68 / 78
68,抑えきれない衝動
しおりを挟む
(ヴィーク目線)
学園生活最後の年に、4月から隣国のジュエル王女が留学してくるから、いろいろと面倒を見てあげてほしい、そう父上から言われた。
それではエリィと過ごす時間がなくなってしまうではないか!と思うも断ることはできない。
まぁ軽く面倒みるくらいならいいかと思っていたが、ジュエル王女は朝から晩までひっついてきて、少し鬱陶しいくらいだった。
お陰でエリィと過ごす時間がなくなってしまったのが一番辛い。
生徒会で少し顔を合わせる程度しかない。
もっと話したいのに、ジュエル王女が邪魔でなかなか話せない。
そんな憂鬱な前期を終えると、ジュエル王女は夏休みは自国に帰ることになった。
やっと開放される、という気持ちしかなかった。
その時、休みはどうするか聞かれたので適当に答えたが、エリィのことを少し食い気味に質問してくる。
あんまり変なこと言うとエリィに火が飛ぶかもしれないな、と思い公爵家から言われて仲良くしている、とだけ言っておいた。
こう言っておけば、エリィに変なことはしないだろう。
今まで話せなかった分夏休みはエリィと沢山遊んで、街にも行きたい。
騎士団の祝賀パーティーにも来るだろうし、今年こそドレスを贈りたいな。そこで告白しよう。
そう思って浮かれていた。
エリィと会えない日々が続いたので手紙を書くが、最近は返事がこない。
まだ体調が悪いのかな?
手紙の返事がこないまま、夏休みに入り、久しぶりに見たエリィは母君の法事式典で素晴しい演奏と歌声を披露した。いつもとは違うその曲は圧倒的だった。
その歌声は尊く澄み渡り、天国へ届くようだった。歌詞には母君への思いが込められていて、強い愛を感じた。演奏はとても壮大でそこにいた者全てに感動を与えた。
そしてその姿は、気高かく美しくそして儚くもあった。讃歌の女神、と誰かが言っていた。
エリィの歌声を聞き終わった後、暫く余韻に浸っていた。
素晴しい演奏と歌声だ。エリィにしかできないな。
エリィ愛してる。早く私の妻にしたいよ。
話そうと思っていたが、既にエリィはいなかった。まぁこれからはいつでも会えるから今日は仕方がないか。
翌日手紙を出す。
昨日のエリィの様子からすると、もう体調も良くなったように見えた。
それなのに、やはりいくら待っても返事が来ない。
こんなことは今までなかった。
なかなか連絡取れずにいることに焦燥を募らせていた。
クリスは知らないの一点張りだし、フィルと公爵は一緒に聞いても何も答えてくれない。
一度屋敷にも行ってみたが、やはりエリィはいなかった。
やることは沢山あるのに、何ひとつ手に付かない。
それから一週間に一度は手紙を書いたが返事は全く来ない。
もしかしたら私は何か嫌われるようなことをしてしまったのだろうか?
クリスに聞いても、知らないの一点張りだった。お前はそれしか言えないのか。というか絶対知っていて黙っているだろ!
そんな悶々とした日々をやり過ごし夏休みももう少しで終わりだという頃、エリィからやっと手紙が届いた。
内容はそっけなかったが、手紙がきたという事実がとても嬉しかった。
パーティーには出席すると書いてあり、久々に会えることがとても楽しみだった。
◆
パーティーでエリィを見つけた時、あまりにも雰囲気が変わっていることに驚いた。
式典で見た時は、儚げで脆くすぐにでも消えてしまいそうだった。しかし今は美しさに磨きがかかり、晴れ晴れとして気品と自信に満ち溢れていた。この2ヶ月で何があったのだろう。
ドレスで着飾った煌めく姿はうっとりする程美しく、本当に女神のようだと見惚れていた。
私の姿を見て「ヴィーク!」と呼ぶ笑顔を見て、一瞬息が止まった。
(エリィが欲しい。)
そう思った。
(どうやってもエリィが欲しい。私だけのものにしたい。)
そんな独占欲が生まれてきた。
どうしてあんなに待つことができたんだろう。
不思議で仕方がない。
「ねぇエリィ、話があるんだけど少し時間いいかな?」
逸る気持ちを抑え、できるだけ気取られないように話す。
「ごめんね、これからお父様の所へ行かないと。後でもいい?」
公爵の所へ行くなら仕方がないか。
「あぁ、じゃあ後で。」
「…エリィは後姿も美しいな。」
思わず口から出た言葉に、隣にいたカイルが反応する。
「エリィ、雰囲気変わりましたよね。殿下、いい加減告白したらどうです?告白しないなら私が告白しちゃいますよ?」
「うるさいな、タイミングがあるんだよ。」
皆と話していると演奏が止まり、ピアノの音が聞こえてきた。聞いたことがない曲だ。
そのうちに歌声が聞こえてくる。
とても澄んだ歌声。エリィだ。
見える位置に移動する。
ピアノを弾き楽しげに歌うその姿は本当に美しい。
しかし歌詞に出てくる『君』というのは、私ではないということは明白で、その事実は嫉妬心を掻き立てるのに十分だった。
(あぁ…やっぱり私にはエリィしかいない。)
じっと見つめていると、演奏が終わったエリィが脇をすり抜けて外へ出ようとしていたので、慌てて追いかける。思わず手を掴んでしまった。
細いな。少し力を入れたら折れてしまいそうだ。
「エリィ、相変わらず素晴しい歌だね。感動したよ。」
「ありがとう、ヴィーク。」
「なんか雰囲気が変わったね。すごく綺麗だよ。」
このまま私室に誘おうかと思っていたら、
お花を摘みに行きたいと言われてしまった。
「あ、ごめんね。引き止めちゃって。」
「いいのよ。またね。」
……また離してしまったな。
でも今日絶対に告白しよう。そう心に決めていた。
その後会場近くで待っていたがなかなか戻らないので、エリィを探しながら庭園をぶらぶらしていると誰かが抱き合っているのが見えた。
(あのドレスはエリィ?)
そう思い見ていると、レイノルド殿がエリィと抱き合っていた。
頭が真っ白になる。胸が苦しい。
なぜレイノルド殿が?
二人は知り合いなのか?というか、そういう関係なのか?一体いつから?
さっきの歌詞に出てきた『君』というのはレイノルド殿のことなのか?
エリィ達がこっちへ向かってきたが、そんな疑問で頭を抱えた私は立ち尽くしたまま動けずにいた。
「ヴィーク、こんなところでどうしたの?」
エリィの声ではっと我に返った。
「……いや、エリィの帰りが遅いなと思って探しに来たんだ。」
「そうだったの、ごめんね。ちょっと涼んでいたの。」
「そっか。」
「私はそろそろ帰るわね。お父様たちに挨拶しないと。」
「……うん。」
ベルリンツの鬼将軍として隣国にまで名を轟かすレイノルド殿を見ると、エリィを見る目がとても優しいことに気がつく。…止めろ。そんな目でエリィを見るな。
その後、馬車へ乗り込もうとするエリィに声をかける。落ち着いたところで話したいからと、私室へ連れ込んだ。
もうエリィが欲しくてたまらない。その欲求が爆発しそうだった。
少しずつ後ずさりするエリィを追いつめる私は、まるで小動物を追い詰める捕食者になった気分だ。
「なに?なにか怒っているの?」
ごめんね、怖がらせて。でもエリィが欲しいんだ。
そう思い、抱き締める。
小さくて柔らかい。温かい。いい香り。すべすべした肌。エリィを形造るなにもかもが好きだ。愛しくてたまらない。
「エリィ……エリィ。エリィ愛してる。愛してるんだ。」
やっと告白できた。
「……ヴィークはジュエル王女と結婚するのでしょう?」
少しの間を置き返ってきた言葉に絶句する。正直ジュエル王女は全く好みではない。
「……何それ?…誰がそんな事を言ったの?」
「ヴィーク、とりあえず離してくれる?」
「嫌だ。」
「痛いわ、離してヴィーク。」
「どうして私から離れようとするの?前は嫌がることなんてなかったのに。」
そう言いながら髪や顔を撫でる。
「愛してるんだ。お願いだ、エリィ。」
口づけしようとしたら、押し返されてしまった。
「なんで……」
拒否されたことがとてもショックだった。
しかしその後、エリィが言った言葉に頬を殴られたような気分になった。
「ヴィークがジュエル王女に、お父様に言われて仕方なく私と仲良くしてるって言っているのを聞いたわ。
あなたははっきりとそう言ってた。友達と思っていたのは私だけだったのでしょう?」
確かに仕方なく友達のふりをしていたよ。
だって、私は最初から友達だなんて思えなかったから。そう思い、言葉を慎重に選んだ。
「私は君のことは最初から友達だなんて思えなかったよ。今でも友達になってほしいと言ってしまった事をとても後悔している。」
「……そう。ごめんね……、私といるのは苦痛だったでしょう。」
「私は最初から君のことを愛していたんだ。最初から婚約者になってほしいと言えば良かった。私の妻になってエリィ。お願い。誰よりも愛してる。」
そう言うと感情を抑えきれなくなり、強引に口づけしてしまった。
柔らかい。いい香りだ。
もっと、もっと口づけしたい。もっと深く触れたい。
胸に顔を埋めてみると、衝撃的な柔らかさが顔に広がる。なんだこの感触……
胸元にも口づけを落とす。
止めてほしいと言っているのが聞こえるがもう止められそうにない。
ごめんね、エリィ。責任はとるから。
そう思ってドレスを脱がそうとすると、強く抵抗してきた。
「お願い、やめてヴィーク!今日は月のものがきていて、体調もあまり良くないの!!」
…月のものか。それは本当なのかな?
