【完結】秘める華が暴かれる時

七咲陸

文字の大きさ
22 / 25
番外編

抱きしめて、キスをして②

しおりを挟む

  フレイ兄さまがトボトボと帰宅する背中を見て、カッツェはまだ怒っている様子だった。

「カッツェ、そんなに怒らないで。ごめんね…ぼくこんなつもりじゃ」

「…………今すぐフレイ以外の者と結婚させたい所ですがっそれはセティが悲しむのでしません。しませんけど……!」

  暫く絶対に許さない、と何故かカッツェは意気込んでいる。

「良いですか?セティ。恋人とは甘えても甘えられても良い存在です。現に僕はお兄様に甘えますし、お兄様も僕には甘えてくれます」

「え! レーヴェさまって甘えるの?!」

「コホンっ、そこはどうでも良いのですっ」

  何だか信じられなくてびっくりして涙が止まってしまった。カッツェも何だか顔を真っ赤にして目を逸らしてしまった。余計なことをいってしまったかもと恥ずかしそうにしている。甘えられている時のことを思い浮かべているのかな、と想像した。

「勿論プラトニックな愛も存在するでしょう。触れ合わなくとも恋人は名乗れます。けど、一方が望んでいるのに返さないのは平等でなくなり、そこには深く溝が出来てしまいます」

「うん……」

「セティが望んでいるのに、何も返さず知らないフリをしたあの筋肉ダルマは恋人という名前に胡座をかいた只のアホです。そんなアホには反省させるのみです」

「う、うん……?」

「今日のセティは侍従ではなく私の友人です。セス。食事の準備を、あとベッドは別の部屋のを。二人で寝るのでその準備もお願いします」

「畏まりました」

  カッツェはテキパキと執事のセスに指示を出し、他にいたメイド達にもあれこれ指示を出す。メイド達もニッコリと微笑んでぼくの手繋いでどこかに連れていこうとする。どこに行くのか分からなくて、カッツェに振り返ると良い笑顔で行ってらっしゃいと手を振っている。ぼくは一体これからどうされるんだろう。

「さ、セティ様。こちらのお部屋にどうぞ」

「ここ、って……え?ぼく、侍従で」

「今日はカッツェ様のご友人であると伺っておりますよ。みんな、準備出来てる?」

  見るといつも仲良くしてくれているメイド達が、勿論、と大きくニコニコと頷き色んな道具を持っている。

  そしてぼくは、みんなの手を借りてわちゃわちゃと全身ピカピカにされてしまった。

「一度セティ様の肌に触ってみたかったんですよね」

「そうそう。いつ見てもツルツルタマゴ肌。カッツェ様ももちろん素敵ですけど、セティ様は何もしてないと聞いてたので本当か確かめたかったわ」

「お尻なんかもっちり桃肌じゃない。全女子の敵レベルですよ」

「腕も細いのに程よく肉がついてて気持ち良いです…」

「みてこのお顔。プリプリのむき茹でたまご肌。信じられない。少し手入れしただけよ。流石20代」

  もみくちゃにされて着替えをさせられてカッツェと一緒に食事をした。食事が終わる頃になるとレーヴェさまが帰宅され、ぼくは帰ろうとするけれどニコニコとしたままカッツェはぼくを離してくれなかった。

「……カッツェには私も勝てないんだ。今日は私は辞退するから友人同士でパジャマパーティーしておくれ」

  レーヴェさまはちょっぴりため息をついた。怒っている様子はなくてむしろカッツェをこれ以上刺激したくない様子だった。

  二人でベッドに潜り込むと、カッツェはずっと手を繋いでくれた。フレイ兄さまよりは小さくて細くて少し冷たいけれど、それでも離したいなんて思ったりはしなかった。

「フレイが明日来たら、一つ我儘を言ってみてはどうでしょうか」

「フレイ兄さまに? ……でも、困らせたくないよ」

「フレイは今日、世界の終わりのような絶望を感じているはずなので、一つくらいどんな我儘でも聞いてくれますよ」

  いつも礼儀正しく荒らげた様子のないカッツェがふん、と鼻息を鳴らす。

「ワガママ……なんでもいいのかな?」

「手を繋いでくれとか、一緒に寝てくれとかそんな小さな事じゃないことにしましょう」

「例えば?」

「……深く傷ついたから、でっかい宝石のついた指輪を買ってくれ、とか」

「ええー、要らないや」

「た、例えばです!例えば!」

「カッツェも思い浮かばないんでしょ」

  ぼくがそう言うと、二人で顔を見合わせてクスクスと笑った。

  二人であーでもない、こーでもないと悩んでいるうちにぼく達はいつの間にか眠ってしまった。それでも、二人が繋いだ手は朝まで離れることはなかった。


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

幸せな復讐

志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。 明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。 だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。 でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。 君に捨てられた僕の恋の行方は…… それぞれの新生活を意識して書きました。 よろしくお願いします。 fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。

手切れ金

のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。 貴族×貧乏貴族

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

処理中です...