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第8話
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「ど、どういうことだ、ギャラストが我が国を攻めているとは誠か!?」
他国の賓客が大勢いる場で、大声で宣うアホがいた。
言わずと知れた?私の元婚約者だ。
この状況をどうするか。とそのとき
「シルヴェスターの秘宝を寄越せ、だと?」
冷気が漂うほどに底冷えする声がアリクの口から漏れた。
どう見ても、こちらのほうをなんとかするのが先のようだ。
「あ、あのアリク兄様?落ち着いてください」
アイラは、何故かとてつもなく怒っているアリクをどうにか落ち着かせようと、語りかける。
しかし、アリクは可愛い妹の声すら聞こえないほど怒り狂っていた。
ギャラストの言う、シルヴェスターの秘宝とは、アイレイシア・シルヴェスターのことだ。
アイラ自身は知らないが、シルヴェスター一族及び、その領地のものたちは皆知っている。
そして、秘宝というからには、シルヴェスター一族も領民もアイラを大切にし、アイラも自身が秘宝と言われていることは知らないが、その思いを真摯に受け止めている。
そのような絆があるにも関わらず、上から目線の脅しをされて、怒りを顕にしないほうがおかしい。
それに加え、アリクは妹であるアイラを目に入れても痛くないというほどに溺愛している。
そんな溺愛する妹を、バカな理由で奪われそうになるなど、アリクからすればふざけるなと言いたくなることであろう。
だからこそ、アリクが狂ったような笑みを口元で浮かべていてもなんら問題はない。
例え、まわりの者が恐怖に戦いていたとしても。
溺愛する妹の声も聞こえないほど、怒りを顕に
「いい度胸だ。そちらがその気ならば、こちらも容赦する必要はない」
アリクはそう言い残して、その場から去っていった。
無視される形になったアイラは、ため息をつく。
「はあ、どうしたものか」
アリクのほうに伸ばしていた手をおろし、悩んでいると、まわりがざわざわとざわめき出した。
「ど、どういうことだ!グリュンは他国から戦争を仕掛けられているのか!」
先ほどのアホの言葉で、現状を知ってしまった賓客たちは混乱のなかにいた。
最初の言葉を皮切りに、皆口々に騒ぎだす。
兄のほうもどうにかしなくてはいけないが、アイラはとりあえずこの惨状をどうにかするのが先のようだと結論づけた。
「皆さん!落ち着いてください!」
朗々と、それほど大きな声量ではないが、それでいて会場全体に響く声で言い放つ。
皆がアイラの言葉に耳を傾け、先ほどまでざわめいていた者たちもアイラの言葉で落ち着きを取り戻し始める。
「状況は確かに異常事態ですが、我がシルヴェスター家の者がおります。この場にいらっしゃる皆々様をお守りすることなら王都の警備と我が家で分担すれば破れることは絶対にあり得ません。だからご安心くださいませ」
アイラは、状況の説明をすることなく、自分たちの力なら守れると断言することで、皆の心を落ち着かせようとした。
「ま、誠か?シルヴェスターとはそこまでの者たちなのか?」
他国の、しかもシルヴェスター家が管轄する領地とは反対に隣接する国の使者は、半信半疑の疑問を投げ掛ける。
アイラはその疑問を投げ掛けてきた使者の方を向く。
「ええ、貴殿の国とは密接していませんので、知らないのも当然でしょうが、我が家の者たちは皆精鋭揃い、しかも狙いは我がシルヴェスター家とのこと、我が家は興って以来、無敗を誇っております。そして、現在の王国元帥である叔父上は我が一族の中でも指折りの指揮官です。天と地がひっくり返ろうとも我が国が負けることはもとより、国の中心部であるここまで来させるようなこともさせません。ですから賓客の皆々様は本来の目的である、我が校の卒業生の獲得に勤しんでいただき、予定通りの帰国ができるよう用意致します。安心してください」
アイラは賓客たちに真摯に諭し、最後に安心しろと締めくくる。
アイラの言葉に賓客たちは皆安心した様子で、各々の目的たる人材確保にはしる。
