真夜中の柑橘系

艾凪 來

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夏祭り [後編]

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綿あめ・カステラ・たこ焼き・唐揚げ・カキ氷・金魚掬い。
目移りするような魅力的な出店を一つ一つ覗いて行き、数10分歩いて、お祭りを見渡した。
「そこのカップルさん!一つ運試ししてみないかい!?。2人で1~20の札があるから、2人で1枚ずつ引くのさ!二人とも同じ数を引けたら豪華賞品をプレゼントだよ!1回200円!」
元気なオジさんがボク達に向けて、箱を揺らしながら呼びかけてくる。正直恥ずかしい
「へぇ。面白いくじ引きだね。どうする?やってみる?」
「え、うーん。まぁ特にしたい事ないから、やってみる」
確かに今まで無かったタイプだ。少し興味がある
「あいよ!お2人で400円…って言いたいとこだけどー…お2人とってもお似合いだから200円でいいよ!」
「え、いいんですか?やったね柚紀半額だよ」
「オジさんありがとうございます」
まさかの事で少し驚きつつも内心かなり喜んだ。200円で遊べるようなものなのだ。確かに幸運だ。…くじの前に幸運使ってどうするのよ。
「さぁお2人さん!引いて引いて!」
二つの箱を手渡されて、深弥と同時に手を入れる。当たるとは思ってないので、最初に手に当たった札を箱から出す。ちょうど深弥も引き終えたらしい。
「お、終わったかい?そんじゃぁちとおじさんに見せてね」
おじさんは器用に紙を捲る。どうせ200円なのだから、当たってなくてもいいだろう。
「お!?お2人さんいいね!二人とも7だ!ラッキーセブンってやつかな!わっはははは!!」
おじさんは二つの紙をボク達の前に差し出してくる。2枚の紙には「7」の数字
「お!やったね柚紀!当たったよ!」
「え?嘘」
ほんとに当たっている。今年中の運気をすべて使ったのではないか
「ラッキーセブンたぁ縁起がいいねぇ!よっしゃ!そんなお2人には特賞だ」
そういって後ろのダンボールから出してきたのは………。特大サイズの「ダディベア」だった。それも、ピンクとブルーだ。正直持って帰るには邪魔だが、某夢の国に行って買えば3000円はするものだ。200円で貰えるのは嬉しい
「おじさん。いいんですか?これ確か1体3000円はしますよ。それを200円で……」
深弥の心配はごもっともだ。赤字じゃ済まない
「若ぇもんは細かい事気にせんでええんやぞ、それに俺が200円にしたんや、使わんもんが誰かの手に渡って大切にされるんやったら、それ以上の利益はないんさ!わっはははは!!」
凄い理屈だ。
「おじさん…ありがとうございます。大切にします」
「ありがとうございます。頑張ってくださいね」
おじさんは照れくさそうにへっへと笑っている。
「おう!お2人いつまでも仲良くしろよな!」
~~~深弥~~~
おじさんと別れてから、ダディベアが思ったより邪魔なのと、汚されるのが嫌で祭り会場を後にして、2人で1体ずつ背負って帰る事にした
「…中々重いね…この熊」
「熊じゃなくてダディベア。こっちはマザーベア」
柚紀は楽しんでくれたようだ。浴衣を返却した後、買おっかなとか悩んでたから、浴衣も気に入ったみたいだ。誕生日プレゼントによさそうだ。
「熊にちゃんと名前あったんだ…これ」
「あんた、ディザリーランド知らないの?」
ディザリーランドは、大人から子供にまで人気の遊園地だ。行ったことは無いが、マスコットのキャラクターは知っている
「知ってるよ、ネズミとかの」
「ミッチーね。」
そんな名前だったのか。可愛い名前だ。チーズみたい
「…柚紀ディザリーランド好きなの?」
「嫌いな女の子いないと思うけど?」
確かにクラスの女子が数人行きたいとか話してた事を思い出す。
「……東京は危ないから、なるべく大人数で行動してね?それからあんまり変な店とかに入らないようにね?」
こんな可愛い子が歩いていたら、誰が狙うか分からない。
「ほんとにお節介だね」
「柚紀が心配なのよ。」
こう言えば殴られる。分かっているけど、痛くはないから隠す事も無かった。
けど、今日の柚紀はどこか違った。
「…………がと」
「ん?」
小さな声でぼそっと何か呟いたように聞こえが、何言ってるか分からない。
「ありがとって言ってんの!!!1回で聞き取れ!馬鹿!」
「ぐべら!?」
今日はパンチでは無く蹴りが飛んできた。見事に腹の中心を捉えたいい蹴りだった!
「ばーか!!!!!」
柚紀が全速力で走っていく。


今日はいい1日だったなぁ…

「相変わらずあんな小娘が好きなんてやっぱりあんた。月夜に似たのかねぇ」

あぁ最悪だ。見られた。ほんとに。最悪だ。
「文句あんのかよ……母さん。」

ほんとに大ッ嫌いだ。こんなの。


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