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白紙→描写
ーー D.D.D 《 R》 ーー
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「そうね、どこかのだれかさん、ワタシだってここがどこかなんてさっぱり知らないの。ええ! なぜって、こんなにも真っ白な景色じゃあここがどこかなんてわかりようもないじゃない!」
最後の方なんかはキーキー甲高く叫ぶだけで、ラフィーナが何を言っているのかわからなくなってしまった。思わず耳をふさぐ。
でも、そう、この少女の言う通り。
真っ白なだけの世界。
わたしとラフィーナは、気づいた時からずっと、このただ白いだけの場所にいる。へたりこんでその場から動けずにいる……のはわたしだけか。
浮遊しているようにも沈み込んでいるようにも拡がっているようにも囚われているようにも思えるような。
ただの真っ白。
雪の白さでも骨の白さでも砂の白さでも月の白さでもない。
例えようもないほどの純白、あるいは、白濁、虚無。
たったの一文字目はおろか、インクの染みひとつすらない。遠近感さえ消えてなくなっている。この白に溶けてしまいそう。無感覚。何も思いつかなくて、何も考えられなくなっているのかもしれない。
「こんなのが世界なんて……」
「あらまあ! 何もない世界だって、どうしようもなく世界には違いないわ! ワタシったら何もない世界は2度目なのですから! えーっと、初めては【忘却の果て】だったかしら?」
キーキー叫んでから、自分語りに。そろそろちょっとはラフィーナから離れないと耳がどうにかなっちゃいそう。
「それで? そのときはどうやって、えっと、【忘却の果て】だっけ? そこから出られたの? ずっとそこにいたわけじゃないんでしょ?」
「ええ、そのときは、“さあ、物語のはじまりはじまり!(ストラトスフィア・アトモスフィール)”のおかげで【忘却の果て】を壊すことができたのだけれども、今はとっても無理な相談なの」
至極残念そうにゆっくりと首を振る。ラフィーナの話は何もかもがどこか遠い世界のおとぎ話みたいで、わたしが知っていそうなことはなにひとつなかった。……わたしが知っていることなんて何ひとつもないけれども。もしかしたら、本当にわたしの知らない世界のおとぎ話なのかもしれない。
「それじゃあどうするの? わたしたちはずっとこの真っ白な世界にいなきゃいけないの?」
なんとなくだけど、他の世界なんて知らないはずなんだけど、ここに留まるのは嫌な気がした。もっと違う世界がどこかにある、そんな気がする。ラフィーナの言っていることは曖昧で誰も知らない物語みたいでどこか教訓めいていていまいちよく分からない。けど、ラフィーナはきっと、こことは違う世界、わたしの知らない世界の物語を知っている。
それなら、わたしは。
すると、ラフィーナは少し困ったような表情で、その華奢な人差し指を幼さの残る丸い顎に添える。
「うーん、あのね、ワタシはただの読者なの。どこかのだれかさんが奏でた物語をなぞるだけ。だけど、ここには物語なんて影も形もありゃしない。これはあなたが綴るべき物語なのに」
「そんな……。わたしは物語なんて知らない。わたしは何も持ってない。わたしは」
「ねえ、アナタはだあれ? ここはどこなのかしら?」
最後の方なんかはキーキー甲高く叫ぶだけで、ラフィーナが何を言っているのかわからなくなってしまった。思わず耳をふさぐ。
でも、そう、この少女の言う通り。
真っ白なだけの世界。
わたしとラフィーナは、気づいた時からずっと、このただ白いだけの場所にいる。へたりこんでその場から動けずにいる……のはわたしだけか。
浮遊しているようにも沈み込んでいるようにも拡がっているようにも囚われているようにも思えるような。
ただの真っ白。
雪の白さでも骨の白さでも砂の白さでも月の白さでもない。
例えようもないほどの純白、あるいは、白濁、虚無。
たったの一文字目はおろか、インクの染みひとつすらない。遠近感さえ消えてなくなっている。この白に溶けてしまいそう。無感覚。何も思いつかなくて、何も考えられなくなっているのかもしれない。
「こんなのが世界なんて……」
「あらまあ! 何もない世界だって、どうしようもなく世界には違いないわ! ワタシったら何もない世界は2度目なのですから! えーっと、初めては【忘却の果て】だったかしら?」
キーキー叫んでから、自分語りに。そろそろちょっとはラフィーナから離れないと耳がどうにかなっちゃいそう。
「それで? そのときはどうやって、えっと、【忘却の果て】だっけ? そこから出られたの? ずっとそこにいたわけじゃないんでしょ?」
「ええ、そのときは、“さあ、物語のはじまりはじまり!(ストラトスフィア・アトモスフィール)”のおかげで【忘却の果て】を壊すことができたのだけれども、今はとっても無理な相談なの」
至極残念そうにゆっくりと首を振る。ラフィーナの話は何もかもがどこか遠い世界のおとぎ話みたいで、わたしが知っていそうなことはなにひとつなかった。……わたしが知っていることなんて何ひとつもないけれども。もしかしたら、本当にわたしの知らない世界のおとぎ話なのかもしれない。
「それじゃあどうするの? わたしたちはずっとこの真っ白な世界にいなきゃいけないの?」
なんとなくだけど、他の世界なんて知らないはずなんだけど、ここに留まるのは嫌な気がした。もっと違う世界がどこかにある、そんな気がする。ラフィーナの言っていることは曖昧で誰も知らない物語みたいでどこか教訓めいていていまいちよく分からない。けど、ラフィーナはきっと、こことは違う世界、わたしの知らない世界の物語を知っている。
それなら、わたしは。
すると、ラフィーナは少し困ったような表情で、その華奢な人差し指を幼さの残る丸い顎に添える。
「うーん、あのね、ワタシはただの読者なの。どこかのだれかさんが奏でた物語をなぞるだけ。だけど、ここには物語なんて影も形もありゃしない。これはあなたが綴るべき物語なのに」
「そんな……。わたしは物語なんて知らない。わたしは何も持ってない。わたしは」
「ねえ、アナタはだあれ? ここはどこなのかしら?」
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