47 / 57
精神動物(スピリットアニマル)
鬼の国
しおりを挟む
「玖賀は僕のお気に入りだった。身よりもいなかったし、何より顔がいい。僕は美しいものが好きだ。もちろん、八重もね」
光流は藤の頬を撫でた。小さな手だが、何かをされそうで少し怖い。
「生まれつきセンチネルの能力を持っていた玖賀を甘い餌を与えて攫った。その頃は今の僕の姿のように幼かったな。髪を一括りにして結んでいたなぁ」
ふふふっと懐かしく笑う光流。藤は平気で人攫いのことを話す光流に対し恐怖を感じた。
「八重は館から逃げようとしているだろ」
ふふふ、とまた笑う光流。しくった……ここに来てから心が読まれていた。
「そんなことないよ」
藤は笑顔を取り繕う。頭の中で別のことを考えようとして赤面した。玖賀とのまぐわいを思い出したからだ。
「わー……八重ってえっちぃことが好きなんだねぇ。助平さん」
光流はずっと藤の頭の中を覗いている。
「ち、ちが……」
藤が否定する前に光流からキスをされた。ガイドの癒やし効果を求めているのか光流は舌を入れてくる。藤は噛まないように顔を背けた。
「ちょっと回復。玖賀に操を立ててんの? 別に玖賀は怒りやしないよ」
光流はしつこく藤に襲いにかかる。藤は光流を怪我させない程度に突き飛ばした。
「怒る、怒らないの問題じゃなくて……」
藤は光流にどう言おうか悩んでいた。頭の中を読まれている以上、言わなくても光流には伝わっている。
「ガイドはセンチネルの存在を癒やすもの。何の問題がある?」
悪気なく光流は言った。
「それはわかったよ。でも、光流くんはセンチネルだろ。それがどうしてガイドじゃなくてセンチネルである玖賀を攫う理由にあるんだ」
センチネルがセンチネルを攫う理由がわからない。センチネルはセンチネルを癒やす効果は持っていない。
「簡単じゃないか、僕の支配下に置くためだよ。当たり前じゃないか」
あどけない表情で光流は笑った。
「支配下……」
その考えはなかった。そうすると、今この館にはセンチネルが集まっていることになる。それは酷く恐ろしいものに思えた。
「そうだよ、センチネルの能力は厄介だろ。支配下に置く方が統制が取れる。現に陰陽寮がそうだろう? あれはガイドを集めて独り占めにした。僕と玖賀はね、鬼の国で生まれたんだ」
生き生きと話し始める光流。藤はとんでもないことに巻き込まれているんじゃないか、と思い始める。
「鬼の国……」
それはどんなものだろうか。どれほど、鬼が周りに存在しているのか。不安が巻き起こる。
「鬼にもセンチネルの能力を持っているやつと持っていないやつがいる。まぁ、センチネルの能力を持っているやつはほとんどいない。いや、生きてはいないかな。ガイドを求めて人里に下りるんだ。そこで不安定な人に宿ったりするんだけど、ガイドに寄生できなかったら自身を癒やすことができなくて原型を持たずに彷徨い、討伐されるか、闇落ちして妖怪になるか、神社で封印されたりとか……まともに鬼として生きているのは僕と玖賀ぐらいじゃないかな?」
光流は怪しい素振りを見せなかった。嘘をついているようには思えなかった。だが、光流にも藤が考えていることが伝わっているようだ。光流は苦虫を噛んだような顔をする。
「……玖賀は元、人間だって言っていた。光流くん、君はどこまで嘘をついている?」
一気に光流の存在が怪しくなった。藤は光流を警戒し始める。頭のことを読まれてもどうでもいい。どうせ、態度でわかっている。
「へぇ、僕の言っていることを信じてくれないんだ」
光流の目は赤く光っていた。途端、藤の身体に何かが起こる。
光流は藤の頬を撫でた。小さな手だが、何かをされそうで少し怖い。
「生まれつきセンチネルの能力を持っていた玖賀を甘い餌を与えて攫った。その頃は今の僕の姿のように幼かったな。髪を一括りにして結んでいたなぁ」
