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足りないもの
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それは、リーシャとレオナルドがきちんと気持ちを伝え合い半年が過ぎた時のこと。
「ルーシアへ行かれるのですか?」
事が終わり、二人で身体を清めた後にベッドでゴロゴロとしていた。リーシャはうつ伏せで枕を抱え、隣でかったるそうな顔をして天井を見上げている恋人、レオナルドを見つめていた。
お互い裸のままだからよく分かる。相変わらず貧相な身体付きの自分とは違い、このヴァレンテイン辺境の騎士団長を勤めるレオナルドは素晴らしい体躯の上、整った凛々しい輪郭を持ち合わせているなと見蕩れてしまう。自分が女性ならば、カッコいいで終わるだろうが同じ男として少しばかり羨ましい気持ちも無くはない。けれど鍛えていないリーシャが、隣で溜息をつく姿すら格好つく男のようになれそうに思えなかった。
「この間のデカい討伐あったろ。あれが王の耳に入ったみたいでな。国としても貢献した俺らに多少餌をやらねぇと周りに示しがつかねぇんだろ」
「ああ……なるほど」
「あ゛ー死ぬ程めんどくせぇー」
天井を仰いでいたレオナルドが珍しく愚痴愚痴としながらゴロンと横向きになる。この魔獣溢れる辺境ヴァレンテインで、下手したら領主より地位のある恋人の可愛らしい様子にクスクスと笑っていると、グイッと思い切り引き寄せられた。
「では褒賞を頂けるのですね」
「イラネ。だったら人増やして欲しいもんだ」
「……そうですね。騎士団の皆様はいつも人手不足ですし」
リーシャの身体に巻き付くように抱き着いてこられると、温かい気持ちになった。つい先程までお互いに昂る身体を昇華させていた時とは違い、穏やかな温かさだった。
「部下は増やして欲しいがそれより」
「?」
ジッとこちらを見つめる瞳は、獲物を狩るような獰猛なものではなく、穏やかなものだ。リーシャの身体を貪っている時はあんなにも熱を帯びているのに。
「侍祭を増やして欲しい」
「え、あ、う。うう…僕の他にですか? でも、ボドワール様もまだ現役ですし」
さっきから情事の時のレオナルドと比べようとしてしまう頭をぺぺぺと手を振って振り払い、ほんのりと赤くなった顔のままレオナルドを見上げた。
そこに居たのは穏やかな優しいだけの恋人ではなかった。
力強い肉食獣のような瞳に変化した瞳に見つめられてしまえば、離さないとばかりに抱きしめられた身体がまた熱を上げる。
「リーシャの仕事が減れば、今よりセックスできるだろ」
「せっ……!」
リーシャの身体は怖いほど素直で、それだけでさっきまで苛まれた下腹部がキュンと疼き、掴まれた腰はズクリとした。
頭よりも身体の方が先に反応するなんて、どれだけ自分はイヤらしいのだろうと顔が火照るのを感じながら俯き、レオナルドの胸に額を押し付けた。
自分がこうなったのはどう考えてもこの男のせいだ。男と女の行為の存在は知っていても、その気持ちよさと依存性を知らなかったリーシャの身体に刻みつけたのは、他の誰でもない、恋人のレオナルドだ。ほんの少しの恨めしい気持ちと共に、最中を思い出し想像してしまう自分の下賎な心についこの国の神、スラーナディア神に懺悔したいように思った。
「リーシャ」
それでも、やっぱり恋人の声が頭頂部から聞こえてくると恨めしいと思う心は一瞬で霧散してしまう。この優しい声が好きだ。自分の貧相な身体を大切そうに、愛おしそうに抱き締める逞しい腕が好きだ。恋人の精悍な顔も、金の髪も、気持ちよくさせてくれる指も、貪られるようなキスをする唇も。自分を無我夢中にさせてくれる彼のモノも。
そして何より。リーシャを心の底から愛おしいと伝えてくれる心が好きだ。
「……っ」
「腰、押し付けてんの。エッロ」
「ふ…っ、…」
「リーシャ」
萎えていても分かる大きさのレオナルドに、比べるのも烏滸がましい自分のぴょこんと反応しかけたリーシャを押し付けるようにクイクイと腰を動かしていたことを教えられ、羞恥心に顔が熱くなる。さっき散々したのに、身体は浅ましいほど彼を求めてしまう。
聖職者らしからぬこの姿を誰かに見られたら、きっと幻滅される。親代わりに育て慈しんでくれたレイディットだって呆れてしまうだろう。
「ちゃんと言えって。どうして欲しい」
レオナルドは最近兎に角言わせたがる。この男は獣のようにリーシャを食い尽くす割にリーシャの言葉がなければ始めてくれない時が多くなった。
恥ずかしくて、穴があったら二度と地中から出てきたくないほどに埋まりたい。
それなのに。
「、っ…、レオナルド、さま。僕…まだ」
「ん?」
「まだ…レオナルド様が、足りない、です」
「で?」
モジモジとしながらも期待に目を潤ませてレオナルドを見上げる。意地悪な恋人は分かってるくせに続きを促してくる。
「だから、その、……もう一回えっちしたいです……」
恥ずかしすぎて小さくなる声は、それでもきっとレオナルドの耳に届いたと思う。その証拠に彼の喉が嬉しそうに小さく笑っていた。
無意識に俯いた顔をクイッと上げさせられて目と目が合った。
