執着系王子様はお嫌いですか?はい嫌いです

ライ

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愛の形はそれぞれ

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シルフェイルの屋敷に毎日の様に通っている、シエルリードだが、暇なわけではない。
彼は王族に生まれる後者の、天才だ。
その能力は、人の心理を読み解くことに特化している。
勿論、それ以外の能力が低いわけでは決してないが、こと人の心理を読み解くことで、シエルリードの右に出るものはいない。
シエルリードはそれを生かし、自国の軍を担当している。
彼はその、人の心理を読み解くこと(以下は心理術と記載します)を駆使して兵士の士気を上げ、他国とのいざこざがあれば、全戦全勝、彼の下についた兵士は、どんな腑抜けでも一騎当千の実力者へと変わる。
そんな彼は、他国とのいざこざが無くても、定期的に自国の辺境や王都からの恩恵が薄い地域への視察などで、出かけることがあり、それだけでなく、軍の資金管理もしている。
それだけの仕事がありながら、彼は愛して止まない相手、シルフェイルに会いに行き、烈火の如くに拒絶されている。
例えば。
彼が、シルフェイルの仕事の合間の休憩時を狙ってやって来た時
「ああ、シルフェイル、愛しい俺の姫よ、休憩をしているならば、俺と遠乗りにでも行かないか?今日はよく晴れているからとても気持ちがいいだろう」
「ご機嫌よう、殿下、申し訳ありませんが仕事の合間と言っても、すぐに戻らなければいけないので、お断りいたします」
優雅な礼をしながらも、ぐうの音も出ないほどの断り様だった。
またある時では。
シルフェイルが気分転換に友人と遠乗りに出かけている時
「やあ、シルフェイル、俺の心を離さない気高き姫よ、俺も一緒に行かせてくれ」
「ご機嫌よう、殿下、今日はそのまま、シャルバの港に視察に参りますので、申し訳ありませんが、お断りいたします」
そのとき一緒にいた友人は顔面蒼白だった。
そんなやり取りが何回も続き、そろそろ自分に対する興味が薄れてくるだろうと、シルフェイルが考えていたある昼下がり。
「シルフェイル」
シルフェイルは久方ぶりの休日に、愛馬と遠乗りに出掛けていた。
目的地はリバスル子爵領自慢の、美しい湖がある森だ。
シルフェイルは愛馬とともに、湖の近くにある木に腰掛け、暖かい日射しを浴びていた。
シルフェイルの愛馬も彼女のそばにより、首を撫でられ気持ち良さそうな顔をしていたときに、シルフェイルにとって面倒な相手がやって来て、彼女の名を呼んだ。
つまりはシエルリードである。
彼もまた、立派な体格の軍馬を傍らにおき、シルフェイルのそばまでよってきた。
シルフェイルの顔は、まるでうざいと書かれているかのような表情をしている。
「君が恋しくて追いかけてきてしまったよ」
美形の王子さまにそう言われれば、普通であればほだされるだろう。
しかし、シルフェイルはそんな乙女思考をしていないし、シエルリードは間違っても美形なだけの王子さまではない。
天才的な能力を持ち、頭のねじが数十本無い。違う意味で恐ろしい。
観賞用ならば持ってこいの人材だが、関わりあいたいかと問われれば拒否したくなる、そんな王子さまだ。
シルフェイルは物凄く嫌そうな顔をし、すぐに愛馬に跨がり、
「シエルリード様、申し訳ありませんが急用ができたのでそれでは」
逃げるように愛馬を駆けさせた。
しかし、そんなことでシエルリードが彼女を逃がすわけがなく。
「ふふ、追いかけっこかい、君が逃げるなら地の果てでも追いかけるよ」
実に恐ろしいことを言い、彼女の後を追いかけるシエルリード。
「追いかけてこないでくださいよ」
若干引き気味な顔でなんとかそう言うシルフェイルだが、その程度の言葉で止まるなら、そもそもそんなに執着されていない。
つまり何が言いたいかというと。
笑顔なのに恐ろしさしか感じない顔で追いかけてくるシエルリードを、なんとか撒こうと愛馬を駆るが、彼女の健闘虚しく、子爵家まで彼はついてきてしまったのだった。
正確には、急用というのが嘘であり、やっと撒いたと安心した彼女が家に帰ると先回りしたシエルリードがいたという。
急用が嘘であると見抜かれたのだろう。
やっと撒いたと安心した後のこれは、かなり背筋に冷たいものが流れることだろう。
冷たいもの、つまりは冷や汗である。
今日も今日とて、シエルリードは絶好調であった。
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