この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

文字の大きさ
40 / 235
起《承》転結

ーー異世界仲直りーー②

しおりを挟む
「オレの村が魔物の群れに襲われた」

「……え」

 ぽつり、ケヴィンはそれだけを絞り出すように呟く。苦々しく、苦しそうで。

「村のみんな殺されて、何も残っていなかった」

「ひどい、そんな……」

 囁き森のひと達は、正体不明の怪しい少女であるわたしにも優しく気さくに接してくれた。そんなひと達がいなくなってしまったなんて。非現実的すぎて実感もない、悲しみすら湧いてこなかったわたしは非情な女なのかしら。

 でも、もし魔物が襲ってきたっていつもみたいにみんなで協力してやっつけちゃうんじゃないの? どうして、どうしてそんなことになってしまったの?

 あまりのショックで立ち尽くすわたしの様子になんて構わず、ケヴィンはわたしに向けて、黄金の柄に大きな宝石をいくつも散りばめた豪華な両刃の切っ先を突きつける。

「ねえ、ケヴィン、あの大事にしていた剣はどうしたの?」

「あんななまくらなんてとっくに売ったよ、ほとんどタダ同然だったけどな。今は、女神様から授かったこの聖剣、ブラドムーンがある」

「そっか……」

 やっぱり、わたしはケヴィンのこと、何も知らなかったみたい。あんなに大切にしていたと思っていた剣は、ケヴィンにとってはそれだけの価値しかなかった。

 今、自分に向けられているピカピカの大剣よりも、あの素朴で、でも、手入れの行き届いた小さな剣の方が絶対にかっこよかったのに。

「そうか、さては、キティ、お前、魔物だろ。そして、お前が魔物どもを手引きしたんだな」

「は? なんでそうなるの?」

「いくら探したってあの街でお前を見つけられなかった。きっと、村にオレとリイサがいない隙を狙って……」

「待ってください、ケヴィンさん。キティさんはずっと私と一緒にいました。それにキティさんは魔物じゃありません!」

 エルルカがわたしを庇うようにぎゅっと抱き寄せる。エルルカのこんなに強い口調は初めてだ。それに、そんな強い眼差しも。

 わたしはまた、何もできないままエルルカに守られてばかりいる。なんだか胸がまたぽっかりと空いてしまったような感覚は、きっと強い喪失感。魔剣を浴びて理解してしまった。わたしは、失ってばかりいて、得るものは少しだけ。

 ああ、わたしはまだ、何もできないの?

 いろんな街に行って、いろんなひととお話して、いろんな物語を読んで。

 それでも、わたしはまだ、立ち尽くしたままなの?

「おいおいおいおい、アタシの友達に剣を向けるとはいい度胸だな、人間? ああ?」

 そして、意外にも友達想いなアズの口がガパリと大きく裂け、両手の爪がじゃきんッと伸びる。こっちはこっちでイラついているみたい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

処理中です...