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22 感謝の気持ち
しおりを挟む「はぁ……気持ちいい」
広い浴室で髪を洗われながら浴槽に浸かる。
なんて贅沢なんだろう。
そしてお風呂が気持ちいいと感じるこの健康がありがたい。
最近では体にすっかり違和感がなくなってきた。魂が体に馴染んでいるのかな?
「いつもありがとう、メイ。とても気持ちがいいわ」
「もったいないお言葉です。私も聖女様にお仕えできて幸せです!」
髪を洗ってくれているメイが元気に答える。
本当にいい人だなー。
「それにしても、聖女様は本当にすごいですね」
「すごい?」
「はい。あのルシアン大神官様と仲良くされているのですから」
メイの言葉にドキッとする。
仲良くって……別に仲がいいわけでは……。
「ルシアン大神官様はとてもお美しいのでメイドたちの間でも憧れの的なのですが、非常に近寄りがたく……あの瞳で見つめられると皆委縮してしまいます」
「たしかに」
私も最初は怖くて仕方がなかった。
銀色の髪にアイスブルーの瞳の、冬を思わせる美貌の持ち主。特にその視線は凍りつくようで。
だけど、いつの間にか彼を怖いと感じることがなくなっていた。
「そんな大神官様も聖女様には優しい視線を向けていらっしゃいますから。さすが聖女様です!」
「! や、優しい視線って……。彼は聖女として私を尊重してくれているだけよ」
「そうなのですか?」
「ええ。でも彼には感謝しているわ」
最初は強引だし冷たいし怖かったけど、なんだかんだ良くしてくれるし。
その一方で私は聖女らしいことを何もしていないから、一方的にお世話になっている感じがする。
聖女としての力に目覚めれば一番いいんだろうけど、それは私がコントロールできることじゃない。
でも、せめて感謝の気持ちだけでも伝えたいなあ。
手紙でも書く? 毎日顔を合わせてるのに変か。
ただ口頭でいつもありがとうと言う? それとも。
「何かプレゼントでもしてみようかな……」
ぼそりと言うと、メイがわあ、いいですね! と声をあげた。
「あっ……もちろんただの感謝の気持ちの表れよ」
「ふふ、そうですね」
「でも何か買うっていうのも……。大神官ともなれば自由になるお金も多いだろうし、そもそも物欲がなさそうだし」
「感謝の気持ちですし、何か手作りなどいかがですか?」
定番だと刺繍とか?
でもやったことない。できる気もしない。
「街の女の子たちの間では、感謝している相手に紐を編み込んで作るブレスレットを贈るのが流行なのだそうですよ。相手の幸せを願いながら編むのだとか。よろしければ作り方をお教えしますよ」
ミサンガみたいな感じかな?
それなら教えてもらえば作れなくもないかも?
「身に着けるものって迷惑にならないかしら……」
「ブレスレットにせず紐の先に水晶やガラス玉をつけてお守りとして飾る人もいるといいますし、気持ちが伝わればいいのだと思います」
「それもそうね」
それに聖女には祝福の力があると以前ルシアンが言っていた。
今は力が足りないかもしれないけど、心を込めて作ればちょっとしたラッキーアイテムくらいにはなるかもしれない。
「紐はご自身で街へ行って選ばれますか? もしくはご希望をお教えいただければ私が買ってまいります」
あれ? 聖女って外出していいものなの?
「外出についてルシアンにちょっと相談してみるわ」
「承知いたしました」
聖女って閉じこもっていなきゃいけないとばかり……違ったのかな。
翌朝の食事の席でルシアンに確認してみると、彼はしばらく考え込んだ。
「街に行ってみたいなって思ったんですけど……やっぱり駄目ですか?」
「駄目というわけではありません。オリヴィアは変装魔法や認識阻害魔法をかけてよく外出していましたから」
「あ、そうなんですね」
「聖騎士たちはオリヴィアに撒かれないよう必死でしたが、あなたならそんなことはしないので大丈夫でしょう」
予想通りというかなんというか。
護衛の人は大変だったろうなぁ……。
「じゃあ外出していいんですか?」
「はい。あなたは変装魔法は使えないと思うので、魔道具で髪色だけでも変えてください。護衛の聖騎士も手配します」
「ありがとうございます」
「いいえ。ただ、街には物騒な区域もありますから気を付けてくださいね。決して護衛から離れないよう」
「はい」
異世界の街かあ。
すっごく楽しみ!
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