この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

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起承転結《 》

――    【深層義肢】――③

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「……ねえ、そういうアナタはもしかして【深層義肢】なの?」おそるおそる。

「如何にも。我は【深層義肢】――世界を定めるもの、の成れの果てだな、今は」

 ぎーぎーと金属が擦れるイヤな音がその存在を知らせる。

 ああ、否定してほしかった。

 はじめはそれが何なのかわからなかった。

 それは初めからわたしの目の前にあったんだ。

 世界の破壊の中心地に、それは神と転生者による勝利を称えた巨大な記念碑として虚しくそびえ立っていた。

 見る影もない。あのときに感じたはずの畏怖にも似た一種の神々しさなんて、今は微塵もない。

 空よりもさらに高いところに浮かんでいたはずの【深層義肢】の巨大な頭部は、白磁でできた仮面のようなあの無機質な白い顔を剥がされ、むき出しの機械の一部だけが、彼女の巨大な指に突き刺さってぶら下がっているだけだった。

「どうしてこんなことを……」

「我は存在定義の具現なり。我を壊すと世界が定義を失うが故に、我はただ生かされているだけの状態だ」

「ひどい……」

 そして、そのオブジェは他の廃墟と同じように雨風に晒され錆び付き、もはや瓦礫の山と一体化している。どう考えても管理するものなどいるはずない。死体を弄び、無惨に晒す痛ましさとおぞましさにぞわりと背筋に寒気が走る。

「問題はない、我が機能は維持できている」

「問題だらけよ! まず、アナタがこんな姿になる必要がないわ! そして、世界はもうとっくにめちゃくちゃに書き換えられているわ! これじゃあ、アナタの機能なんて意味がないじゃない! 最後に、わたしが主人公じゃない!」

「……なんか、すまない」

 これじゃあ、ほとんど八つ当たりだ。子どものわがままだ。ここにいるみんな、だれも悪くないのに、どれもこれもあの神様のせいなのに、どうしようもなくだれかのせいにしたくてただ喚き散らかしているだけだ。せっかくだれかさんを見つけられたのに、わたしはまだ叫びっぱなしだ。

 だけど、それなのに、【深層義肢】は、わたしなんかの戯言を静かに聞いていてくれた。そっか、出来るオンナは聞き上手、そうよ、エルルカもそうだったわ!

「ね、ねえ、他の“始源拾弐機関”は!?」

 わたしが出来るオンナになるのはまだまだ先になりそう。だって、わたしの知らない物語じゃあ、ベッドの中で大人しくお話を聞くことよりも訊きたいことの方がよっぽどたくさんあるのは仕方のないことじゃない。それに、わたしはわたしの口を止められやしない、今はもうぐっすり寝ている場合じゃない。

「【天変界位】は【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】によってこの星から逃れた。そして、【超弦骨格暫定式・波動帝國】は破壊された。他の“始源拾弐機関”はわからぬ」

「そんな……」

 わたしが何もできなかったから? 【天変界位】を守るっていう【心励起/仇多羅急行】との約束すらも守れなかったから? ちゃんとあの子の元に行っていれば、【軌条空論・紙一重】はわたしを守りながら戦う、なんてハンデもなかったし、もしかしたら【天変界位】も助けられたのかもしれない。

 きっと、わたしはただの足手まといだった。

 いくら“始源拾弐機関”のみんなから力を託されたって、結局わたしは何もできないままだ。

 何も変わっちゃいない。わたしは転生者と同じように、ただ力を与えられただけの子どもに過ぎない。ケヴィンたちと別れたあの時からずっとわたしは何ひとつも成し遂げていない。

 悔しい。

「くうぅ」

 【貌無き炉心】、メルトがわたしの腰の辺りに顔を添えて心配そうに鳴く。乾いた風にどろりと翻る少し短めのワンピースのスカート、晒されるわたしの細い太ももに、ふわふわの毛の感触がくすぐったい。「大丈夫、ありがとう」


   ーー        ーー
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