚礼だと思ったから」
それを聞いて勝ち誇ったようにクローディスは言いつのった。
「ならば証人となりえない。何度でもいう。貴女の従妹は淫売だ」
さすがにたまりかねたレイナートがペドロに救いを求めた。
「いったい貴方の騎士は何を言っているのです。私の娘が何をしたと」
「残念ながら、私の目が曇っていた。あのようなふしだらな娘を私の騎士と娶せようとしたとは」
「いったいどうしたのです、ペドロ様もクローディスも昨日までの貴方方はどこに行ってしまいましたか?」
あまりの事態にベネディクトすら状況を把握できないでいた。
「本当にそんな真似をしたのかヒローイン、お前はわしのただ一人の娘だが、そのようなことをしたなら私にはただ一人の子などいらないと神に申し上げなければならない」
「私があっていたという男を知っているのはクローディス様貴方お一人ですわ、私ですらそのような人は知らないのですもの。どうしてそんなことをおっしゃるの、私は一人で自分の部屋で過ごしていたという本当のことしか言えませんわ」
「白々しい、よくそのようなすまし顔ですらすらと噓をつくものだ」
ヒローインを打ち捨ててクローディスとペドロはその場を立ち去っていく。そしてペドロ配下の者達もそれに倣う。
「素晴らしいお嬢様をお持ちですな」
背後でその騒ぎを見ていたヨハンは立ち去る前ににんまりと笑ってそう言った。
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