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世界観、導入
―― むかしむかしあるところに ーー②
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「そうだ、あんまり疲れたらリイサに言ってみな、リイサは癒しの魔法が使えるんだ、すごいヒーラーなんだぞ」
「やめてよ、勇者様のパーティじゃあるまいし」
「???」
「ワタシはちょっとした傷を治したり、疲れを和らげたりできるだけ。ヒーラーなんて大層なものじゃないわよ」
人ごみを掻き分けるのヘタクソ三人衆は、中々進めない雑多な大通りに四苦八苦右往左往しながら。
それでも、やっぱり賑やかな街並みにはどうしてもテンションが上がってしまう。目指すは図書館。でも、きらびやかな風景に目移りしちゃうのはヒトの性、3人ともふらふらりしちゃってる。
「ケヴィンなんて勇者様に憧れて剣術の練習してるんだものね」
「い、いいだろ、別に。村を守るためには必要なんだし」
ケヴィンは腰に簡素な木製の鞘に納められた両刃の剣をぶら下げている。まあ、お世辞にも立派な名剣ではないだろうな、というケヴィンらしく素朴な風情ではあった。だけど、それは無知なわたしが見ても、とても綺麗に、とても丁寧に手入れされていた。
「ねえ、ところで、勇者、って何?」
「なんだって!? 勇者様のことを知らないなんて、キティは本当に記憶喪失なんだな!」
「うお! そ、そうなの! ホントに記憶喪失なの! 何にもわからないの、どうか記憶喪失のわたしにもわかるように教えてくれるかしら!?」
記憶喪失設定めっちゃ便利! 知らないことだってなんでも訊けるし!
「勇者様は神様に選ばれし真の英雄で、何千年も前にこの世界の半分を支配していた魔物の王、アヴァルギリオンを倒して世界に平和をもたらしてくれた偉大な人とその仲間達のことだよ」
勇者のことをこんなにも早口で話しているケヴィンの横顔は、もう、まるっきり憧れの大人を見上げる子どもそのもの。こんな些細な剣に対するケヴィンの思い入れには、なるほど、そういう経緯があったわけね。
それにしても、神様、なんてのもこの世界には存在しているのね。それに会えたら、わたしのことやこの世界のことが何かわかるかもしれないわね。
「だけど、まだ魔物どもは滅んじゃいない。ときおり里に現れては人間を襲うんだ。キティもオレ達が魔物退治に向かうのを何回か見ただろ?」
そう、わたしが囁き森で過ごしている間、何度か村が騒がしくなる時があって、その度にケヴィンや村の他の男の人達が総出で森の奥に入っていっていた。そっか、彼らは村の近くに来た魔物を退治しに行っていたのか。
彼らが奥地から戻ってくるのは、すぐのときもあるし、次の日の明け方まで戻ってこないときもあった。そして、どんなときでも彼らは大抵ボロボロになっていて、それをリイサや他の女の人が手当てしていた。リイサがしていたのは癒しの魔法だったのね。
「噂では、魔王はまだ生きていて密かに侵略の機会を窺っているそうだ」
「こら、ケヴィン。そんなこと言ってキティちゃんを怖がらせないの」
神様に引き続き、魔王、と呼ばれる存在までいたとは。それでも、魔王はもういなくなってしまった世界観なのか。もしまだ存在していたなら、この物語は魔王討伐の英雄譚になっていたかもしれない。
この3人なら、わたしは、何になれるかしら? ケヴィンは剣士で、リイサは癒し手だから、えっと、わたしは、わたしは……
「やめてよ、勇者様のパーティじゃあるまいし」
「???」
「ワタシはちょっとした傷を治したり、疲れを和らげたりできるだけ。ヒーラーなんて大層なものじゃないわよ」
人ごみを掻き分けるのヘタクソ三人衆は、中々進めない雑多な大通りに四苦八苦右往左往しながら。
それでも、やっぱり賑やかな街並みにはどうしてもテンションが上がってしまう。目指すは図書館。でも、きらびやかな風景に目移りしちゃうのはヒトの性、3人ともふらふらりしちゃってる。
「ケヴィンなんて勇者様に憧れて剣術の練習してるんだものね」
「い、いいだろ、別に。村を守るためには必要なんだし」
ケヴィンは腰に簡素な木製の鞘に納められた両刃の剣をぶら下げている。まあ、お世辞にも立派な名剣ではないだろうな、というケヴィンらしく素朴な風情ではあった。だけど、それは無知なわたしが見ても、とても綺麗に、とても丁寧に手入れされていた。
「ねえ、ところで、勇者、って何?」
「なんだって!? 勇者様のことを知らないなんて、キティは本当に記憶喪失なんだな!」
「うお! そ、そうなの! ホントに記憶喪失なの! 何にもわからないの、どうか記憶喪失のわたしにもわかるように教えてくれるかしら!?」
記憶喪失設定めっちゃ便利! 知らないことだってなんでも訊けるし!
「勇者様は神様に選ばれし真の英雄で、何千年も前にこの世界の半分を支配していた魔物の王、アヴァルギリオンを倒して世界に平和をもたらしてくれた偉大な人とその仲間達のことだよ」
勇者のことをこんなにも早口で話しているケヴィンの横顔は、もう、まるっきり憧れの大人を見上げる子どもそのもの。こんな些細な剣に対するケヴィンの思い入れには、なるほど、そういう経緯があったわけね。
それにしても、神様、なんてのもこの世界には存在しているのね。それに会えたら、わたしのことやこの世界のことが何かわかるかもしれないわね。
「だけど、まだ魔物どもは滅んじゃいない。ときおり里に現れては人間を襲うんだ。キティもオレ達が魔物退治に向かうのを何回か見ただろ?」
そう、わたしが囁き森で過ごしている間、何度か村が騒がしくなる時があって、その度にケヴィンや村の他の男の人達が総出で森の奥に入っていっていた。そっか、彼らは村の近くに来た魔物を退治しに行っていたのか。
彼らが奥地から戻ってくるのは、すぐのときもあるし、次の日の明け方まで戻ってこないときもあった。そして、どんなときでも彼らは大抵ボロボロになっていて、それをリイサや他の女の人が手当てしていた。リイサがしていたのは癒しの魔法だったのね。
「噂では、魔王はまだ生きていて密かに侵略の機会を窺っているそうだ」
「こら、ケヴィン。そんなこと言ってキティちゃんを怖がらせないの」
神様に引き続き、魔王、と呼ばれる存在までいたとは。それでも、魔王はもういなくなってしまった世界観なのか。もしまだ存在していたなら、この物語は魔王討伐の英雄譚になっていたかもしれない。
この3人なら、わたしは、何になれるかしら? ケヴィンは剣士で、リイサは癒し手だから、えっと、わたしは、わたしは……
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