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優しい人
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レオナルドとリーシャはかなりの体格差がある。どのくらいかと言われれば、レオナルドの顔を見ようとすると、リーシャの首が痛くなるのではと思うほど見上げる必要がある。
リーシャは未だ十八歳であるが、もう成長の兆しはない。よってレオナルドに追いつくことはこの先永劫ないのだと思うと悔しいような、笑ってしまいそうになるやら。なんとも不思議な気持ちにさせられる。
そんなレオナルドの横を歩いていると凄く目立つ。レオナルドの顔立ちも相まって、村の女性はレオナルドが歩くだけで沸き立っている。いつ見ても凄いと思う。恐らく王都を歩いても、レオナルドは目立つだろうなと想像した。
「少しは加減しろ。あんな訓練にも似た弱い魔物を倒した位で真面目に治さなくていい」
これは毎度のやり取りだ。ここ二週間、レオナルドはリーシャに同じことを何度も言っている。
「ですが、怪我は怪我ですし」
「普段のジーさんなら『こんくらいで来るな馬鹿ども!』って言って追い返してるぞ」
「ふふふ、ご冗談を」
レオナルドは嘘が面白い。いくら歳のいったボドワールと言えど、騎士にそんな風に言えるとは到底思えないし、怪我をしている人を放っておくのは侍祭として良くない。
ボドワールが交代してくれるというからリーシャはこうやってレオナルドと出てこれただけで、本来ならまだ治癒を続けたかった。
「冗談なわけあるか。俺も何度も追い出されんだぞ。あのクソジジイ」
「まさか。とても腕の立つお方がそんなことしないですよ。レオナルド様は本当に面白いです」
くすくすと笑うと、はぁ、と調子の狂った顔をレオナルドが見せた。リーシャが首を傾げると、なんでもない、と言って食堂へ歩くのを続けた。
レオナルドはとても優しい。
一ヶ月前に来た当初からだ。最初に挨拶をするまではかなりぶっきらぼうだったが、リーシャと言葉を交わした後は人見知りだったのか直ぐに笑顔でやり取りするようになった。
村の人とも馴染めるように、食堂や休みの日までリーシャを村に案内してくれたりする。神殿からあまり外に出たことの無いリーシャは不安と緊張でいっぱいいっぱいな硬い笑顔だったにも関わらず、レオナルドは根気強く接してれていた。
その優しさに今でも少し甘えてしまう。
リーシャは生まれてこの方、ここまでレイディット以外に親切に接してもらったことはなかった。神殿生まれの神殿育ち。物心ついた時から何から何まで自分で出来るようにならなくてはなかった。
こんな風に、誰かに優しく接してもらえることに慣れてなくて、擽ったく感じてしまう。
食堂は騎士たちで埋め尽くされているが、リーシャとレオナルドは二人がけのテーブルについた。ザワついた店内の中、レオナルドが声をかけてウェイトレスを呼び、いくつか食事や飲み物を注文した。
「それより、どうやら今日リーシャの歓迎会があるらしい」
「僕の、ですか? でも来た日に、皆さん挨拶して下さいましたし」
「あ? そりゃただの挨拶だろ。歓迎会だっての、パーティーだよ」
ぱちくりと瞬きをして驚く。
リーシャが来たくらいで歓迎会をすることが信じられなかった。リーシャは前述の通り、神殿生まれ神殿育ち。スラーナディア神の降臨祭やら豊穣祭などのお祝い事以外でパーティーなど考えられなかった。
「変な顔してんな。リーシャが来てこのヴァレンテインは相当助かってんだ。みんな張り切って準備してんだぞ」
「え、でも、あの」
「誕生日パーティーだと思えばいいだろ」
リーシャはそのレオナルドの言葉が上手く飲み込めなかった。
「誕生日、パーティー……? でも、僕のパーティーを開くよりは皆さんの食事代に当てた方が」
「はあ? 何言ってんだ。……あー、分かった。分かったよ。リーシャ、こいつらは何もリーシャの為だけにパーティーしたいって訳じゃねぇ。歓迎会という名を借りて酒をかっくらいたいだけなんだよ」
騎士たちを後ろ指でさすと、周囲の聞いていた騎士たちはギク、と肩を震わせた。
その反応は流石のリーシャでもレオナルドのとこばが正しいと納得し、苦笑した。
「それなら…歓迎会しないとですね」
「ああ。やらなきゃ暴動が起きるぞ」
「そんなにですか……! お酒の恨みは怖いですね…」
むむむ、とリーシャが考え込むと、レオナルドはフッと優しく微笑む。
