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番外編
抱きしめて、キスをして②
しおりを挟むフレイ兄さまがトボトボと帰宅する背中を見て、カッツェはまだ怒っている様子だった。
「カッツェ、そんなに怒らないで。ごめんね…ぼくこんなつもりじゃ」
「…………今すぐフレイ以外の者と結婚させたい所ですがっそれはセティが悲しむのでしません。しませんけど……!」
暫く絶対に許さない、と何故かカッツェは意気込んでいる。
「良いですか?セティ。恋人とは甘えても甘えられても良い存在です。現に僕はお兄様に甘えますし、お兄様も僕には甘えてくれます」
「え! レーヴェさまって甘えるの?!」
「コホンっ、そこはどうでも良いのですっ」
何だか信じられなくてびっくりして涙が止まってしまった。カッツェも何だか顔を真っ赤にして目を逸らしてしまった。余計なことをいってしまったかもと恥ずかしそうにしている。甘えられている時のことを思い浮かべているのかな、と想像した。
「勿論プラトニックな愛も存在するでしょう。触れ合わなくとも恋人は名乗れます。けど、一方が望んでいるのに返さないのは平等でなくなり、そこには深く溝が出来てしまいます」
「うん……」
「セティが望んでいるのに、何も返さず知らないフリをしたあの筋肉ダルマは恋人という名前に胡座をかいた只のアホです。そんなアホには反省させるのみです」
「う、うん……?」
「今日のセティは侍従ではなく私の友人です。セス。食事の準備を、あとベッドは別の部屋のを。二人で寝るのでその準備もお願いします」
「畏まりました」
カッツェはテキパキと執事のセスに指示を出し、他にいたメイド達にもあれこれ指示を出す。メイド達もニッコリと微笑んでぼくの手繋いでどこかに連れていこうとする。どこに行くのか分からなくて、カッツェに振り返ると良い笑顔で行ってらっしゃいと手を振っている。ぼくは一体これからどうされるんだろう。
「さ、セティ様。こちらのお部屋にどうぞ」
「ここ、って……え?ぼく、侍従で」
「今日はカッツェ様のご友人であると伺っておりますよ。みんな、準備出来てる?」
見るといつも仲良くしてくれているメイド達が、勿論、と大きくニコニコと頷き色んな道具を持っている。
そしてぼくは、みんなの手を借りてわちゃわちゃと全身ピカピカにされてしまった。
「一度セティ様の肌に触ってみたかったんですよね」
「そうそう。いつ見てもツルツルタマゴ肌。カッツェ様ももちろん素敵ですけど、セティ様は何もしてないと聞いてたので本当か確かめたかったわ」
「お尻なんかもっちり桃肌じゃない。全女子の敵レベルですよ」
「腕も細いのに程よく肉がついてて気持ち良いです…」
「みてこのお顔。プリプリのむき茹でたまご肌。信じられない。少し手入れしただけよ。流石20代」
もみくちゃにされて着替えをさせられてカッツェと一緒に食事をした。食事が終わる頃になるとレーヴェさまが帰宅され、ぼくは帰ろうとするけれどニコニコとしたままカッツェはぼくを離してくれなかった。
「……カッツェには私も勝てないんだ。今日は私は辞退するから友人同士でパジャマパーティーしておくれ」
レーヴェさまはちょっぴりため息をついた。怒っている様子はなくてむしろカッツェをこれ以上刺激したくない様子だった。
二人でベッドに潜り込むと、カッツェはずっと手を繋いでくれた。フレイ兄さまよりは小さくて細くて少し冷たいけれど、それでも離したいなんて思ったりはしなかった。
「フレイが明日来たら、一つ我儘を言ってみてはどうでしょうか」
「フレイ兄さまに? ……でも、困らせたくないよ」
「フレイは今日、世界の終わりのような絶望を感じているはずなので、一つくらいどんな我儘でも聞いてくれますよ」
いつも礼儀正しく荒らげた様子のないカッツェがふん、と鼻息を鳴らす。
「ワガママ……なんでもいいのかな?」
「手を繋いでくれとか、一緒に寝てくれとかそんな小さな事じゃないことにしましょう」
「例えば?」
「……深く傷ついたから、でっかい宝石のついた指輪を買ってくれ、とか」
「ええー、要らないや」
「た、例えばです!例えば!」
「カッツェも思い浮かばないんでしょ」
ぼくがそう言うと、二人で顔を見合わせてクスクスと笑った。
二人であーでもない、こーでもないと悩んでいるうちにぼく達はいつの間にか眠ってしまった。それでも、二人が繋いだ手は朝まで離れることはなかった。
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