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そうこうしているうちにアリシアは15歳になり、王都の学園へ入学する年になった。

アリシアを取り巻く環境は相変わらずだったが、図書館という息抜きもあり、日々うんざりするような事もあったけれど地味にやり過ごしてこれた。


入学試験を最高得点で突破したアリシアは、入学式では女子の総代を務め、学年で最も優秀な生徒たちで編成されるSクラスに配置された。

同学年であるチャールズはといえば、期待を裏切らず一番下位のDクラスだった。

努力が嫌い、勉強も嫌い、ニーダム家に頻繁に来てはケイトの部屋に籠る。当たり前の結果である。

しかし、何を根拠にしているのか良くわからない自信だけはある花畑脳のチャールズは、この結果が不本意だったらしくアリシアに毒づいた。

「お前は不正をしてSクラスに配置されたな?そして俺をお前のホウケイの加護とやらで陥れたに違いない!なんて卑怯なやつなんだ!」

一体その加護は何の神が与えるのか。

アホらしいにも程があると思ってサッサと教室に移動しようとすると、背の高い、整った顔立ちの3人の男子がアリシアの周りを囲むように立った。


「君が女神の加護を持つアリシア?」


アリシアが見上げると、3人のうちで一番綺麗な顔をした金髪の男子が、アリシアの返事を待たずに口を開いた。

「なんだ近くで見ても地味でダサい女だな。こんな女に俺は負けたのか。」

いきなりのことに二の句を継げずにいると、その隣の黒髪の眼鏡の男子がこう言い放った。

「なんでお前のような女に女神は加護を与えたのか。俺は認めない。」

そして最後は赤髪の筋骨隆々の男子が。

「加護と言うのはこういうもののことだ!」

そう叫んでムキっとモストマスキュラーポーズをとった。



ああ、この眼は、良く知ってる。



アリシアは思った。8歳の洗礼の日、教会にいた貴族の子どもたちの眼。

洗礼を受けるまでは、笑って話してかけてくれた子も、洗礼が終わったらこの眼をして黙り込んだ。


嫉妬と羨望の眼。


アリシアを取り囲んだ男子のうちの、一番綺麗な顔をした金髪は、男子総代だったこの国の第3王子。
黒髪眼鏡は宰相の、赤髪脳筋は騎士団長の長男だと後で知った。

ちなみにチャールズは、アリシアが3人に取り囲まれたのを見ると、なぜか自分の手柄顔でドヤと髪をふり、鼻の穴を広げた。
髪の隙間から見えるオデコは15歳のわりに広かった。



アリシアは、ここでもやはり私は背後を見られるのかと心の中で溜息をついた。

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