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彼女の受難
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ここはカラール王国、水の清らかさが特徴の小さな国でした。
その国は国自体はあまり大きいとは言えませんが、代々の王が賢王であったため、他国からも一目置かれている国だった。主に政策や商売に。
当代国王もその辣腕をふるい他国の王侯貴族たちに、知らぬものはいないというほど顔や人柄が広まっていた。
そして当代の後継である王太子も実に素晴らしい人格者だとか。
しかし、かの国の裏側はとても深い闇のようだった。
「何度言えば気が済むのですか。私はあなたなんかと結婚などいたしませんと何度も申し上げています。ほかの方をあたってください!」
「ほかの者なんて僕の目には映らないよ。僕の目に映る愛しいものは君だけだ。いい加減僕と結婚をして毎日気が狂うほど愛し合おうよ」
気持ちの悪い笑い声をあげながら、カラール王国第三王子シエルリード・ドルド・カーラは同じくカラール王国の子爵令嬢である、シルフェイル・レイ・リバスルに詰め寄っていた。
じりじりと下がり続ける彼女にじわじわと近づいていく彼。
彼らは、この会話を何十回と続けながら、彼女が逃げ彼が追いかけるを繰り返していました。
この国の王族は頭がよくて素晴らしい人格者か、頭が良いが、頭のねじが数百本くらい外れている人間しか生まれません。
前者は今の時代では、当代国王カルロス・ドルド・カーラやその長男であり王太子である、ライル・ドルド・カーラなどがいる。
そして後者は当代国王の正妻である、アイシャ・デイス・カーラや第三子であるシエルリード・ドルド・カーラなどだ。
どういう原理かは分からないが、なぜか王族にはその二通りの人間しか生まれない。
前者の人間は、歴代の王たちがそうなのだと思います。
後者の人間は、所謂天才のことです。
この国の天才の定義は、二つのことを満たしたもののことを言います。
一つ目は、素晴らしい才能があること、もう一つは常人ならば当然持っている常識や衝動、欲望などが薄いもしくはないこと。
この二点を満たしたものがこの国では天才と呼ばれる。
それ以外は天才ではなく、秀才などだ。
そう言った背景があるからか、この国の王はその後者の天才たちをうまく使ってこの国を盛り立ててきた。
賢王と言われる所以は、この天才たちをうまく使う技量があるからだとこの国の中枢は思っている。
そして当代の王カルロスは、妻であるアイシャには言うことを聞かせられるが、息子であるシエルリードはたまにしか言うことを聞かせられない。(最初の頃は彼も王の言うことを聞いていた)
その例は王が彼に縁談話を持ち掛けた時だ。
彼は基本は王の命令を守っていた。
しかし彼はその類稀なる才の代わりに肉親に対する情や女性に対する情が薄かった。
王はそのことをとても気にしていたので、嫁をあてがおうとした。
その相手に選ばれたのは、当代の宰相を務めているサラーディ公爵の娘だった。
その娘は気立てもよく、息子の女性に対する情が薄いところも分かったうえで、結婚を快諾してくれる、素晴らしい結婚相手だった。
そうと決まれば善は急げとばかりに、王は自身の執務室に息子と嫁候補の公爵令嬢を呼び出した。
公爵令嬢の名はシェリア・ラーナ・サラーディ。
王は息子にこう切り出した。
「こちらの令嬢と婚約してもらいたい」
王は早々に結婚してもらいたいと思っていたが、流石に早すぎると考え直し、こう言った。
王のこの言葉に息子であるシエルリードは、きっぱりあっさりすっばりと、
「いやです。用がこれだけならば私は失礼します」
とだけ答え、王の執務室からさっさと出て行ってしまった。
王は茫然自失と息子が出て行った扉を眺めていた。
この時、王は知らなかった。
彼の心を穿ち愛という感情を彼にもたらした女性がいることに。
その国は国自体はあまり大きいとは言えませんが、代々の王が賢王であったため、他国からも一目置かれている国だった。主に政策や商売に。
当代国王もその辣腕をふるい他国の王侯貴族たちに、知らぬものはいないというほど顔や人柄が広まっていた。
そして当代の後継である王太子も実に素晴らしい人格者だとか。
しかし、かの国の裏側はとても深い闇のようだった。
「何度言えば気が済むのですか。私はあなたなんかと結婚などいたしませんと何度も申し上げています。ほかの方をあたってください!」
「ほかの者なんて僕の目には映らないよ。僕の目に映る愛しいものは君だけだ。いい加減僕と結婚をして毎日気が狂うほど愛し合おうよ」
気持ちの悪い笑い声をあげながら、カラール王国第三王子シエルリード・ドルド・カーラは同じくカラール王国の子爵令嬢である、シルフェイル・レイ・リバスルに詰め寄っていた。
じりじりと下がり続ける彼女にじわじわと近づいていく彼。
彼らは、この会話を何十回と続けながら、彼女が逃げ彼が追いかけるを繰り返していました。
この国の王族は頭がよくて素晴らしい人格者か、頭が良いが、頭のねじが数百本くらい外れている人間しか生まれません。
前者は今の時代では、当代国王カルロス・ドルド・カーラやその長男であり王太子である、ライル・ドルド・カーラなどがいる。
そして後者は当代国王の正妻である、アイシャ・デイス・カーラや第三子であるシエルリード・ドルド・カーラなどだ。
どういう原理かは分からないが、なぜか王族にはその二通りの人間しか生まれない。
前者の人間は、歴代の王たちがそうなのだと思います。
後者の人間は、所謂天才のことです。
この国の天才の定義は、二つのことを満たしたもののことを言います。
一つ目は、素晴らしい才能があること、もう一つは常人ならば当然持っている常識や衝動、欲望などが薄いもしくはないこと。
この二点を満たしたものがこの国では天才と呼ばれる。
それ以外は天才ではなく、秀才などだ。
そう言った背景があるからか、この国の王はその後者の天才たちをうまく使ってこの国を盛り立ててきた。
賢王と言われる所以は、この天才たちをうまく使う技量があるからだとこの国の中枢は思っている。
そして当代の王カルロスは、妻であるアイシャには言うことを聞かせられるが、息子であるシエルリードはたまにしか言うことを聞かせられない。(最初の頃は彼も王の言うことを聞いていた)
その例は王が彼に縁談話を持ち掛けた時だ。
彼は基本は王の命令を守っていた。
しかし彼はその類稀なる才の代わりに肉親に対する情や女性に対する情が薄かった。
王はそのことをとても気にしていたので、嫁をあてがおうとした。
その相手に選ばれたのは、当代の宰相を務めているサラーディ公爵の娘だった。
その娘は気立てもよく、息子の女性に対する情が薄いところも分かったうえで、結婚を快諾してくれる、素晴らしい結婚相手だった。
そうと決まれば善は急げとばかりに、王は自身の執務室に息子と嫁候補の公爵令嬢を呼び出した。
公爵令嬢の名はシェリア・ラーナ・サラーディ。
王は息子にこう切り出した。
「こちらの令嬢と婚約してもらいたい」
王は早々に結婚してもらいたいと思っていたが、流石に早すぎると考え直し、こう言った。
王のこの言葉に息子であるシエルリードは、きっぱりあっさりすっばりと、
「いやです。用がこれだけならば私は失礼します」
とだけ答え、王の執務室からさっさと出て行ってしまった。
王は茫然自失と息子が出て行った扉を眺めていた。
この時、王は知らなかった。
彼の心を穿ち愛という感情を彼にもたらした女性がいることに。
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