23 / 25
番外編
抱きしめて、キスをして③
しおりを挟む次の日、お昼過ぎにやってきたフレイ兄さまはカッツェの言っていた通り世界の終わりのような絶望を感じている顔つきで姿を見せた。
「フレイ兄さま……」
そっと身体に触れると、途端に瞳を潤ませてぼくをぎゅうぎゅうに抱きしめてきた。久しぶりの抱擁が嬉しくて、フレイ兄さまの服にシワが寄るのも気にせずに掴んだ。
「……フレイはこのまま一週間の休暇です。お兄様、構いませんね」
「うん、カッツェの好きなように。セティは別にこのまま居てくれて良いけれど?」
「セティのお休みも頂きたく存じます!」
「……だってさ、カッツェ?」
フレイ兄さまの懇願に、カッツェがため息をついて了解した。
「但し、必ず戻ってくるように。僕だって寂しいんですからね?」
「……うん…っ!」
友人の言葉に泣きたくなるほど嬉しくてぼくは胸がいっぱいだった。
帰りの道中、ずっとフレイ兄さまは手を繋いでくれた。そして沢山反省したと教えてくれた。
ぼくのことを恋人とは思いつつも、幼いままぼくが抜けきらず、触れるのに戸惑ってしまっていたせいであんな態度をとってしまったと話す。
レーヴェさまにも相当呆れられたと話す。思いが通じあっているのにどうしてこじらせるような事をするのか、と言われたらしい。
レーヴェさまもカッツェに言わなかったことをたくさん後悔された。そのせいでミラー伯爵に危うく餌食になる所だった、と時折思い出しては苦しそうにしている。
みんな、沢山後悔して、それでも前を向いてるんだなぁ。と思う。
フレイ兄さまはいっぱい謝ってくれた。でもこれは、ぼくも本当は手を繋いでとか、抱きしめて、とかそういうことを言わなかったのが良くなかったと思ったのでぼくも一緒に謝った。
謝り合い過ぎてよく分からなくなって、昨日のカッツェの時のように二人で笑顔になった。
「昨日ね、カッツェと一緒にベッドで話したんです」
「え。本当に一緒に寝たのか。嘘だろう。本当か」
「フレイ兄、さま?目が怖いです…?」
「いや、いやなんでもない。続けてくれ」
なんだかいつも綺麗な瞳が一瞬濁って、瞬きもしなかったけど大丈夫だろうか。
「それで、あの…ワガママを言った方が良いって教えてくれたんです」
「ああ。なんでも言ってくれ」
「あぅ……あの、あの……じゃあ……」
まだ帰りの道中だ。けれど人通りはなく、2人だけなので勇気を振り絞って言うことに決めた。
大丈夫。フレイ兄さまはこんなことで怒ったりなんかしない。だってぼくのことを好きって、抱きしめてくれる。だから大丈夫。
すぅ、と息を吸って、吐いて、呼吸を整えた所で胸につっかえたものを吐き出すように力強く。
「ぼくとっ! セックスしてください!!」
フレイ兄さまは目を開いたままぶっ倒れてしまった。
55
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
幸せな復讐
志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。
明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。
だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。
でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。
君に捨てられた僕の恋の行方は……
それぞれの新生活を意識して書きました。
よろしくお願いします。
fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。
手切れ金
のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。
貴族×貧乏貴族
淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる