真夜中の柑橘系

艾凪 來

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柚紀の感謝

その後の話

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その後ボクは深弥の家に弟と焼いたクッキーを持って行った。インターホン押そうとした時に、深弥が飛び出て来たのは驚いたけど。
その時家には深弥のお母さんがいて、色々話して楽しかったけど、深弥がずっと楽しめてなかった気がする。ボクが来たのがまずかったのかな…?
その後晩御飯までご馳走になって、ボクは深弥に家まで送って貰うことになった。いつもは鬱陶しい筈の過保護まで、なんだか嬉しく思えた。
「なんか…ごめんね?送ってもらっちゃてさ。」
「いいよ。夜に一人で歩かせたら何があるか分からないから。」
やっぱり…深弥いつもより楽しくなさそうだ。
「あのさ深弥怒ってる?家に来たこと」
「え?別に怒ってないよ?」
「嘘だ。ボクとお母さんが話してる時凄く楽しくなさそうだったし、今だって少しイライラしてるでしょ。」
「だから違うって、お母さんと話してる時は違うんだって」
「時はって事は家に来たことは怒ってるんでしょ?正直に言ってよ。」
「だから違うんだって!」
「なんでよ!やっぱり怒ってるじゃん!正直に言ってくれたらいいのに、なんで嘘つくの!?」
「嘘はついてないし、ホントに怒ってないから!」
「絶対嘘だ!」
あったま来た。その場で深弥を突き飛ばし、家に向かってダッシュした。…でも
すぐに追いつかれた。腕をしっかり掴まれ、払えない。
「離してよ!」
「もう分かった!話すから、話すから落ち着いて!」
話す?怒ってた意味をって事?

…ボク達は近くの公園に行き、話した。
驚いた。深弥のお母さんが昔襲われた事。その時に深弥が産まれた事。本当はもっと向こうの地域の出身の事…いじめられてた事。高校から…の事。

「って…事で母さんが俺の事を柚紀に話さないか不安だったんだよ。こんな事知られたら嫌われると思ってさ…。柚紀?」

涙が止まらなかった。自分の身勝手さと深弥にそんな過去があった事を。

「ごめん…深弥…ボク知らなかった…」
「え、気にしなくていいよ。話してなかったんだし。でも…柚紀大丈夫?」
「大丈夫って…何が?」
「俺が、素の俺じゃなかった事…嫌いにはならない?」
「素じゃないって、作ったとしても自然ならそれが素じゃないの?全然気にしないけど…」
「よかった…のかな?まぁいいか。」
言ってる意味がわからなかった…どこか違う部分があるのは共感が出来るのかな…?
いつかボクも話さないと行けないのに、深弥は嘘をついてない。けど、ボクは嘘をついている…。それを深弥にどころか凛恵にすら話していない…。

話したくない…。バレたくない…。隠さなきゃ…。これだけは絶対…。バレるくらいなら……。

「柚紀?どうしたの?凄い汗だよ?」
「え?いや…少し暑いかな…。そろそろ帰るね。話してくれてありがと。」

バレちゃダメ……こんなのばれたら…ホントに……。

また…同じ事…しちゃうかも知れない…。

「……ただいま。」
家は真っ暗だ。流石に寝てるらしい。
「……ごめんね。ボクやっぱり無理だよ…」

そう言って部屋に戻り、机の棚の奥を探す…あった。取り出したのは小さなメス。
「バレなきゃ…大丈夫。」

そう言って押し付ける刃が、痛くない。視界の中でキラキラ光ってる…綺麗…りんごみたい…。

バタン。

おかしい。いつもならそれを見てると楽になれるのに…今は体が重いな…それになんだか眠い……もう寝ちゃおうかな…。
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