この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

文字の大きさ
70 / 235
荳也阜縺ョ邨ゅo繧翫↓蜷帙r隕九◆

■■  【■■■■・紙■■】■■■■③

しおりを挟む
「そのために、ありとあらゆる世界から、厨二病の乗せやすいお調子者のおバカゲフンゲフン神に選ばれし真の勇者となる転生者を召喚したのですよ」

 さっきから何を言ってるかさっぱりわからない。【心励起/仇多羅急行】で遭遇した転生者、リョウガ達はそんなこと言ってなかった。オレ達はこの世界を救うんだって、だから、まずはこの列車を止めるんだって。結局、そう言っておいて手当たり次第に周りを破壊しようとしていただけだったけど。

 あんなのが勇者? いや、違う、この世界でかつて、勇者、と呼ばれた人はきっと傍若無人な乱暴者なんかじゃないはずだ。そうじゃなきゃ後世に伝説なんて残りはしない。残ったとしても悪名だろう。

 彼女が言うことは何もかも信用できない。

 彼女は明確にわたしの物語をめちゃくちゃにする存在だ。

「それにしても……、」

 小烏丸は、わたしのことなんて見向きもせず、ふらりと視線を上に。

「〝鬱々没個性は半神付随劣等感(デミゴッド・アノマライザー)‟、神の権能を与える力で、異世界転生最強スローライフ悪役令嬢主人公を大量生産したはずなのに、」

 小烏丸は大きくため息を吐き出すと、やたらとわざとらしくやれやれと首を横に振る。

「こいつら、全然使えねえじゃん」

 さっきまでの軽々しい口調から一変、淡々と言い放つ。その口調の急激な変化に、「ッ……!」背筋にゾッと寒気が走る。

「……あなた、何者なの?」

「だ・か・らー、神様だって言ってるじゃないですかー。この世界の創造神にして、今から始まるこの物語の主人公です、おわかりー?」

 至極軽々しく。得体の知れない小烏丸の冷たさに、なぜか凍り付いたように動けずにいるわたしとは対称的に。でも、

「これはわたしの物語よ、突然出てきた登場人物なんかが壊さないで」

 きっとこの声の震えは寒さじゃない、だけど、たとえどんなに怖くてもどうしてもこれだけは言っておかなきゃいけなかった。

 わたしこそがこの錯誤世界を創ったのだから。

 わたしだって“始源拾弐機関”なのだから。

 だって、わたしこそがこの物語の主人公なのだから。

「はあ? 何の力も持たない無能なモブが何を言ってるんですか? 名前もないNPCが主人公気取りですか?」

 もうわたしとの会話にすらうんざりしているのか、小烏丸はこんな緊迫した状況ですら気にも留めていない。いや、もしかしたら、別に緊迫しているとすら思っていないのかもしれない。

「メタ的な発言は読者に好まれませんよ? 独り善がりの自慰では相手は喜びませんからね」

「この世界を壊そうとしているアナタには言われたくない」

「え、なんかワタクシが悪者みたいに言うじゃないですか~。いやいや、どちらかというと悪者はあなた達の方ですよ~、神に仇なす旧支配者、なんて構図は」

「そもそもアナタがこの世界を壊さなきゃいいだけの話じゃない」

「いいえ、そうはいきませんよ、この世界は刷新されるべきなのです」

 訳がわからない。この神っぽくない少女の方こそがメタ思考していて、その本質は悪意だ。人を小馬鹿にしたような作為的な言動にぴりぴりとイラつく。それっぽいことをつらつらと宣っている“風”でいて、だけど、わたし達は何も相互理解できていない。

 この世界の神様であるはずのこの少女がどうして、壊してやろうとするほどにこの世界を憎んでいるのか。ただの子どもでしかないわたしには、神様の気持ちなんて計り知れない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...