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番外編
俺の可愛い婚約者 終 ※
しおりを挟む霜永家のオメガはお綺麗である。
そのお綺麗な感じが上流階級の人間たちにとっては垂涎ものであり、なおかつ他家に嫁げば確定で優秀なαを産む、また跡継ぎになれば双子の美しいΩを産むためその奇跡的な現象にあやかりたいという人間は後を絶たない。
霜永家としてもその血を絶やさないためにαを厳選する側となっている。
そんな上流階級の遊びのようなやり取りが心底くだらないと思っていた。
紬と会うまでは。
「ほら。少し食べろ」
「んむ、や、やぁ……っぐす、燈夜さん、なんで、どこ行ってたの……」
発情期が少し落ち着いたところでベッドで意識を失うように寝ていた紬から離れた。その間に寒かったのか、目を覚まして『どこ、どこぉ……!』と泣き出してしまっていた。
裸の紬に脱ぎ捨てていた自分のシャツを着せて後ろから抱きしめるように囲ってもまだ少しグズっている。後ろから皮ごと食べれる葡萄を一つ放り込もうとしてもイヤイヤと首を振る。
「燈夜さん、燈夜さん……」
「分かった分かった。少し食べたらだ。食べなきゃヤらねぇ」
「やだ、やだ。燈夜さん…」
振り向いて泣きながら抱きついてくる。まだ柔らかい少年の身体はしっとりときめ細やかな肌をしている。可愛い顔は涙でうるうるさせ、ぎゅむぎゅむと抱きつく様はαの庇護欲を存分に煽った。同時に紬はΩのフェロモンをこれでもかと出して、なおかつそれを俺の全身に纏わりつかせてくる。無意識にしているそれは凶悪で、どんなαもこの誘惑には勝てないだろうなと思う。
紬のやっていることは、霜永家本来の力らしい。
「燈夜さ、ぅむ、んく、食べた、食べたからぁ…!」
「水も飲んだらな。ほら」
「ん、ちゅ、ん、く……は、もっとぉ…」
「いくらでも」
少しでも栄養を取らせるためにスポーツドリンクを口移しで飲ませると、お気に召したのかキスをせがんでくる。
婚約者と確定した日に霜永家当主の旦那から呼び出され、霜永家のΩについての詳しい説明がされた。
双子を産むのは運であるが、双子でなくてもすぐに孕む体質らしい。そして霜永家の跡継ぎとなった時点で特殊な能力が開花する。
発情期を迎えると、αは確実に離れられなくなるという抗えない香りを纏わせられてしまう。本来αはΩを何人も番を作ることが出来るはずなのに、その強烈な香りは優秀なαに自らを孕ませるまで絶対に逃がさないようにする為だと伝えられているらしい。
『祈里はまだ跡継ぎ候補だった。姉がああだったから、不安でな。けれど紬はもう憂いなく継がせることが出来るので跡継ぎの儀を行った。あの時点から、少しずつ能力が発現するんだ』
そう説明され、今、紬と擬似セックスをするだけで分かるこの能力に、見通しが甘かったかと苦笑したくなる。
当主の旦那から貰った強力な抑制剤でもクル。『鋼の意志と神へ誓うと言うのは分かった。そして紬に誓え。いいか。結婚するまでは決して孕ませるな。他家に付け入らせる隙は与えるな。その代わり我慢するご褒美というか、取引といこう。十六で結婚を許可する』と言われたので全身全霊で紬の痴態を見ても我慢している。
あと一年。我慢すればするほど、実は熟し、味わい深いものとなるだろうと確信して。
「燈夜さん、燈夜さん…、さっきの、さっきのまたして下さい……」
「あ? ああ。お前あれすげぇ気に入ってんなァ?」
「だって、燈夜さんが…ぁんっ!」
後ろから腰を掴んで下から打ち付けるように揺すると、良い顔で鳴いている。
「俺が?」
「あっ、あん! や、ぁ…っ、とうや、さんがっ、うれし、そ…っぁ!あンっ!」
「ははっ…!嬉しいよ。なぁ?紬。早く、早く結婚したいだろ?」
「したい、ぁ!するぅ…っ!あっ!」
俺を優しいと言う紬。可哀想に。こんな無理やり教え込むように言わせて、優しくない大人に囲われて。
けど絶対に後悔させたりしない、と擬似セックスで絶頂している紬を見て誓った。
--------
霜永紬
霜永家の分家からの養子。最初は責任とか感じてなかったけど、分かってくる年齢になるにつれてだんだん重責に感じるようになる。お腹痛いのはストレスもあるけど子宮が疼いていたせい。番が出来れば治まる。
燈夜のことは一生優しい人だと思って生きていく。政治やら経済的に重要な席に行くけれど、燈夜が全て裏で手を回しているので汚い部分は見ることはない。
花菱燈夜
霜永家に次ぐ名だたる家の次男。正直ちょっとグレていた時期がある。今回のお見合いも無理やり連れていかれていて、あー下らねぇ……って思いながらバックレようか悩んでいた時に紬を見て、「最高の可愛いが和服着てる……は?俺が一から育てるわ」となる。たまに口が悪くなるのは紬を口説いたり、抱いてる時だけ。紬が可愛すぎてつい素が出ちゃう。
紬の(霜永家当主)の能力の補足
運命の番でなくとも運命の番と勘違いさせるほどのフェロモンを出す。それゆえαは他に目移りしなくなる。ちなみに番ってからも他のαに軽く出せるのでみんな霜永家のΩが欲しくなる。もっと開花すると日常的に振り撒くようになる。祈里もほんの少しだけ出せる。ちゃんと儀式してないので開花はしない。
番ったはずのΩ側が他人に能力を出せるなんて、執着するα側は耐えられないので、せめて意図してやらないように代々α側にしか伝えられない。
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読んで下さってありがとうございました!
感想ありがとうございます!
紬の初夜は、きっと燈夜の我慢が爆発するので多分凄いです笑
読みたいと仰って頂いて嬉しいです。思いついたら書いてみますね。
読んで下さってありがとうございました!