この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

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■■■■■■■■■→戦闘描写

■■【貌無き炉心】■■⑦

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 振りかざした右腕が砕け落ちた。「は?」

 痛みはない。なぜか間抜けな疑問だけがあった。え、なんで壊れたの?

 魔剣が零れ落ちて、べちゃりと霧散、漆黒のワンピースへと収束する。

 バランスを崩して、よたよたと数歩歩き、わたしは立ち止まった。立ち尽くした。右腕の喪失、そんな意味のわからない状況が理解できなくて、もう一歩も動けない。加速することすらできない。ごとん、加速停止とともに、わたしの右腕が無機質に地面に落ちた。

 あっさりと肘からなくなってしまった右腕はまるで、出来損ないの彫刻のように砕けていて、触れたら切れてしまいそうな鋭いひび割れは落としてしまったガラス細工を思わせた。

 それは、ヒトを模した人形の崩壊。

 わたし、という人間の部分が壊れて、何か違う、もっとおぞましいものが露呈したような、ぬるりとした焦燥。

 獣ですらない、これは明らかに無機物の壊れ方だ。

 わたしは何なの? なんとなく普通のヒトではないような気はしていたけど、そもそも生きてすらいないの? 他の“始源拾弐機関”と同じように、ヒト、という形をした異形だとでも言うの? これじゃあ、まるで化け物じゃないか。

 右腕と共に崩壊した自らの存在定義を延々と自問自答、その無機質なひび割れを眺めながら呆然と立ち尽くすわたしを、魔獣たちは放っておいてはくれない。そうやって突っ立っていたって、きっとその答えは出ないし、誰も教えてくれやしない。獣が迫る。

「……そっか、わたしはここで終わるのね」

 なんとなくそんな気がする。もはや闘争心も憤怒も夢も希望も何もかも燃え尽きてしまった。あの時に満たされたはずのわたしの身体の真ん中は、再度空虚に孔が空いてしまった。

 それなら、最期まで足掻こうか。

 ホップ・ステップで踊ろうか。

 目前に迫る獣へと突撃しようと踏ん張「ッ」った右足が砕け、そして、バランスを崩して左足も破砕。転倒。それでも、ぬるり、変成、なんとか左手に纏った黒爪を獣の脳天に突き立てる。

 ああ、クソ、これじゃああいつらに飛び掛かることもできないじゃないか。

 黒翼の展開、砕けていく身体を無理矢理上空へ。

 眼下、この世界は暗くなっていた。もう燃える獣の数は相当減っていて、この地下世界唯一の光源はもう数えられるほどに少なくなっていた。また、世界は黒くなる、そして、わたしは黒く塗り潰された世界の中で砕けて死ぬ。わたしはこの世界を彩ることができなかった。

 あと、もう少し――

 わたしの左腕はもう、重さなんて感じなかったはずの魔剣も、ただの孔でしかないはずの星槍すらも持てず、その負荷に肩から崩れ落ちる。大丈夫、もう、腕なんて要らない、魔剣は変幻自在で、わたしの顎はまだ、星槍を咥えることができる。

 びしり、右目の下がひび割れる、良かった、まだこの虹色の瞳を失うわけにはいかない。最期まで、わたしが創った世界を見届けなければいけない。
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