この手が生み出すキセキ ~ハンクラ魔女のお店にようこそ~

あきづきみなと

文字の大きさ
9 / 33

ワイヤーワーク・2

しおりを挟む
軟らかい針金で作ったワイヤーワークは、レイチェルが愛用する懐剣の鞘を飾ることになった。派手ではないが遊び心のあるデザインは、男女を問わない。
「鞘の拵えは、凝ると重いし武骨なものが多いから……これならとてもいい」
嬉しそうに微笑むレイチェルはずいぶん気に入ってくれたようで、ヴィオラとしても喜ばしい。
「お気に召したなら良かった。また何かあれば申し付けください」
「ああ、ありがとう。是非またよろしく」
実はレイチェルだけでなく、ジョゼフィーヌもヴィオラの作品を気に入っていて、彼女は自分でも作っている。
ベースだけヴィオラが作ったものに自分で彩りを添えたりして楽しんでいるので、また最初から自分で作ることもたまにはするかもしれない。なかなか時間が必要な作業だが、できればストレス解消のためではなく、自身が楽しんでほしい。
ジョゼフィーヌに渡したフェルティング用の針は、ヴィオラがスキルで作ったものだ。細いが硬く折れたり曲がったりしない。先端に細かい細工を施して羊毛が絡まり易くなっている。そしてその他に、その針を使うことで精神的な安寧を図る魔法を組み込んでみた。
今回レイチェルに渡したワイヤーワークにも、身につけておくことで冷静さを保てるような魔法を入れてある。
この辺りは魔女の面目躍如ということか、師匠の薫陶を経てこの手の魔法を、自分が作る作品に組み込むことができるようになった。
もっと汎用的で弱い効果なら、店に並べた雑貨にも幾らかはある。魔法という『力』はまだまだ新米魔女のヴィオラにはわからないことも多いが、可能性を広げることはできそうだ。
「それで師匠、ご相談があるんですが」
「なんだい」
ヴィオラの師匠たる魔女は魔法街の顔役だ。古参でもあり、個性の強い魔法使いや魔女達を上手く取りまとめている。本人に言わせると、よっぽど無茶をやらかさない限りは放っておく、という放任主義なのだが。
「お嬢様達と話してて思ったんですけど。……私、そろそろ錬金術スキルをレベルアップさせたいです」
「ふん。まあ、好きにおし……と言いたいところだが。どういう方向を目指してるかによるわな」
殆ど年頃も変わらないお嬢様達は、しかし家のため領民のため国のためと、己の行くべき途を見出だし、そのために努力している。それを見ていると、自分ももう少し頑張ろうかと思う。
「今は素材を使っての錬金術だけど、その先へ……素材を創る、術へ」
錬金術スキルは、素材を使って道具や薬などを作る。特にヴィオラは前世の記憶のおかげか、装飾品やそれに使う部品を作るのが得意だ。
錬金術で作る道具は魔法を組み込み易いのもあり、重宝されている。
しかし素材から作るとなれば話は変わってくる。普遍的な物質から、自分の望む形質を有する素材へ変換するのは、錬金術の一つの大きなステップだ。
「……まあ、やるだけやってご覧な。……今のままでも、食っていける程度の技能にゃなるけどねえ」

   
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

とある執事の日常 ~お嬢様の中身は恐らくギャル~

冬兎
ファンタジー
うちのお嬢様は絶対におかしい。 「道路やばくない? 整備しよ」 「孤児院とか作ったら?」 「困ってる人助けるのなんか当たり前っしょ」 貴族令嬢らしからぬ口調で突拍子もない提案を次々とぶつけてくるお嬢様、レティシア・リオネール。執事の俺、クラウスは今日も彼女の無茶振りに振り回される。 不思議なことに、お嬢様の理想論は必ず実現し効果を発揮する。 孤児院は完成し、医療制度は整い、領地は驚異的に発展していく。 元勇者の伯爵様、脳筋騎士団長、くのいちメイド長、双子の妹たち―― 濃すぎる面々に囲まれながら、俺は今日もお嬢様の思いつきを形にしていく。 気づけば、振り回されることに悦びを感じ始めている俺はもう手遅れかもしれない。 R8.1.20 投稿開始

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...