「私の提案を受け入れてくれるなら止めてあげるよ。」
「提案て?」
「私の妻になって。お願い。」
「即決はできないわ。考えるから。だからもう家に帰して。お願い。」
考えてくれるだけでも十分だ。エリィが私の方を向いてくれる方法を考えよう。
そう思い、馬車まで送る。
一体どうしたら振り向いてくれるんだろう。
馬車の方に行くとクリスがいるのを見た私は、咄嗟にエリィを抱き締める。クリスにさえ嫉妬してしまう私は心が狭いだろうか。
私の様子を見たクリスは焦ったように、
「ちょっと、何してるの!エリィにはまだ手を出さないって約束だっただろ!」
と言ってきた。
「さっき了解をもらった。」
「了解はしてないわ。考えるといっただけでしょ。それもかなり強引だったじゃない。」
そんなこと言わないでエリィ……。
「エリィ…もう待てないよ。お願い、私を選んで。」
「気持ちはわからなくもないけど、ちょっと落ち着こうよ。」
「落ち着いてなどいられない。
横から奪われようとしているのだぞ?」
いつの間にか私の腕をすり抜けたエリィは
「とりあえず今日は帰るわね。ではヴィーク、またね。」
と言い残し、馬車は行ってしまった。
学園生活最後の年に、4月から隣国のジュエル王女が留学してくるから、いろいろと面倒を見てあげてほしい、そう父上から言われた。
それではエリィと過ごす時間がなくなってしまうではないか!と思うも断ることはできない。
まぁ軽く面倒みるくらいならいいかと思っていたが、ジュエル王女は朝から晩までひっついてきて、少し鬱陶しいくらいだった。
お陰でエリィと過ごす時間がなくなってしまったのが一番辛い。
生徒会で少し顔を合わせる程度しかない。
もっと話したいのに、ジュエル王女が邪魔でなかなか話せない。
そんな憂鬱な前期を終えると、ジュエル王女は夏休みは自国に帰ることになった。
やっと開放される、という気持ちしかなかった。
その時、休みはどうするか聞かれたので適当に答えたが、エリィのことを少し食い気味に質問してくる。
あんまり変なこと言うとエリィに火が飛ぶかもしれないな、と思い公爵家から言われて仲良くしている、とだけ言っておいた。
こう言っておけば、エリィに変なことはしないだろう。
今まで話せなかった分夏休みはエリィと沢山遊んで、街にも行きたい。
騎士団の祝賀パーティーにも来るだろうし、今年こそドレスを贈りたいな。そこで告白しよう。
そう思って浮かれていた。
エリィと会えない日々が続いたので手紙を書くが、最近は返事がこない。
まだ体調が悪いのかな?
手紙の返事がこないまま、夏休みに入り、久しぶりに見たエリィは母君の法事式典で素晴しい演奏と歌声を披露した。いつもとは違うその曲は圧倒的だった。
その歌声は尊く澄み渡り、天国へ届くようだった。歌詞には母君への思いが込められていて、強い愛を感じた。演奏はとても壮大でそこにいた者全てに感動を与えた。
そしてその姿は、気高かく美しくそして儚くもあった。讃歌の女神、と誰かが言っていた。
エリィの歌声を聞き終わった後、暫く余韻に浸っていた。
素晴しい演奏と歌声だ。エリィにしかできないな。
エリィ愛してる。早く私の妻にしたいよ。
話そうと思っていたが、既にエリィはいなかった。まぁこれからはいつでも会えるから今日は仕方がないか。
翌日手紙を出す。
昨日のエリィの様子からすると、もう体調も良くなったように見えた。
それなのに、やはりいくら待っても返事が来ない。
こんなことは今までなかった。
なかなか連絡取れずにいることに焦燥を募らせていた。
クリスは知らないの一点張りだし、フィルと公爵は一緒に聞いても何も答えてくれない。
一度屋敷にも行ってみたが、やはりエリィはいなかった。
やることは沢山あるのに、何ひとつ手に付かない。
それから一週間に一度は手紙を書いたが返事は全く来ない。
もしかしたら私は何か嫌われるようなことをしてしまったのだろうか?
