この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

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起《承》転結

ーー 少年と赤い竜~それから60年後~  ーー②

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 あまりの威圧感に指一本も動かせないわたしとエルルカに対し、

「見ての通りアズはドラゴンだ、今は亜人態に変身しておるがな」

「おう、よろしくな。アタシは、アズライグ・ゴックス。まあ、名前なんてどうでもいい、アズ、とでも呼んでくれ。アタシはここでこいつらの世話をしてるんだ」

 おじいちゃんは至極落ち着いておられている。わたし達は迫り狂う圧倒的な情報量と恐怖で許容限界をあっさり超えている。ドラゴン? 亜人態? 変身? もう何もわからない。

「この姿の方が楽なんだよな。ちっさいのはアタシの姿を見るとビビっちまうからな、ま、これでもビビるやつはビビるけど」

「ち、ちっさいの?」エルルカ、知りたがりの性分は忘れられず。

「ハッ、お前ら人間のこと、だ……ん?」

 すると、エルルカの背中に隠れて恐れおののいていたわたしをまじまじと見つめ、いや、睨み付けるアズ。

「お前、なんだ? ホントに人間か?」

 急激にアズの声音が変わる。警戒と敵対。

 腰に両手を当てて上半身だけを屈ませて、ぐいッと顔を近づけるアズ。ぎろりと動く細い瞳孔、金色に爛々と輝く猛獣の瞳が、わたしの虹色に輝く瞳を見つめる。灼熱の吐息がわたしにかかって、ぴくりとも出来ず。

 もはや捕食者と獲物の様相。

「匂いが違う、」ぺろり、とてもとても長い舌がわたしの頬を舐める。ざらざらしてて熱い。「味も違う」

 生きた心地がしない。がしっとわたしの顎を掴む右手、むにっとほっぺに喰いこむ長い爪があまりにも鋭くて今すぐにでも引き裂かれそう。ドドッドドドドドラゴンめっちゃ怖い!

「それに、人間はこんなに冷たくない。けど、天使でも悪魔でもないな、喰ったらわかるか?」歯が! 歯が!

「ひ、ひいぃ」へ、変な声出た。

「やめんか、アズ。この嬢ちゃんはわしの友達じゃぞ」

「ああ?」

「わ、わ、わわわたしの名前は【透明幻想・錯綜少女基底】。人間かどうかはわたしにも良くわからなくて、わたしが一体全体何者なのかを探してるの」必死に。

「自分探しの旅か」……なんかその言い方イヤ!

 アズはようやくわたしの頭を無事に解放してくれた。ち、ちぎれてないよね。

「坊やのダチじゃあ喰うわけにはいかねえな、じゃあ、そっちのメガネがアタシのエサか?」ぺろり、舌なめずり。

「ひ、ひえぇ」エルルカも変な声出てる。

「こっちはエルルカ、わしの孫じゃ、喰ったら許さんぞ」

「孫!? お前に孫!?」

「人間の時間の進みはお前らよりずっと早いぞ。60年も経てばわしにだって妻を娶り子供に孫も出来るんじゃよ」

「あのかわいかった純情少年に孫がいるってのはマジで信じられんが、うーん、確かにヨボヨボに老けこんじまってるもんな」

 この頑固おじいちゃんがかわいかった!? その話もとても気になります!

「ふん、わしの事なんぞどうでもいい、なあ、アズ、ドラゴンを何匹か貸してくれんか。わしらを魔王のところまで連れて行ってほしいのじゃが」

「おう、いいぞ」

「「いいの!?」」

 思った以上にあっさりと了承してくれたんですけど。事情も聞かず二つ返事、豪胆でさっぱりしてる! あ、いや、なんかめちゃくちゃ強そうなドラゴンだし恐れ知らずってことかも。

「魔王のところか! ハハッ、いいね! イッシュ坊やの頼みなら断れねえよな!」

「なんじゃ、アズが直々に連れて行ってくれるのか? 人間は乗せない主義じゃなかったか?」

「ああ? アタシとあんたの仲じゃないか。あんたとその孫、それに友達なら特別さ」

 人間とドラゴン、きっと相容れないはずだったこのふたりに一体どんな物語があったのだろうか。

 ふたりを見ていると、きっとどちらも教えてくれないだろうな、って思うんだよね。

 だって、それはたったふたりだけのささやかな物語だと思うから。

「一度は魔王に仕えた我が身、今は坊やに助けられしこの命、再び会いまみえる日が来ようとはな! ハッ、無駄に長生きもしてみるもんだな!」

 すると、アズはニヤリと大きく口角を上げ、その鋭い乱杭歯を盛大に覗かせる。

 唐突に、アズの身体が軋む、歪む。

 身体中の刺青が黄金に輝く。変貌は身体の至るところから。その口は大きく裂け、その牙がさらに大きく。

 身体には紅い鱗が生えて不自然に膨張し、わたしの身体なんかよりさらに巨大に。

 その膨張はすらりとしていたはずの両腕から両足、そして、全身に至り、そのあまりの重量に耐えきれずに地面を激しく揺らしながら四つん這いになる。

 あまりにも唐突で異様なアズの変身にわたしとエルルカは驚きながらそれを見守るしかできない。

 ちらりと隣のおじいちゃんを見てみると、まあ、相変わらずの仏頂面だったんだけど、なぜかとても嬉しそうな愛おしそうな表情にも見えた。
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