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序章

私の中の日常が終わりを告げる

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私は、平々凡々な生き方を、それなりに頑張りながら適当な異性と子をなし、それなりの幸せを感じながら、八十くらいで寿命をむかえる普通な人生が待っていると、このときまでは感じていた。そうこのときまでは。

ある日私は、朝起きて朝食を食べ、いつものように中学校へ行こうとして、家を出て、2・3分してから、目の前を黒いリムジンが止まり、そこから出てきた全身黒ずくめのアヤシイ人達に、四肢を押さえられ、問答無用で車のなかに引きずり込まれ、これみよがしに口元に苦い味のタオルかなにかを、嗅がされたと認識すると、そこで意識がとぎれてしまった。
意識を取り戻して最初に見たものが、白い天井で、起き上がると私はソファーの上に寝かされていたようだ。
状況観察してわかったのは、私は誘拐されたのだろう。
常識的には大人しく犯人を待つのが得策だろうが、生憎私は多少性格がひねくれていた。
なので大人しく相手の思うままにするのも癪なので、居場所だけでも特定しようと、部屋の回りを観察することにした。
結果わかったことは、ソファー以外に何も置かれていない簡素な部屋で、窓もなく入り口と言えるのはドアが一つと、子供の大きさなら何とか通れそうな空気穴だけだった。
空気穴があるということは、もしかしたら此処は地下かもしれない。
そうなると脱出するのは難しいのでとりあえずは、犯人を待つのが得策かもしれない。
只待つのは愚策なので、気になっていることを考えよう。
まず一つが何故、私を誘拐したかだ。
私は体格的に小さく見え、よく小学生に間違えられるが、朝のあの時間を狙うのならば、あの場所は得策とは思えない。
何故ならばあの通路は通学路になっており、大きな道路とも面しているから、見つかりやすい。
もし私が犯人ならば、あんな見つかりやすい所は避け、狭い道で小学生の子供のいる家庭をそれとなく探し、家の近くで、子供が出て、少し歩いたところを狙う。
あんな気づかれやすい場所を狙うとは、犯人はバカなのか、或いは私が目的だったか、のだどちらかだが、私は誘拐されるような恨みは買っていないはずだ。
とそこで足音が聞こえ、体感時間で1分くらいしてようやくドアが開き、そこから一人の男が入ってきた。
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