「仰せのままに」
そして深いキスをされお互いに熱さを取り戻した身体を重ね合い、夜は更けていった。
「ルーシアへ行かれるのですか?」
事が終わり、二人で身体を清めた後にベッドでゴロゴロとしていた。リーシャはうつ伏せで枕を抱え、隣でかったるそうな顔をして天井を見上げている恋人、レオナルドを見つめていた。
お互い裸のままだからよく分かる。相変わらず貧相な身体付きの自分とは違い、このヴァレンテイン辺境の騎士団長を勤めるレオナルドは素晴らしい体躯の上、整った凛々しい輪郭を持ち合わせているなと見蕩れてしまう。自分が女性ならば、カッコいいで終わるだろうが同じ男として少しばかり羨ましい気持ちも無くはない。けれど鍛えていないリーシャが、隣で溜息をつく姿すら格好つく男のようになれそうに思えなかった。
「この間のデカい討伐あったろ。あれが王の耳に入ったみたいでな。国としても貢献した俺らに多少餌をやらねぇと周りに示しがつかねぇんだろ」
「ああ……なるほど」
「あ゛ー死ぬ程めんどくせぇー」
天井を仰いでいたレオナルドが珍しく愚痴愚痴としながらゴロンと横向きになる。この魔獣溢れる辺境ヴァレンテインで、下手したら領主より地位のある恋人の可愛らしい様子にクスクスと笑っていると、グイッと思い切り引き寄せられた。
「では褒賞を頂けるのですね」
「イラネ。だったら人増やして欲しいもんだ」
「……そうですね。騎士団の皆様はいつも人手不足ですし」
リーシャの身体に巻き付くように抱き着いてこられると、温かい気持ちになった。つい先程までお互いに昂る身体を昇華させていた時とは違い、穏やかな温かさだった。
「部下は増やして欲しいがそれより」
「?」
ジッとこちらを見つめる瞳は、獲物を狩るような獰猛なものではなく、穏やかなものだ。リーシャの身体を貪っている時はあんなにも熱を帯びているのに。
「侍祭を増やして欲しい」
「え、あ、う。うう…僕の他にですか? でも、ボドワール様もまだ現役ですし」
さっきから情事の時のレオナルドと比べようとしてしまう頭をぺぺぺと手を振って振り払い、ほんのりと赤くなった顔のままレオナルドを見上げた。
そこに居たのは穏やかな優しいだけの恋人ではなかった。
力強い肉食獣のような瞳に変化した瞳に見つめられてしまえば、離さないとばかりに抱きしめられた身体がまた熱を上げる。
「リーシャの仕事が減れば、今よりセックスできるだろ」
「せっ……!」
リーシャの身体は怖いほど素直で、それだけでさっきまで苛まれた下腹部がキュンと疼き、掴まれた腰はズクリとした。
頭よりも身体の方が先に反応するなんて、どれだけ自分はイヤらしいのだろうと顔が火照るのを感じながら俯き、レオナルドの胸に額を押し付けた。
自分がこうなったのはどう考えてもこの男のせいだ。男と女の行為の存在は知っていても、その気持ちよさと依存性を知らなかったリーシャの身体に刻みつけたのは、他の誰でもない、恋人のレオナルドだ。ほんの少しの恨めしい気持ちと共に、最中を思い出し想像してしまう自分の下賎な心についこの国の神、スラーナディア神に懺悔したいように思った。
「リーシャ」
それでも、やっぱり恋人の声が頭頂部から聞こえてくると恨めしいと思う心は一瞬で霧散してしまう。この優しい声が好きだ。自分の貧相な身体を大切そうに、愛おしそうに抱き締める逞しい腕が好きだ。恋人の精悍な顔も、金の髪も、気持ちよくさせてくれる指も、貪られるようなキスをする唇も。自分を無我夢中にさせてくれる彼のモノも。
そして何より。リーシャを心の底から愛おしいと伝えてくれる心が好きだ。
「……っ」
「腰、押し付けてんの。エッロ」
「ふ…っ、…」
「リーシャ」
萎えていても分かる大きさのレオナルドに、比べるのも烏滸がましい自分のぴょこんと反応しかけたリーシャを押し付けるようにクイクイと腰を動かしていたことを教えられ、羞恥心に顔が熱くなる。さっき散々したのに、身体は浅ましいほど彼を求めてしまう。
聖職者らしからぬこの姿を誰かに見られたら、きっと幻滅される。親代わりに育て慈しんでくれたレイディットだって呆れてしまうだろう。
「ちゃんと言えって。どうして欲しい」
レオナルドは最近兎に角言わせたがる。この男は獣のようにリーシャを食い尽くす割にリーシャの言葉がなければ始めてくれない時が多くなった。
恥ずかしくて、穴があったら二度と地中から出てきたくないほどに埋まりたい。
それなのに。
「、っ…、レオナルド、さま。僕…まだ」
「ん?」
「まだ…レオナルド様が、足りない、です」
「で?」
モジモジとしながらも期待に目を潤ませてレオナルドを見上げる。意地悪な恋人は分かってるくせに続きを促してくる。
「だから、その、……もう一回えっちしたいです……」
恥ずかしすぎて小さくなる声は、それでもきっとレオナルドの耳に届いたと思う。その証拠に彼の喉が嬉しそうに小さく笑っていた。
無意識に俯いた顔をクイッと上げさせられて目と目が合った。
「仰せのままに」
そして深いキスをされお互いに熱さを取り戻した身体を重ね合い、夜は更けていった。
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