クリスに聞いても、知らないの一点張りだった。お前はそれしか言えないのか。というか絶対知っていて黙っているだろ!
そんな悶々とした日々をやり過ごし夏休みももう少しで終わりだという頃、エリィからやっと手紙が届いた。
内容はそっけなかったが、手紙がきたという事実がとても嬉しかった。
パーティーには出席すると書いてあり、久々に会えることがとても楽しみだった。
◆
パーティーでエリィを見つけた時、あまりにも雰囲気が変わっていることに驚いた。
式典で見た時は、儚げで脆くすぐにでも消えてしまいそうだった。しかし今は美しさに磨きがかかり、晴れ晴れとして気品と自信に満ち溢れていた。この2ヶ月で何があったのだろう。
ドレスで着飾った煌めく姿はうっとりする程美しく、本当に女神のようだと見惚れていた。
私の姿を見て「ヴィーク!」と呼ぶ笑顔を見て、一瞬息が止まった。
(エリィが欲しい。)
そう思った。
(どうやってもエリィが欲しい。私だけのものにしたい。)
そんな独占欲が生まれてきた。
どうしてあんなに待つことができたんだろう。
不思議で仕方がない。
「ねぇエリィ、話があるんだけど少し時間いいかな?」
逸る気持ちを抑え、できるだけ気取られないように話す。
「ごめんね、これからお父様の所へ行かないと。後でもいい?」
公爵の所へ行くなら仕方がないか。
「あぁ、じゃあ後で。」
「…エリィは後姿も美しいな。」
思わず口から出た言葉に、隣にいたカイルが反応する。
「エリィ、雰囲気変わりましたよね。殿下、いい加減告白したらどうです?告白しないなら私が告白しちゃいますよ?」
「うるさいな、タイミングがあるんだよ。」
皆と話していると演奏が止まり、ピアノの音が聞こえてきた。聞いたことがない曲だ。
そのうちに歌声が聞こえてくる。
とても澄んだ歌声。エリィだ。
見える位置に移動する。
ピアノを弾き楽しげに歌うその姿は本当に美しい。
しかし歌詞に出てくる『君』というのは、私ではないということは明白で、その事実は嫉妬心を掻き立てるのに十分だった。
(あぁ…やっぱり私にはエリィしかいない。)
じっと見つめていると、演奏が終わったエリィが脇をすり抜けて外へ出ようとしていたので、慌てて追いかける。思わず手を掴んでしまった。
細いな。少し力を入れたら折れてしまいそうだ。
「エリィ、相変わらず素晴しい歌だね。感動したよ。」
「ありがとう、ヴィーク。」
「なんか雰囲気が変わったね。すごく綺麗だよ。」
このまま私室に誘おうかと思っていたら、
お花を摘みに行きたいと言われてしまった。
「あ、ごめんね。引き止めちゃって。」
「いいのよ。またね。」
……また離してしまったな。
でも今日絶対に告白しよう。そう心に決めていた。
その後会場近くで待っていたがなかなか戻らないので、エリィを探しながら庭園をぶらぶらしていると誰かが抱き合っているのが見えた。
(あのドレスはエリィ?)
そう思い見ていると、レイノルド殿がエリィと抱き合っていた。
頭が真っ白になる。胸が苦しい。
なぜレイノルド殿が?
二人は知り合いなのか?というか、そういう関係なのか?一体いつから?
さっきの歌詞に出てきた『君』というのはレイノルド殿のことなのか?
