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番外編
僕の優しい婚約者 ③
しおりを挟む紡→紬に修正させて頂きました。混乱していた方居ましたら大変申し訳ありませんでした……!
「この方はダメ。前にパーティーでお会いしましたが礼儀がなってませんでした」
お母様が厳しい目付きでいう。
「この人もだ。この間のお披露目の時にボーッとしていた。良くないな」
お父様も口調が厳しい。
「あ、この方は僕もご挨拶したことがあります。良い方ですけど…下から上までジロジロ見る方なので好ましくなかったです」
義兄の祈里さんも腕を組んでいつになく真剣である。
「それは却下だ。ああ、ここの息子は経営が上手ではありません。こっちの息子はまだあまり業績には反映してませんがそこそこの手腕です。ただ、少し我が強いところが瑕ですね」
祈里さんの旦那様である慧さんも慧さんらしい視点から一緒に悩んでいる。
僕はというと、大人の世界の話でついていけないというのが本音だ。色々政界、経済界について学んではいるけれど、それだけじゃない視点の話になると全然分からない。だって、会ったことない人達なのだから。
「紬はどういう方が好みですか?」
「へぁ…」
「性格はどんな人が良いか? 穏やかそうとか、キビキビしてるとか、優しいとか、カッコイイとか」
「あぅ…」
「クラスで良いなーって思う人居ますか?この子かっこいいなぁって。僕はあんまりスポーツが得意じゃなかったから、サッカーが得意な子がカッコよく見えて」
「ぇ、ぅ……」
「祈里?後で家で話し合おうか」
四者四様に聞かれ、クルクルと目の前が回る。
双子を産むのが霜永家のしきたりとは分かっていたけれど、確かに旦那様が居ないことには始まらない。けど、その旦那様になる人に僕の好みはあるのかと聞かれても、正直よく分からない。
だって恋とかしたことないのだ。
「これだけたくさんあるけれど、なかなかどうして見つからないものですねぇ」
「慧さんがもう一人居たらなぁ」
「! ま、待ってください、父様!慧さんは一人です!ダメです!」
「あら祈里。結婚して番にまでなって子供もいるのにまだ余裕がないのは良くないですよ」
「うぐ…」
慧さんは三人のやり取りにニコニコとしている。いや、祈里さんを見ているので、祈里さんの慌てように機嫌が良いのかもしれない。さっきまでちょっと機嫌悪かったのに、早い切り替わりだった。
なんかいいなぁって思った。慧さんが、とか父様が、とかではなく、この四人のような関係になりたいと思った。
「どうだい?紬くん。どんな人が良いかな?」
慧さんに聞かれてパッと向く。僕はまた少し考え込んで、それからもう一度前を向いた。
「僕…こんな風に仲良くみんなでお話してくれる……そんな旦那様が良いです」
子供っぽいことを言っている自覚はある。十五にしてまだ仲良くとか言ってるのかと呆れられてしまうかもしれない。
でも、この四人のようになりたい。一人のことでみんなで悩んで、考えて、笑って、慰めてくれる。そんな優しくて素敵な旦那様がいい。
「……ええ、そうね。私も、そんな方が来てくれると嬉しいです」
そんな僕の絵空事を一蹴しないで、微笑んで聞いてくれる。こんな家族になりたいと本気で思う。
「さて。じゃあこちらに残った御仁をもう一度みんなで見ましょう。なるべく紬の負担にならない人数まで絞らなければ」
「保育園のお迎え時間は大丈夫かい?」
「まだ大丈夫です。紬くん、ほら一緒に見よう。写真だけなんだから、紬くんはかっこいいな、とか素敵だな、とかだけでいいんだよ?」
ここにある釣書は既に政界や経済界で力がある人達だけになっている。今話しているのは数字や書面では分からない内面や裏事情だけ。僕はその辺も分からないからと祈里さんは姿だけでも見るように促してくれる。
「祈里さんの…婚約者さんは慧さん以外に居たのですか?」
「僕? 居なかったんだ。母様と父様がずーっと悩んでてね。僕も紬くんの年齢だったし、全然わかんなくて二人にくっついて見てるだけだったなぁ。跡継ぎとは決まっていたけど、儀式はしてなかったし」
「祈里の頃は全然良き御仁が居ませんでした。 祈里に相応しいと考えていたのが慧さんだったんです。ただ、皇グループのトップで長男でしたし、伊織の我儘もあったので…泣く泣く諦めていたのですよ」
「はは、お義母さん。私を褒めても祈里と子供の動画ファイルしか出てきませんよ」
「後で必ず送ってください!」
あはは、と笑い声が部屋に響き渡り、あーでもないこーでもないと僕達は祈里さんと慧さんが保育園のお迎えに行くまで悩み続けたのだった。
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