しばらくして食事が届き、二人で舌鼓を打った。村の食事は神殿よりも濃い味付けだが疲れた体に染み渡って、とても美味しいと思う。
リーシャは未だ十八歳であるが、もう成長の兆しはない。よってレオナルドに追いつくことはこの先永劫ないのだと思うと悔しいような、笑ってしまいそうになるやら。なんとも不思議な気持ちにさせられる。
そんなレオナルドの横を歩いていると凄く目立つ。レオナルドの顔立ちも相まって、村の女性はレオナルドが歩くだけで沸き立っている。いつ見ても凄いと思う。恐らく王都を歩いても、レオナルドは目立つだろうなと想像した。
「少しは加減しろ。あんな訓練にも似た弱い魔物を倒した位で真面目に治さなくていい」
これは毎度のやり取りだ。ここ二週間、レオナルドはリーシャに同じことを何度も言っている。
「ですが、怪我は怪我ですし」
「普段のジーさんなら『こんくらいで来るな馬鹿ども!』って言って追い返してるぞ」
「ふふふ、ご冗談を」
レオナルドは嘘が面白い。いくら歳のいったボドワールと言えど、騎士にそんな風に言えるとは到底思えないし、怪我をしている人を放っておくのは侍祭として良くない。
ボドワールが交代してくれるというからリーシャはこうやってレオナルドと出てこれただけで、本来ならまだ治癒を続けたかった。
「冗談なわけあるか。俺も何度も追い出されんだぞ。あのクソジジイ」
「まさか。とても腕の立つお方がそんなことしないですよ。レオナルド様は本当に面白いです」
くすくすと笑うと、はぁ、と調子の狂った顔をレオナルドが見せた。リーシャが首を傾げると、なんでもない、と言って食堂へ歩くのを続けた。
レオナルドはとても優しい。
一ヶ月前に来た当初からだ。最初に挨拶をするまではかなりぶっきらぼうだったが、リーシャと言葉を交わした後は人見知りだったのか直ぐに笑顔でやり取りするようになった。
村の人とも馴染めるように、食堂や休みの日までリーシャを村に案内してくれたりする。神殿からあまり外に出たことの無いリーシャは不安と緊張でいっぱいいっぱいな硬い笑顔だったにも関わらず、レオナルドは根気強く接してれていた。
その優しさに今でも少し甘えてしまう。
リーシャは生まれてこの方、ここまでレイディット以外に親切に接してもらったことはなかった。神殿生まれの神殿育ち。物心ついた時から何から何まで自分で出来るようにならなくてはなかった。
こんな風に、誰かに優しく接してもらえることに慣れてなくて、擽ったく感じてしまう。
食堂は騎士たちで埋め尽くされているが、リーシャとレオナルドは二人がけのテーブルについた。ザワついた店内の中、レオナルドが声をかけてウェイトレスを呼び、いくつか食事や飲み物を注文した。
「それより、どうやら今日リーシャの歓迎会があるらしい」
「僕の、ですか? でも来た日に、皆さん挨拶して下さいましたし」
「あ? そりゃただの挨拶だろ。歓迎会だっての、パーティーだよ」
ぱちくりと瞬きをして驚く。
リーシャが来たくらいで歓迎会をすることが信じられなかった。リーシャは前述の通り、神殿生まれ神殿育ち。スラーナディア神の降臨祭やら豊穣祭などのお祝い事以外でパーティーなど考えられなかった。
「変な顔してんな。リーシャが来てこのヴァレンテインは相当助かってんだ。みんな張り切って準備してんだぞ」
「え、でも、あの」
「誕生日パーティーだと思えばいいだろ」
リーシャはそのレオナルドの言葉が上手く飲み込めなかった。
「誕生日、パーティー……? でも、僕のパーティーを開くよりは皆さんの食事代に当てた方が」
「はあ? 何言ってんだ。……あー、分かった。分かったよ。リーシャ、こいつらは何もリーシャの為だけにパーティーしたいって訳じゃねぇ。歓迎会という名を借りて酒をかっくらいたいだけなんだよ」
騎士たちを後ろ指でさすと、周囲の聞いていた騎士たちはギク、と肩を震わせた。
その反応は流石のリーシャでもレオナルドのとこばが正しいと納得し、苦笑した。
「それなら…歓迎会しないとですね」
「ああ。やらなきゃ暴動が起きるぞ」
「そんなにですか……! お酒の恨みは怖いですね…」
むむむ、とリーシャが考え込むと、レオナルドはフッと優しく微笑む。
しばらくして食事が届き、二人で舌鼓を打った。村の食事は神殿よりも濃い味付けだが疲れた体に染み渡って、とても美味しいと思う。
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