真夜中の柑橘系

艾凪 來

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それぞれの

突然の電話

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柚紀に全て話せた…。これで嫌われたら…と悶々と浸すら考えてた。帰ってから一応連絡してみるか…。

「にしても最後の柚紀の反応…聞いて驚いたとかじゃないよな…」
最後の反応は何か思い詰めていた様子だった、あんな姿は初めてみた。
たまに真剣な顔で悩む時はあるけど、あの顔は青ざめていた。
「ただいま。」
家は暗い。母さんも寝たようだ、それもそうか、今は夜の12時を超えていた。
夜危ないからと送るつもりが、そのまま帰らせてしまった。こんな夜遅くに。
帰れてるか確認する為に電話と思ったが、流石この時間に電話は失礼だ。そう思うと急に眠気が襲って来たのでその日は素直に寝る事にした。
正直かけておけばよかったと思っている。
俺の目覚しになったのは、1本の電話だった。ケータイにでは無く、家にかかって来た為反応が遅れたが、番号ですぐに柚紀だと判断する事ができた。
「もしもし?柚紀?」
「あ!もしかして深弥さんですか?僕です!柚治です!」
電話主は柚治君だった。柚紀の弟で、料理や掃除。家事全般を熟す。とてもいい子だった。
「実はねーちゃんが…」
何を言ってるかわからなかった。ジサツ?ビョウイン?イシキフメイ?全てが真新しい単語に聞こえてくる。
「もしもし深弥さん聞いてますか!?とにかく病院を教えるので、様子だけでも見に来てください!」
しばらく切れた電話を耳から離す事が出来なかった。
新手のドッキリか…?それにしては柚治君の声は震えていた。とにかく今は病院へ急ごう。距離はそれ程離れてはいない
「おはよ…ってあらどうしたのそんなに汗かいて。」
「母さん俺ちょっと病院行ってくるから、今日はまだ家にいるんだよね?家事は任せたよ」
「深弥どうしたの?病気?」
「柚紀だよ。ちょっと行ってこないと、隣町の病院だから。」
「あら、あんな遠い所まで…しかもそんなに大きな病院。待ってなさい、すぐに車を呼ぶから」
そう言って電話を掛け始めた。そんな余裕はない…。早く行かないと。
身支度を済ませて家を出ようとすると、家の前に黒塗りの車が止まっていた。
「あら、もう来たの。深弥。タクシー代わりに使いなさい。行き先は教えてあるわ」
本当なんの仕事してるの…。気にはなるが今はありがたい
「ありがとう!母さん!」
乗り込むとスーツ姿でサングラスの男の人が運転席に座っていた
「駅前の病院ですよね?飛ばしますので、シートベルトだけはつけてください。」
こんな屈強な人…どこから…。しかも車も
そう思うといきなり車は走り出した。
「望月さん。今日の面談は…。」
「え?あぁ…パスにして頂戴。あの子に家事任せれちゃったから、たまには母親らしいとこ見せたいじゃない。」

◆ーーーーー◆
「到着しました。帰りもここで待機しているので、時間は心配しないでください。お気を付けて」
「は、はい。ありがとうございました」
中々の運転だったが、早くついたのは嬉しい。中に入ると柚治君が待っていた。
「えらく早かったですね、とにかくこっちです。」
病室に行くまでに説明を受けた。柚紀は部屋で手首を切ったらしい。発見したのは柚治君で、いつもは8時半には起きてくる柚紀が全く起きない為、疑問に思い部屋に向かった。ノックしても返事が帰って来ないため、珍しい寝坊かと思い、起こしに、部屋の中に入ったところで、床に倒れ、手首からおびただしい量の出血をしている柚紀を見つけたらしい。手元には濡れたメスがあったようだ。
「実はやり始めた少し後から知っていたんです。部屋は横なので、ある程度の匂いはしますし、なんというか、夏なのに長袖など着始めた時点で…その時に止めておくべきでした。」
「柚治君が発見してくれてよかったよ。ありがとう。」
少し照れている柚治君に連れられて、病室の前まで来た。
「失礼します。」
中には、機械に繋がれて、固く目を閉じていて、白くなっている柚紀の姿だった。
「中々の量なので、血圧とかの問題あるそうで、危ない…らしいです。」
曇った声の柚治君が俯きながら話す…

昨日のあの反応がこれの前兆だとするならば…もしかしたら俺が話した事による…。よろめきつつも柚紀に近づき、そっと触れた肌は、いつものように暖かくはなく。その部屋の冷房のせいなのか…冷たくなっていた。


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