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ビーズ細工・4
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「ドレスに宝石、はあまりつけないわね……重すぎるから」
「……なるほど」
正直、ヴィオラもあまり期待していた訳ではない。
細かい細工をする技術が、この世界では発達していない。錬金術やその他細工のスキルを有する者が幾らか出来るものの、それを生かす先もあまりないのだ。その辺り、一応以前も確認済みだったのだが、アンリエッタは一般の服飾関係にはかなり詳しいので念のため聞いてみた。
「宝石の職人というのは、貴族のおうちで抱えていたりされるんでしょうか」
「うち、はそういうのはいないわ。ドレスには力を入れているけれど、宝石はあまり扱いがなくて……」
「なるほど、家によってその方向性が違うんですかね」
「そうね……宝石に詳しい家、というのはちょっと心当たりがないけれど」
「? ドレスに宝石を合わせたりとかはされないんですか?」
「え? そうね、あまり聞かないわ」
アンリエッタと話したところによると、この世界でも宝石とかその手の美しいものは希少で珍重されているし、身につける習慣もあるにはあるが、服に合わせるという意識がないようだ。また宝石はむしろ男性的なものとして扱われ、あまり女性がつけることはないらしい。つけてもちょっとした小さなものに限られ、大きな宝石をこれ見よがしにつけるなど、そもそも考えられない、という。
「うーん。私がやりたいのは、宝石とは違うんですが……誤解を招きそうな気もしますね」
「そうね、正直目指すところがよくわからないわ。聞いてもいいものなのかしら」
アンリエッタは、少なくともヴィオラの目指す方向性に一番近い令嬢だ。服飾に詳しく、その素材や流行り廃りについても伝手がある。また商家にも伝手はあって、実際の商売もかんでいるからなかなかたくましいお嬢様だ。
だが、ヴィオラの知識は彼女とはちょっと違う。ヴィオラは、前世の記憶があってそれを再現したい。そしてそのためならば、この敏くついでに計算高い令嬢に協力するのもさだかではなかった。
そしてヴィオラの話すことはアンリエッタにとっても利が大きい。そのことをアンリエッタ自身良く承知しているから、食いつきがいい。
「でも確かに、あなたの話はとても興味深い。それをうちの主産物である布類と組み合わせて売り込めれば、大きな利益につながるでしょう。その、相手はもちろん厳選しなくてはならないけれど……」
アンリエッタによれば、国内にもいくつか、宝石を産する土地はある。だがこの国で宝石は、あまり価値のあるものではない。単純に綺麗な飾りとしての意味しか持たず、正装の際につけるとしてもまあおまけ的な代物、特に決まりもない。
たださすがに、きちんとした席には「光の強いものを」、という程度の指標がある。逆に光の弱い、要は透明度の低い結晶や反射率の低いものは基本的に低く見られている。 透明度が高く反射率も高い、金剛石は評価されているが、他の石はそこまででもない。真珠や瑠璃のように透明度のないものはおもちゃ扱いらしい。
「……私としては、『宝石』というほど高価なものを使う気はないんです。色つきのガラスでもいいくらい、なんですが」
「却ってその方が、作るには大変かもしれないわ。そういうことの出来る職人はいるはずだけれど、数が少ないのよ」
「……ガラスはねえ……職人仕事ですものね」
「基本的には。色の着いたガラス、なんていうと専門の職人しか扱えないわ」
「そうなんですか」
「……なるほど」
正直、ヴィオラもあまり期待していた訳ではない。
細かい細工をする技術が、この世界では発達していない。錬金術やその他細工のスキルを有する者が幾らか出来るものの、それを生かす先もあまりないのだ。その辺り、一応以前も確認済みだったのだが、アンリエッタは一般の服飾関係にはかなり詳しいので念のため聞いてみた。
「宝石の職人というのは、貴族のおうちで抱えていたりされるんでしょうか」
「うち、はそういうのはいないわ。ドレスには力を入れているけれど、宝石はあまり扱いがなくて……」
「なるほど、家によってその方向性が違うんですかね」
「そうね……宝石に詳しい家、というのはちょっと心当たりがないけれど」
「? ドレスに宝石を合わせたりとかはされないんですか?」
「え? そうね、あまり聞かないわ」
アンリエッタと話したところによると、この世界でも宝石とかその手の美しいものは希少で珍重されているし、身につける習慣もあるにはあるが、服に合わせるという意識がないようだ。また宝石はむしろ男性的なものとして扱われ、あまり女性がつけることはないらしい。つけてもちょっとした小さなものに限られ、大きな宝石をこれ見よがしにつけるなど、そもそも考えられない、という。
「うーん。私がやりたいのは、宝石とは違うんですが……誤解を招きそうな気もしますね」
「そうね、正直目指すところがよくわからないわ。聞いてもいいものなのかしら」
アンリエッタは、少なくともヴィオラの目指す方向性に一番近い令嬢だ。服飾に詳しく、その素材や流行り廃りについても伝手がある。また商家にも伝手はあって、実際の商売もかんでいるからなかなかたくましいお嬢様だ。
だが、ヴィオラの知識は彼女とはちょっと違う。ヴィオラは、前世の記憶があってそれを再現したい。そしてそのためならば、この敏くついでに計算高い令嬢に協力するのもさだかではなかった。
そしてヴィオラの話すことはアンリエッタにとっても利が大きい。そのことをアンリエッタ自身良く承知しているから、食いつきがいい。
「でも確かに、あなたの話はとても興味深い。それをうちの主産物である布類と組み合わせて売り込めれば、大きな利益につながるでしょう。その、相手はもちろん厳選しなくてはならないけれど……」
アンリエッタによれば、国内にもいくつか、宝石を産する土地はある。だがこの国で宝石は、あまり価値のあるものではない。単純に綺麗な飾りとしての意味しか持たず、正装の際につけるとしてもまあおまけ的な代物、特に決まりもない。
たださすがに、きちんとした席には「光の強いものを」、という程度の指標がある。逆に光の弱い、要は透明度の低い結晶や反射率の低いものは基本的に低く見られている。 透明度が高く反射率も高い、金剛石は評価されているが、他の石はそこまででもない。真珠や瑠璃のように透明度のないものはおもちゃ扱いらしい。
「……私としては、『宝石』というほど高価なものを使う気はないんです。色つきのガラスでもいいくらい、なんですが」
「却ってその方が、作るには大変かもしれないわ。そういうことの出来る職人はいるはずだけれど、数が少ないのよ」
「……ガラスはねえ……職人仕事ですものね」
「基本的には。色の着いたガラス、なんていうと専門の職人しか扱えないわ」
「そうなんですか」
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