エリィ達がこっちへ向かってきたが、そんな疑問で頭を抱えた私は立ち尽くしたまま動けずにいた。
「ヴィーク、こんなところでどうしたの?」
エリィの声ではっと我に返った。
「……いや、エリィの帰りが遅いなと思って探しに来たんだ。」
「そうだったの、ごめんね。ちょっと涼んでいたの。」
「そっか。」
「私はそろそろ帰るわね。お父様たちに挨拶しないと。」
「……うん。」
ベルリンツの鬼将軍として隣国にまで名を轟かすレイノルド殿を見ると、エリィを見る目がとても優しいことに気がつく。…止めろ。そんな目でエリィを見るな。
その後、馬車へ乗り込もうとするエリィに声をかける。落ち着いたところで話したいからと、私室へ連れ込んだ。
もうエリィが欲しくてたまらない。その欲求が爆発しそうだった。
少しずつ後ずさりするエリィを追いつめる私は、まるで小動物を追い詰める捕食者になった気分だ。
「なに?なにか怒っているの?」
ごめんね、怖がらせて。でもエリィが欲しいんだ。
そう思い、抱き締める。
小さくて柔らかい。温かい。いい香り。すべすべした肌。エリィを形造るなにもかもが好きだ。愛しくてたまらない。
「エリィ……エリィ。エリィ愛してる。愛してるんだ。」
やっと告白できた。
「……ヴィークはジュエル王女と結婚するのでしょう?」
少しの間を置き返ってきた言葉に絶句する。正直ジュエル王女は全く好みではない。
「……何それ?…誰がそんな事を言ったの?」
「ヴィーク、とりあえず離してくれる?」
「嫌だ。」
「痛いわ、離してヴィーク。」
「どうして私から離れようとするの?前は嫌がることなんてなかったのに。」
そう言いながら髪や顔を撫でる。
「愛してるんだ。お願いだ、エリィ。」
口づけしようとしたら、押し返されてしまった。
「なんで……」
拒否されたことがとてもショックだった。
しかしその後、エリィが言った言葉に頬を殴られたような気分になった。
「ヴィークがジュエル王女に、お父様に言われて仕方なく私と仲良くしてるって言っているのを聞いたわ。
あなたははっきりとそう言ってた。友達と思っていたのは私だけだったのでしょう?」
確かに仕方なく友達のふりをしていたよ。
だって、私は最初から友達だなんて思えなかったから。そう思い、言葉を慎重に選んだ。
「私は君のことは最初から友達だなんて思えなかったよ。今でも友達になってほしいと言ってしまった事をとても後悔している。」
「……そう。ごめんね……、私といるのは苦痛だったでしょう。」
「私は最初から君のことを愛していたんだ。最初から婚約者になってほしいと言えば良かった。私の妻になってエリィ。お願い。誰よりも愛してる。」
そう言うと感情を抑えきれなくなり、強引に口づけしてしまった。
柔らかい。いい香りだ。
もっと、もっと口づけしたい。もっと深く触れたい。
胸に顔を埋めてみると、衝撃的な柔らかさが顔に広がる。なんだこの感触……
胸元にも口づけを落とす。
止めてほしいと言っているのが聞こえるがもう止められそうにない。
ごめんね、エリィ。責任はとるから。
そう思ってドレスを脱がそうとすると、強く抵抗してきた。
「お願い、やめてヴィーク!今日は月のものがきていて、体調もあまり良くないの!!」
…月のものか。それは本当なのかな?
「私の提案を受け入れてくれるなら止めてあげるよ。」
「提案て?」
「私の妻になって。お願い。」
「即決はできないわ。考えるから。だからもう家に帰して。お願い。」
考えてくれるだけでも十分だ。エリィが私の方を向いてくれる方法を考えよう。
そう思い、馬車まで送る。
一体どうしたら振り向いてくれるんだろう。
馬車の方に行くとクリスがいるのを見た私は、咄嗟にエリィを抱き締める。クリスにさえ嫉妬してしまう私は心が狭いだろうか。
私の様子を見たクリスは焦ったように、
「ちょっと、何してるの!エリィにはまだ手を出さないって約束だっただろ!」
と言ってきた。
「さっき了解をもらった。」
「了解はしてないわ。考えるといっただけでしょ。それもかなり強引だったじゃない。」
そんなこと言わないでエリィ……。
「エリィ…もう待てないよ。お願い、私を選んで。」
「気持ちはわからなくもないけど、ちょっと落ち着こうよ。」
「落ち着いてなどいられない。
横から奪われようとしているのだぞ?」
いつの間にか私の腕をすり抜けたエリィは
「とりあえず今日は帰るわね。ではヴィーク、またね。」
と言い残し、馬車は行ってしまった。
450
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる