縁は縁でも腐ってる

長澤直流

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◆壹

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 豊稔国。蒼城離れで美慶は部屋の窓に手をかけて中庭を眺めていた。
 朝方自分の閨に温もりを残していった宗近を思うその後ろ姿からは、既に元服が済んでいる身とはいえ、まだ少年の幼さを残しながらも年齢にそぐわない妖艶さが滲み出ている。
 美慶は艶っぽい溜息を吐くと離れに近づく足音に気付き、音の鳴る方を期待に満ちた瞳で見つめていたが、襖が開くと同時に目に見えて落胆した。そこには丸々と醜く太った少女、宗近の一人娘である早菜姫が若武者姿で複数名の屈強な男達を従え、仁王立ちでこちらを睨んでいたのだ。

「その恰好、如何なさいましたか?」
「何、ちょっとした余興じゃ。下賤な生まれのお前にはわかるまい」
 早菜姫は歪んだ笑みを浮かべた。
「…………姫様がこちらにお見えになられるなど……珍しい事もあるものですね」
「ふん、白々しい! 全ては浅ましいお前の差し金でしょう?」
「何の事でしょうか?」
「父上様を誑かしただけでは飽き足らず、この国までその穢らわしい毒牙にかけようとは……妾は許さぬぞ!」
 早菜姫がその丸い手を上げて言い放つ。
「この国をお前の思い通りになどさせぬ。その身、御前様の前で裁かれるがいい。さあっ! 連れて行け!」
「――っ!」

 美慶は屈強な男達の手から逃れるため立ち上がろうとして顔をしかめた。
 明け方まで伽に就いていた美慶は足腰が立たなくなっていたのだ。
 それでも逃げようと足掻くも、難なく取り押さえられ、あれよあれよという間に美慶は袋詰めにされてしまった。

「お前が消えればこの国の安寧は保たれるのだ! …………諸悪の根源であるお前が消えれば、あんな決断をなされた父上様もきっと目を覚まして下さいますでしょう」

 早菜姫がそう言うと美慶に一撃が加えられ、美慶は意識を手放した。




 激しく揺れる駕籠かごの中、美慶はぴりっとした痛みで目が覚めた。口の中に血の味が滲む。どうやら取り押さえられた時に少し口を切ってしまっていたようだ。
 どのくらい気を失っていたのか、美慶が目を覚ました頃には既に駕籠は豊稔を出た後だった。
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