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第3章 41

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ーー図書委員の毎日は、割と忙しい。


アリシアは近頃、予定のない日は可能な限り図書館に顔を出すようにしている。

ヴァイオレットが生徒会長となり忙しくなったので、2人で過ごしていた放課後の予定が空いたのもあるけれど、主な理由は、委員に誘ってくれたヨハネス先生の顔色が日に日に濃い寒色系になっていくためである。


ヨハネス先生は元々、たまのサポート程度で図書館に関わっていたらしいのだが、図書館のやり手ベテラン女性職員さんが産休に入ることになり、少し業務に関わっていたことが仇となって急遽代理が見つかるまでの間、女性職員さんの抱えていた業務が回ってきたそうだ。把握していなかった細々とした仕事に追われ毎日残業していると本人が言っていた。

「アリシア君~、申し訳ないけど新刊のオススメ掲示板のコメント作成と更新よろしく~・・あと、今月の新刊をまとめて書籍収録簿に記帳しておいてくれるかい・・・」

「わかりました。というか、先生、大丈夫ですか?今日はもう帰った方が良いんじゃ?後のやれる分はやっておきますよ。」

青を通り越して紫・・下手すると黒に近い顔色でぷるぷるしながらペンを握るヨハネス先生を見て思わずアリシアはそう進言した。

「うぅ・・アリシア君に迷惑をかけてすまないねえ・・。お言葉に甘えて今日は帰ることにします・・。」

よたよたと職員室に戻って行くヨハネス先生の背中を見ながら、わかりましたと答えてアリシアは手を振った。


「ふう。私もこれが一段落したら帰ろうかな。」

放課後の人のいない図書館で、新刊のオススメ掲示板のコメントを書き終えたアリシアはそう独りごちた。

図書館の大きな窓から秋の夕陽が差し込むこの時間は、人気のなさも手伝って図書館を少し物悲しく幻想的な空間にする。書棚の影が長く長く伸びる。

掲示板の貼り替えを済ませたアリシアは書類を棚に仕舞い帰り支度をし始めた。
そしてもう帰れるという時に、カチャリと図書館の入り口の扉が開いた。

「なんだ、図書館はもう仕舞いなのか。職務怠慢だな。」

すみません、開館時間はもう終わってますと伝えようと振り向いたら、なんと声の主はイザークだった。

ヨハネス先生も帰った後なのにどうしようとアリシアは肝が冷える。案の定、アリシアと気付いたイザークは嫌な顔をした。

「ふん、誰かと思えば地味女ではないか。」
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