そして、アイラはその様子を少し観察し、混乱することはないと判断した。
他国の賓客が大勢いる場で、大声で宣うアホがいた。
言わずと知れた?私の元婚約者だ。
この状況をどうするか。とそのとき
「シルヴェスターの秘宝を寄越せ、だと?」
冷気が漂うほどに底冷えする声がアリクの口から漏れた。
どう見ても、こちらのほうをなんとかするのが先のようだ。
「あ、あのアリク兄様?落ち着いてください」
アイラは、何故かとてつもなく怒っているアリクをどうにか落ち着かせようと、語りかける。
しかし、アリクは可愛い妹の声すら聞こえないほど怒り狂っていた。
ギャラストの言う、シルヴェスターの秘宝とは、アイレイシア・シルヴェスターのことだ。
アイラ自身は知らないが、シルヴェスター一族及び、その領地のものたちは皆知っている。
そして、秘宝というからには、シルヴェスター一族も領民もアイラを大切にし、アイラも自身が秘宝と言われていることは知らないが、その思いを真摯に受け止めている。
そのような絆があるにも関わらず、上から目線の脅しをされて、怒りを顕にしないほうがおかしい。
それに加え、アリクは妹であるアイラを目に入れても痛くないというほどに溺愛している。
そんな溺愛する妹を、バカな理由で奪われそうになるなど、アリクからすればふざけるなと言いたくなることであろう。
だからこそ、アリクが狂ったような笑みを口元で浮かべていてもなんら問題はない。
例え、まわりの者が恐怖に戦いていたとしても。
溺愛する妹の声も聞こえないほど、怒りを顕に
「いい度胸だ。そちらがその気ならば、こちらも容赦する必要はない」
アリクはそう言い残して、その場から去っていった。
無視される形になったアイラは、ため息をつく。
「はあ、どうしたものか」
アリクのほうに伸ばしていた手をおろし、悩んでいると、まわりがざわざわとざわめき出した。
「ど、どういうことだ!グリュンは他国から戦争を仕掛けられているのか!」
先ほどのアホの言葉で、現状を知ってしまった賓客たちは混乱のなかにいた。
最初の言葉を皮切りに、皆口々に騒ぎだす。
兄のほうもどうにかしなくてはいけないが、アイラはとりあえずこの惨状をどうにかするのが先のようだと結論づけた。
「皆さん!落ち着いてください!」
朗々と、それほど大きな声量ではないが、それでいて会場全体に響く声で言い放つ。
皆がアイラの言葉に耳を傾け、先ほどまでざわめいていた者たちもアイラの言葉で落ち着きを取り戻し始める。
「状況は確かに異常事態ですが、我がシルヴェスター家の者がおります。この場にいらっしゃる皆々様をお守りすることなら王都の警備と我が家で分担すれば破れることは絶対にあり得ません。だからご安心くださいませ」
アイラは、状況の説明をすることなく、自分たちの力なら守れると断言することで、皆の心を落ち着かせようとした。
「ま、誠か?シルヴェスターとはそこまでの者たちなのか?」
他国の、しかもシルヴェスター家が管轄する領地とは反対に隣接する国の使者は、半信半疑の疑問を投げ掛ける。
アイラはその疑問を投げ掛けてきた使者の方を向く。
「ええ、貴殿の国とは密接していませんので、知らないのも当然でしょうが、我が家の者たちは皆精鋭揃い、しかも狙いは我がシルヴェスター家とのこと、我が家は興って以来、無敗を誇っております。そして、現在の王国元帥である叔父上は我が一族の中でも指折りの指揮官です。天と地がひっくり返ろうとも我が国が負けることはもとより、国の中心部であるここまで来させるようなこともさせません。ですから賓客の皆々様は本来の目的である、我が校の卒業生の獲得に勤しんでいただき、予定通りの帰国ができるよう用意致します。安心してください」
アイラは賓客たちに真摯に諭し、最後に安心しろと締めくくる。
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そして、アイラはその様子を少し観察し、混乱することはないと判断した。
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