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対立→■■■→再演
■■■■■■■異世界■生勇者 ――③
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「ところで勇者様はどうして、この列車、【心励起/仇多羅急行】に乗車したのかしら?」
車内の通路は人ひとり分が通れるくらいの道幅で、必然的に一列になって進んでいる。わたしは一番後ろで車内の猛烈な揺れに身体を揺さぶられながら3人に着いていく。
「へえ、この列車、そんな名前なんですね。アダタラ急行、ですか、」
わたしの前を行くアヴァリスは、「キャッ」倒れかけたわたしの腰に右手を添えて身体を支えてくれながら、わたしに向かってニコリと微笑む。なんとなくアヴァリスに抱きかかえられているかたちになって、思わず目を逸らしてしまう。……この笑顔はなんだか苦手だ。
「まるでチュウセイヨーロッパのようなお城があると思ったら、こんな豪華な列車が走っていますし。それに女神様は巨大ロボットも存在している、なんて仰っていましたね、」
そそくさと離れようとするわたしをアヴァリスはそっと抱き起こしてくれた。エスコートはありがたいんだけど、あんまり構われ過ぎるのもちょっとね。レディに対しては程よい距離感が大切なのよ。
「文明レベルは僕達がいた二ホンとは比べ物にならないくらい低いのにとても不思議な世界観ですよね」
「そんなくだらねえ世界観の考察なんてどうだっていい、あの駄女神の創った世界なんだから頭足りてねえのは仕方ねえだろ」
「なっ……! この世界にいるわたしはそうは思いませんけどね!」
なんとなくわたしの物語を否定されたような気がして思わずムッとしてしまった。それに、この世界は女神様が創ったんじゃない、わたしが創ったんだよ、と、言いたいのに言えないもやもやもあったし。
アヴァリスはわたしが不機嫌になったその意味がわからないらしくて、にっこりしたまま首をかしげていた。
「ま、俺達はこの暴走特急を止めに来ただけだ。この列車が近くの街を壊しまくってるってあのクソ駄女神から聞いたからな、仕方なくだ」
「リョウガは正義の味方なんだもんねー」
「う、うるさい、ユノ。仕方なくって言ってるじゃねえか」
なんだか赤面しながら必死に抗議しているリョウガと、にやにやとからかうようなユノのそんな茶番を眺めながら、ふとした違和感。
わたし達が遊牧民の隊商から聞いた話と違う。
彼らは、【心励起/仇多羅急行】は街や人がいる場所を通るときは必ず地下深くに潜るのだと、と言っていた。だから、乗車するときは少人数で待たなくてはいけない、その列車はすぐに隠れてしまうと。それに、文献にもそういった記述があるっておじいちゃんも言ってた。
きっと、この暴走特急は争いを好まない。
どうして、【心励起/仇多羅急行】が止められなくちゃいけないんだろう。この列車は何千年も昔から一切止まることなくこの世界を走り続けている。だって、それが普通のことで、それがきっとこの列車の司るもののはずなのに。
【心励起/仇多羅急行】は、ただありのままであるだけのはずなのに。
彼らは近くの街を見ていないのだろうか、どこにも壊されたところなんてないはずなのに。
でも、もしかしたら勇者様には勇者様の考えがあって、女神様のお願いを聞いているのかもしれない。
それにしても、彼らがさっきから言っている女神様って何だろう。ケヴィンも神様のこと言ってたな。わたしはまだまだ、この世界のことを良く知らないままだ。この世界の神話や宗教についても調べる必要がありそうね。
車内の通路は人ひとり分が通れるくらいの道幅で、必然的に一列になって進んでいる。わたしは一番後ろで車内の猛烈な揺れに身体を揺さぶられながら3人に着いていく。
「へえ、この列車、そんな名前なんですね。アダタラ急行、ですか、」
わたしの前を行くアヴァリスは、「キャッ」倒れかけたわたしの腰に右手を添えて身体を支えてくれながら、わたしに向かってニコリと微笑む。なんとなくアヴァリスに抱きかかえられているかたちになって、思わず目を逸らしてしまう。……この笑顔はなんだか苦手だ。
「まるでチュウセイヨーロッパのようなお城があると思ったら、こんな豪華な列車が走っていますし。それに女神様は巨大ロボットも存在している、なんて仰っていましたね、」
そそくさと離れようとするわたしをアヴァリスはそっと抱き起こしてくれた。エスコートはありがたいんだけど、あんまり構われ過ぎるのもちょっとね。レディに対しては程よい距離感が大切なのよ。
「文明レベルは僕達がいた二ホンとは比べ物にならないくらい低いのにとても不思議な世界観ですよね」
「そんなくだらねえ世界観の考察なんてどうだっていい、あの駄女神の創った世界なんだから頭足りてねえのは仕方ねえだろ」
「なっ……! この世界にいるわたしはそうは思いませんけどね!」
なんとなくわたしの物語を否定されたような気がして思わずムッとしてしまった。それに、この世界は女神様が創ったんじゃない、わたしが創ったんだよ、と、言いたいのに言えないもやもやもあったし。
アヴァリスはわたしが不機嫌になったその意味がわからないらしくて、にっこりしたまま首をかしげていた。
「ま、俺達はこの暴走特急を止めに来ただけだ。この列車が近くの街を壊しまくってるってあのクソ駄女神から聞いたからな、仕方なくだ」
「リョウガは正義の味方なんだもんねー」
「う、うるさい、ユノ。仕方なくって言ってるじゃねえか」
なんだか赤面しながら必死に抗議しているリョウガと、にやにやとからかうようなユノのそんな茶番を眺めながら、ふとした違和感。
わたし達が遊牧民の隊商から聞いた話と違う。
彼らは、【心励起/仇多羅急行】は街や人がいる場所を通るときは必ず地下深くに潜るのだと、と言っていた。だから、乗車するときは少人数で待たなくてはいけない、その列車はすぐに隠れてしまうと。それに、文献にもそういった記述があるっておじいちゃんも言ってた。
きっと、この暴走特急は争いを好まない。
どうして、【心励起/仇多羅急行】が止められなくちゃいけないんだろう。この列車は何千年も昔から一切止まることなくこの世界を走り続けている。だって、それが普通のことで、それがきっとこの列車の司るもののはずなのに。
【心励起/仇多羅急行】は、ただありのままであるだけのはずなのに。
彼らは近くの街を見ていないのだろうか、どこにも壊されたところなんてないはずなのに。
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