ふふふっと懐かしく笑う光流。藤は平気で人攫いのことを話す光流に対し恐怖を感じた。
「八重は館から逃げようとしているだろ」
ふふふ、とまた笑う光流。しくった……ここに来てから心が読まれていた。
「そんなことないよ」
藤は笑顔を取り繕う。頭の中で別のことを考えようとして赤面した。玖賀とのまぐわいを思い出したからだ。
「わー……八重ってえっちぃことが好きなんだねぇ。助平さん」
光流はずっと藤の頭の中を覗いている。
「ち、ちが……」
藤が否定する前に光流からキスをされた。ガイドの癒やし効果を求めているのか光流は舌を入れてくる。藤は噛まないように顔を背けた。
「ちょっと回復。玖賀に操を立ててんの? 別に玖賀は怒りやしないよ」
光流はしつこく藤に襲いにかかる。藤は光流を怪我させない程度に突き飛ばした。
「怒る、怒らないの問題じゃなくて……」
藤は光流にどう言おうか悩んでいた。頭の中を読まれている以上、言わなくても光流には伝わっている。
「ガイドはセンチネルの存在を癒やすもの。何の問題がある?」
悪気なく光流は言った。
「それはわかったよ。でも、光流くんはセンチネルだろ。それがどうしてガイドじゃなくてセンチネルである玖賀を攫う理由にあるんだ」
センチネルがセンチネルを攫う理由がわからない。センチネルはセンチネルを癒やす効果は持っていない。
「簡単じゃないか、僕の支配下に置くためだよ。当たり前じゃないか」
あどけない表情で光流は笑った。
「支配下……」
その考えはなかった。そうすると、今この館にはセンチネルが集まっていることになる。それは酷く恐ろしいものに思えた。
「そうだよ、センチネルの能力は厄介だろ。支配下に置く方が統制が取れる。現に陰陽寮がそうだろう? あれはガイドを集めて独り占めにした。僕と玖賀はね、鬼の国で生まれたんだ」
生き生きと話し始める光流。藤はとんでもないことに巻き込まれているんじゃないか、と思い始める。
「鬼の国……」
それはどんなものだろうか。どれほど、鬼が周りに存在しているのか。不安が巻き起こる。
「鬼にもセンチネルの能力を持っているやつと持っていないやつがいる。まぁ、センチネルの能力を持っているやつはほとんどいない。いや、生きてはいないかな。ガイドを求めて人里に下りるんだ。そこで不安定な人に宿ったりするんだけど、ガイドに寄生できなかったら自身を癒やすことができなくて原型を持たずに彷徨い、討伐されるか、闇落ちして妖怪になるか、神社で封印されたりとか……まともに鬼として生きているのは僕と玖賀ぐらいじゃないかな?」
光流は怪しい素振りを見せなかった。嘘をついているようには思えなかった。だが、光流にも藤が考えていることが伝わっているようだ。光流は苦虫を噛んだような顔をする。
「……玖賀は元、人間だって言っていた。光流くん、君はどこまで嘘をついている?」
一気に光流の存在が怪しくなった。藤は光流を警戒し始める。頭のことを読まれてもどうでもいい。どうせ、態度でわかっている。
「へぇ、僕の言っていることを信じてくれないんだ」
光流の目は赤く光っていた。途端、藤の身体に何かが起こる。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
仮面の王子と優雅な従者
emanon
BL
国土は小さいながらも豊かな国、ライデン王国。
平和なこの国の第一王子は、人前に出る時は必ず仮面を付けている。
おまけに病弱で無能、醜男と専らの噂だ。
しかしそれは世を忍ぶ仮の姿だった──。
これは仮面の王子とその従者が暗躍する物語。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる