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起承転結《 》
―― 【深層義肢】――②
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「……そなた、あの時の“始源拾弐機関”か? 良かった、無事であったのだな」
どこからともなく声が、いや、むしろ無機質な音、といった方が正しい、ひび割れたノイズが聞こえてきた。
その声は、この曇天の空に重く響く乾いた風のようで聞き取りにくい。そのざらついた音の発生源が見つけられなくて、思わずきょろきょろ周りを見渡してみる。だけど、どう見たってどこまでも瓦礫と廃墟のうんざりするような土色が拡がっているだけだった。でも、もしかして……
「ばうッ!」
そんな謎の音声に、もっふもふのおっきくて白い獣、メルトが代わりに応える。
そう、わたしが勝手に、メルト、と名付けたこの獣はわたしの全身全霊を込めた一撃を喰らわせてやった魔獣達の最後の1匹。なぜだかわたしに懐いてくれて、その燃える身体で地下を明るく照らして、わたしを地上まで案内してくれた。もう、わたし達は友達だもんねー。
「その声は【貌無き炉心】か、ふむ、貴方が同行しているのなら心強い」
「ばふ」
「え、もしかして、この仔、“始源拾弐機関”なの!?」
わたしのことを見ているかもしれないどこかのだれかさんに向かって叫んでみる。どこにいるかわからないものとの会話ってとっても大変ね。だって、こんなにも気分は落ち込んでいるのに、いちいちキョロキョロしながら大声で叫び続けていなきゃいけないんだもの。
「如何にも。彼は【貌無き炉心】――世界を掻き立てるもの。そなたはこやつから何か託されなかったか?」
「あ、そういえば、燃える血をもらったよ、それでわたしの身体がなおったの」
わたしはまだだれかさんを見つけられない。壊れた機械が擦れる不協和音の聞き間違いじゃない、確かにだれかがわたしに話しかけている。それとわたしは会話している。まるで、この乾いたお空とお話しているみたいだけど。
あのとき壊滅的に砕け散っていたわたしの身体は、最期にあの黒い獣、メルトがくれた燃え上がる血によって、ほとんど全回復してしまった。
今のわたしは自分の体温も鼓動も感じる。
もう、冷たいガラス細工の無機物なんかじゃない。ちゃんと血の通った生きものだ。他の生きものよりはちょっとだけ体温高めになっちゃったけど。
「そうか、血とは身体を巡る生命力そのもの。熱とは存在の原動力そのもの。【貌無き炉心】、彼が司るものは、燃え盛る情熱に他ならない」
そうか、これがメルトの力なんだ。
あのときのわたしは、わたしの全身全霊をあの最後の1匹にぶつけた。無我夢中で死にかけだったから意識していなかったけど、わたしはあの獣にわたしのありったけをぶつけたんだ。
文字通り、当たって砕けて、そして、メルトにわたしの熱は伝わった。
もしかしたら、話が通じないただの獣だと思っていたのはわたしだけで、あの戦いを通してメルトはずっと、わたしと対話していたのかもしれない。最期に思いは伝わった。
そして、わたし達は友達になれた。
「ありがと、メルト。やっぱりアナタがわたしを助けてくれたんだね」
「わふ」
わたしがそのふわふわの毛並みを撫でると、メルトはくすぐったそうにきゅっと目を瞑る。こうしていると、もう、あのときの獰猛さは欠片もなく。
今はただの白くておっきなもふもふの毛玉でしかない。
ーー ーー
どこからともなく声が、いや、むしろ無機質な音、といった方が正しい、ひび割れたノイズが聞こえてきた。
その声は、この曇天の空に重く響く乾いた風のようで聞き取りにくい。そのざらついた音の発生源が見つけられなくて、思わずきょろきょろ周りを見渡してみる。だけど、どう見たってどこまでも瓦礫と廃墟のうんざりするような土色が拡がっているだけだった。でも、もしかして……
「ばうッ!」
そんな謎の音声に、もっふもふのおっきくて白い獣、メルトが代わりに応える。
そう、わたしが勝手に、メルト、と名付けたこの獣はわたしの全身全霊を込めた一撃を喰らわせてやった魔獣達の最後の1匹。なぜだかわたしに懐いてくれて、その燃える身体で地下を明るく照らして、わたしを地上まで案内してくれた。もう、わたし達は友達だもんねー。
「その声は【貌無き炉心】か、ふむ、貴方が同行しているのなら心強い」
「ばふ」
「え、もしかして、この仔、“始源拾弐機関”なの!?」
わたしのことを見ているかもしれないどこかのだれかさんに向かって叫んでみる。どこにいるかわからないものとの会話ってとっても大変ね。だって、こんなにも気分は落ち込んでいるのに、いちいちキョロキョロしながら大声で叫び続けていなきゃいけないんだもの。
「如何にも。彼は【貌無き炉心】――世界を掻き立てるもの。そなたはこやつから何か託されなかったか?」
「あ、そういえば、燃える血をもらったよ、それでわたしの身体がなおったの」
わたしはまだだれかさんを見つけられない。壊れた機械が擦れる不協和音の聞き間違いじゃない、確かにだれかがわたしに話しかけている。それとわたしは会話している。まるで、この乾いたお空とお話しているみたいだけど。
あのとき壊滅的に砕け散っていたわたしの身体は、最期にあの黒い獣、メルトがくれた燃え上がる血によって、ほとんど全回復してしまった。
今のわたしは自分の体温も鼓動も感じる。
もう、冷たいガラス細工の無機物なんかじゃない。ちゃんと血の通った生きものだ。他の生きものよりはちょっとだけ体温高めになっちゃったけど。
「そうか、血とは身体を巡る生命力そのもの。熱とは存在の原動力そのもの。【貌無き炉心】、彼が司るものは、燃え盛る情熱に他ならない」
そうか、これがメルトの力なんだ。
あのときのわたしは、わたしの全身全霊をあの最後の1匹にぶつけた。無我夢中で死にかけだったから意識していなかったけど、わたしはあの獣にわたしのありったけをぶつけたんだ。
文字通り、当たって砕けて、そして、メルトにわたしの熱は伝わった。
もしかしたら、話が通じないただの獣だと思っていたのはわたしだけで、あの戦いを通してメルトはずっと、わたしと対話していたのかもしれない。最期に思いは伝わった。
そして、わたし達は友達になれた。
「ありがと、メルト。やっぱりアナタがわたしを助けてくれたんだね」
「わふ」
わたしがそのふわふわの毛並みを撫でると、メルトはくすぐったそうにきゅっと目を瞑る。こうしていると、もう、あのときの獰猛さは欠片もなく。
今はただの白くておっきなもふもふの毛玉でしかない。
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