真夜中の柑橘系

艾凪 來

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それぞれの

食糧難からの

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深弥のバカがご飯を用意してなかったので、昨日から私が持ってきてたグミやポテチで過ごしている。深弥のお母さんの迎えが来るのは2日後。なんで楽しいお泊まり会の筈が遭難ごっこみたいな事になっているのだろう。唯一の救いは、目の前の海に点々と存在する海の家だ。
しかしお互い軽い駄賃程度しか持ってなかった為にお腹いっぱいになるには少し足りないであろうポテトフライを2人前が限界だった。

「ほんとは唐揚げ食べたい…んぐ」
「唐揚げだと小2つ位しか買えないからね~ポテトフライでも食べれるだけありがたいよね」

せっかく海の家で買ったのに、少しホコリ臭い別荘で食べると、値段の割にあまり美味しくないように感じる。これは多分海で食べるから美味しいのだろうなぁ…塩足りない。多分泳ぎ終わった人は口の中が海水の塩分で一杯だから少な目にしてると思うんだけど、、ありがた迷惑です。ハイ。

「俺の分も食べていいからさ、食べ終わったらゲームでもしようか」
「なんで食糧持ってきてないのにゲームは持ってきてるわけ…はぁ」
「あ、ごめん電話。食べちゃってて」

深弥の分のポテトも食べてる間に誘ったのに来なかった凛恵の事を考えていた。退院した辺りからちょっと様子がおかしかった。誘った時も「いやいやいいよーせっかくだから2人で過ごしてよ!2人の熱々と灼熱の太陽で私が干からびてしまうよー!」茶化しているけどちょっとおかしい。凛恵の性格上そんな冗談を言うなら来て言うと思うのだけど、まぁほんとに気を使ってくれたのかもしれない。綺麗な貝殻でも拾ってあげようかな。
なんて思っていると少し嬉しそうな深弥が戻ってきた。こいつのせいで今の現状があるのだと思うと、少しムカついた

「何笑ってんのよーきもちわる…」
「さり気に酷いねー。でもニュースだよ?さっきの電話はね?ここの持ち主のおじさんからだったんだよ」
「おじさん?なんて用なの?」
「せっかくだからバーベキューでもどうだい?ってもうすぐこっちにも来るって、それにお母さんから連絡受けて多少のご飯も用意してくれたみたい」
「お・に・く!?」

まさに地獄に仏とはこの事だ。この空腹時にお肉とは仏を超えて神だ。肉神だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その後すぐにおじさんは到着して、コンビニで買ってきた肉まんやおにぎりを差し入れしてくれた。あまりの空腹にバーベキューを待たずにその場で頬張る。
柚紀が肉まんとおにぎりを頬張る間におじさんは手早くバーベキューの用意をしてくれて、あっという間に地獄は天国に変わった。

「ありがとうございます、おじさん。ほんとに助かりましたよ」
「なぁに気にする事は無いよ。お母さんに頼まれちゃ断り用が無いよ」
「まだ責任を感じているんですか?もう母も僕も何も思ってませんから、こんな風に別荘を貸したりする必要は…」
「深弥君は誤解しているよ、最初は君たち親子に対する罪滅ぼしのつもりだったがね、今は君が立派に成長してくれて嬉しいのだよ。息子がいない今、君は孫じゃなくて息子だと感じる事もあるくらいさ」
「深弥ー?この切れないー」
「はーいすぐ行くよ柚紀。ほんとにありがとうございます。おじさんもゆっくりして行ってくださいね」

柚紀は大きめのステーキ肉と格闘していた。
「おじさんてもしかして…」
「あぁそうだよ。一応俺の父親に当たる人の父親さ。小さい頃からお世話になっていてね。」
「そうなんだ…優しいね」

その優しいが俺に対する言葉なのか、おじさんに対する言葉なのかわからなかったが、柚紀はどこか満足げだった。

バーベキューが終わり、おじさんは少し休んでから帰ることになった。

「深弥君。余計なお世話かと思うがこれを…」
何か鞄から袋を出して、差し出してきた
「なんです?これ…は!?」
中には…大量の避妊具やエナジードリンクだった。
「余計なお世話かと思ったんだがね?やはり若い男女が一つ屋根の下にいるわけだしね?」
「なるほど…まぁこれは戒めかも知れませんね。というか多いですよこれは」
「そうなるね。…まぁ彼女も君の事が好きなら少なからず期待しているのかもしれない。健闘を祈るよ」
「はぁ…お気持ちには感謝しますよ。ではお気を付けて」
「では、帰るよ。また会おう」
「おじさーんありがとうございましたー!」

奥から走ってくる柚紀にバレないうちに袋を隠しておじさんを見送る…

期待…か。そんなのするわけ…ん?昨日からの理不尽な行動…まさかな。

その晩は久しぶりの満腹で、ゆっくり眠れると思って、寝室に入る。瞬間。脳に送られる筈の血液は行動を止めたと思うくらいの寒気に襲われた
おじさんから貰った袋の中を見て、顔を真っ赤に染める柚紀の姿だった。

「へ!?…あ、深弥…その…なんかコソコソ隠してたからお菓子…かなって…」
「あ、あーそれはあれだよ!おじさんが置いて行ったやつかなー?全くおじさんは困るなーははは…」

殺される。そう覚悟した。しかしいつまで経っても柚紀は襲ってくる気配はない。それどころか何かモジモジしてる

「あ、あのさ…深弥。ボク達もう高校生じゃん…?ボ、ボクは深弥なら…いいよ?」
「柚紀!?へ?ちょっとまっ!」
言い終わる前に柚紀に引っ張られベットに倒される。何も考えられない…
気がつくと俺は柚紀と口を合わせていた

「ぷはぁ…柚紀…いいの?」
「…うん。いいよ」

その晩、俺達の絆は繋がった。
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