鬼のセンチネル

弓葉

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陰陽寮の存在

日本酒は媚薬よりもうまい

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――玖賀を目覚めさせる数ヶ月前。

 藤は陰陽寮に連れてこられた。陰陽寮の話によると、どうやら藤には特殊なセンチネルとペアを組まされるらしい。隊服を渡され着替えた藤は、ある部屋に案内された。

「失礼します」

 藤が部屋に入ると、ベッドしかない。少し嫌な予感がした。

「あの……ここって……」

 藤は言葉を濁す。ベッドサイドには性的な玩具がずらりと並んでいた。それを横目に見ながら連れてきた隊員に話しかけた。

「藤と組むセンチネルは昏睡状態のため、リードしてもらわくてはならない。言いたいことがわかるよな」

 鷹のように鋭い目が光る。藤は頬を引きつらせながら「はい」と答えた。

「恥ずかしいと思うならこれを飲めばいい」

 隊員が部屋の奥から持ってきたのは『白鹿はくしか』のラベルが貼られた瓶。

「日本酒だ、媚薬よりも上手い。酒は強い方か?」

 男は酒器しゅきに白鹿を注いだ。ふわり、と日本酒の香りが漂ってくる。豊かな匂いに、藤は少し酔いそうだった。

「それなりに……」

 藤は酒器を受け取り、一口飲む。飲みやすく優しい味がした。

「安心しろ、挿入はしない。やりやすいように、受け入れやすい身体にするだけだ」

 男は深浦と言うらしい。酒を酌み交わし、互いの故郷の話をした。白鹿は深浦の地酒だそうだ。深浦がほろ酔い状態の藤に近づいてくる。

 藤は酒が進んでいく内に、暑くなって隊服を脱いでいた。ごろり、と藤がベッドに寝転がると、ベッドはいいものを使っているようで、ふかふかだった。

「は、い……」

 経験がない藤は身体を硬くさせる。緊張で強張った身体は動かなかった。あまり見過ぎるのはよくないか、股を大きく広げた方がいいのか、どうでもいいことが藤の頭の中を駆け巡る。藤は口を一文字に結び、相手がどう行動するのか待った。

「ん……」

「安心しろ、触るだけだ」

 深浦は藤の身体を触る。藤はくすぐったくて、息を漏らした。その口に深浦が口づけをする。

「ん、ん……」

 何をしているんだろう、弟や家族を守るために来たのに。敵から守るために来たのに、こんなことをしている場合じゃないのに。

――酒のせいか、抗えない。

 じゅくじゅくと自分の下半身から厭らしい音がする。自分の身体が別の身体になってしまった。

「安心しろ、センチネルは陰陽師に触れ合うためなら何でもする。そんな怖い存在じゃない」

 深浦はペチャリ、と藤の乳首を舐めた。人生で舐められたところがない場所を舐められ、藤はビクリ、と身体を震わせる。

「ふ、深浦さんはセンチネルですか?」

 特殊能力を持つのはセンチネルと陰陽師。何も持たないのは無個性。世の中は無個性な人間がほとんどだ。

「残念ながら無個性だ。センチネルは独占欲が強い。センチネルの匂いをつけすぎると都合が悪いからな」

 フッと、深浦は悲しく笑った。藤は深浦の感情を読み取ろうとするが、白鹿の匂いが藤の判断を迷わせていた。藤の鼻はお酒で麻痺をしており、深浦の感情が読めないでいる。

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