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ビーズ細工・5

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もちろんヴィオラも、それで諦める気はない。アンリエッタや他の令嬢だけでなく、魔法街の魔女や魔法使いにも協力を頼んで、その辺りを更に詰めてみた。
「……それで、出来たのがそれかい」
「はい」
おばばの前、平皿に一掴みの粒が置かれている。老齢で目の弱ったおばばに合わせて光量を絞った室内に、それでも色とりどりであるのは見て取れた。
「ほう。……確かにずいぶんと小さい粒が作れたもんだが」
その粒は小麦粒よりも一回り小さい。けれど鮮やかに何種類かの色合いがでて、これだけでもなかなかに美しい。
しかもその粒は中心に穴が空いている。糸を通して縫い付けたり、或いはごくごく細い針金ワイヤーを使って形作ったり、が出来るのだ。
普通にこの世界で使われている飾り物としては、他に類を見ない極小サイズだ。しかしだからこそ、ドレスはじめ布物に縫い付けたりが叶う。
「出来れば、糸も透明なものがあれば良かったんですけど」
「……透明な糸、だったら確かレースの職人とかに聞いた覚えがあるね。よっしゃ、あんたがここまで頑張ったんだ。そちらはあたしがどうにかしてやろうじゃないか」
師匠の魔女も、老いたりとは言えれっきとした女性だ。さすがに普段身につけるものは地味だが、綺麗な色合いは見ていると寿命が延びるといい、要は綺麗なもの、可愛いもの好きなのだ。
ヴィオラの作り出したビーズは、まだ本人的には色数も少ないし発色もまだまだ、いろいろ発展の余地があるのだが。おばばのお眼鏡にはかなう、綺麗なものではある。
「ありがとうございます! それが届いたら、小さい作品を作ろうと思うんです。また、是非見てください!」
「おやおや、やる気にあふれてるねえ。まあいいさ、そこまで言うならあたしも楽しみにしとくよ」

ビーズの素材は概ね色ガラスだ。正確には、ガラスの原料である珪砂に着色料になる各種の金属をごく微量加えたもの。しかし中には天然石を削って作ったものも含まれていた。宝石として使うには原石が小さすぎ、或いは色合いが良くないなどの理由で弾かれたものを使っている。
それらは、宝飾ギルドから粗悪品として払い下げられたものが原料だ。なのでそれほど高価なものではない。
だが、ぱっと見にはちょっと変わった色合いの砂利にしか見えない原石は、ヴィオラの精密なスキルで小さな、けれども良く輝くビーズに生まれ変わる。さすがにガラスビーズよりは一回りほど大きい、それでもやっと麦粒ほどの、艶やかな煌めき。
「一番映えるのは、やっぱりドレスかなあ……お嬢様たちにその辺も相談してみましょうか」
ものが出来た以上、協力を仰いだ彼女たちにその成果を報告し、更に良いものを作れるよう相談を持ちかけるのは悪い話ではないだろう。双方にとって利のあることであり、同時にヴィオラにとっては、前世で諦めざるを得なかった諸々のかけらを、この世界で取り戻すよすがになるはずだ。
素材はそれほど高価なものではない、けれどそれを加工して作るビーズは美しく、そこから更に手を加えれば付加価値はますます上がるだろう。美しいものにはそれに見合った値がつく、それがスキル持ちを含めて職人を育てることだ。
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