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世界観、導入
―― むかしむかしあるところに ーー①
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街の入口には何人かの守衛兵がいてやけに仰々しかった。だけど、彼らはとても気さくで、あの遠くに見える囁き森からやって来た田舎者達を友好的に迎えてくれた。一目で怪しくないと見抜かれる辺り、人畜無害もここに極まれり、って感じかな。ケヴィンなんて護身用の剣も携えていたっていうのに。
そして、大きな門扉を通って街に入り、その光景の奔流にわたしは立ち尽くす。
木の素朴な色と赤いレンガと漆喰の白、それに数えきれないほどの雑多な色彩が織り成す、賑やかで活気溢れる街。
人々の会話、笑い声、道行く足音、露店にぶら下がる商品が揺れる音、それらががやがやと喧しくも楽しげな不協和音を奏でている。
今日は何かのお祭りでもやっているのかしら、とも思ったけど、いや、ケヴィンとリイサの様子を窺うにどうやらこれがこの街のいつもの風景であるらしかった。わたしはただ、あんぐりと大きく口を開けた間抜け面でその場に立ち尽くすことしかできない。
ああ、それでも、どこからともなく漂ってくる、否応なしに問答無用で容赦なくおなかを刺激する香りに、わたしの足は無意識に引き寄せられてしまう。
ツンとした香辛料とふわりとした甘い香り、それに何かを焼く香ばしい匂い。そのどれもが初めて嗅いだはずなのに、じゅるり、口からよだれが止まらないのはなんでだろう。「キティちゃん、そっちは違うわ!」
雑然とすらしている石造りの街道を行き交うのは、色んな背格好の人間、エルフやドワーフなんかの亜人、それに黒い肌の魔人なんてのもいる。どうしてわたしが彼らの種族のことをこんなに知っているのかわからないけど、きっとわたしが創った世界だもん、そういうものなのよ、と無理やり納得してみる。
少しずつ服装も違う彼らはきっと職業も立場もバラバラで、ここまで多様性溢れていると逆に没個性的である方が難しそうだ。
だから、小さな子どものくせに足元まである長い白髪で、しかも、虹色に輝く瞳のわたしだってきっと全然目立たな……
「しかし、小さくてもキティは真っ白で目立つから見失わなくて助かるな」
「え!?」
そして、この喧噪の大通りの遥か先へと視線を上げていくと、きっとこの街の中心、大きな白いお城が見える。まるで、その影ひとつない純白のお城だけがお空に描かれている巨大な絵画のように、非現実的。きっと誰かが絵本の中から取り出したに違いないわ。
だって、そこに王様が住んでいて、わたし達を見守っている、なんてとてもじゃないけど、そっちの方が現実感がない。そう、なんだかそこにあるのが場違いみたいに、とにかく、ああ、とにかくとってもとーっても大きいの!
あまりにも情報量が、情報量が多い。
これは、わたしが望んだ世界なのか?
完全にわたしの想像力を、いや、創造力を超えている。
あの静かな囁き森でさえ、真っ白な世界から墜ちてきたわたしにとっては十分刺激的だったのに、この街の騒がしさはそれを遥かに凌駕している。
目まぐるしくわたしを通り過ぎていく色彩に、移り変わる情報の奔流にぐるぐる目が回ってしまう。
真っ白なだけのわたしはこの色彩豊かな世界の速度についていくことができるのだろうか、と不安になってしまう。頭がどうにかなっちゃいそう。
そ、そうだ、図書館での調べものが終わったら、またすぐにケヴィンたちと一緒にあの囁き森へと帰ろう。そして、穏やかな色彩の中でじっくりと過ごそう。きっと、わたしにはその方が合っている。
そうよ、きっと、わたしの物語はそういうものなんだわ。のんびりスローライフも素敵じゃない。
そして、大きな門扉を通って街に入り、その光景の奔流にわたしは立ち尽くす。
木の素朴な色と赤いレンガと漆喰の白、それに数えきれないほどの雑多な色彩が織り成す、賑やかで活気溢れる街。
人々の会話、笑い声、道行く足音、露店にぶら下がる商品が揺れる音、それらががやがやと喧しくも楽しげな不協和音を奏でている。
今日は何かのお祭りでもやっているのかしら、とも思ったけど、いや、ケヴィンとリイサの様子を窺うにどうやらこれがこの街のいつもの風景であるらしかった。わたしはただ、あんぐりと大きく口を開けた間抜け面でその場に立ち尽くすことしかできない。
ああ、それでも、どこからともなく漂ってくる、否応なしに問答無用で容赦なくおなかを刺激する香りに、わたしの足は無意識に引き寄せられてしまう。
ツンとした香辛料とふわりとした甘い香り、それに何かを焼く香ばしい匂い。そのどれもが初めて嗅いだはずなのに、じゅるり、口からよだれが止まらないのはなんでだろう。「キティちゃん、そっちは違うわ!」
雑然とすらしている石造りの街道を行き交うのは、色んな背格好の人間、エルフやドワーフなんかの亜人、それに黒い肌の魔人なんてのもいる。どうしてわたしが彼らの種族のことをこんなに知っているのかわからないけど、きっとわたしが創った世界だもん、そういうものなのよ、と無理やり納得してみる。
少しずつ服装も違う彼らはきっと職業も立場もバラバラで、ここまで多様性溢れていると逆に没個性的である方が難しそうだ。
だから、小さな子どものくせに足元まである長い白髪で、しかも、虹色に輝く瞳のわたしだってきっと全然目立たな……
「しかし、小さくてもキティは真っ白で目立つから見失わなくて助かるな」
「え!?」
そして、この喧噪の大通りの遥か先へと視線を上げていくと、きっとこの街の中心、大きな白いお城が見える。まるで、その影ひとつない純白のお城だけがお空に描かれている巨大な絵画のように、非現実的。きっと誰かが絵本の中から取り出したに違いないわ。
だって、そこに王様が住んでいて、わたし達を見守っている、なんてとてもじゃないけど、そっちの方が現実感がない。そう、なんだかそこにあるのが場違いみたいに、とにかく、ああ、とにかくとってもとーっても大きいの!
あまりにも情報量が、情報量が多い。
これは、わたしが望んだ世界なのか?
完全にわたしの想像力を、いや、創造力を超えている。
あの静かな囁き森でさえ、真っ白な世界から墜ちてきたわたしにとっては十分刺激的だったのに、この街の騒がしさはそれを遥かに凌駕している。
目まぐるしくわたしを通り過ぎていく色彩に、移り変わる情報の奔流にぐるぐる目が回ってしまう。
真っ白なだけのわたしはこの色彩豊かな世界の速度についていくことができるのだろうか、と不安になってしまう。頭がどうにかなっちゃいそう。
そ、そうだ、図書館での調べものが終わったら、またすぐにケヴィンたちと一緒にあの囁き森へと帰ろう。そして、穏やかな色彩の中でじっくりと過ごそう。きっと、わたしにはその方が合っている。
そうよ、きっと、わたしの物語はそういうものなんだわ。のんびりスローライフも素敵じゃない。
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