この手が生み出すキセキ ~ハンクラ魔女のお店にようこそ~

あきづきみなと

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B品・2

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「もう、みんなどうしちゃったのよ」
ぶつぶつ文句をこぼしているリリィは、自分が同じ学生たちから遠巻きにされていることを気づいていない。ただ、攻略を進めていたはずの対象が姿を見せなくなったことに苛立っている。
リリィが前世でやっていたゲームには、彼女が現在攻略中(と本人は認識している)優等生王子と脳筋騎士、チャラ男という三人が攻略対象だが、隠し攻略キャラがもう一人いる。
その最後の一人は学生ではない。世界を股にかける大商人で、とてもお金持ち、という設定だった。正直なところ、それ以上詳しい設定はリリィもあまり覚えていない。後はただ学生キャラとは違う、大人の魅力あふれる美形イケメンだったことくらい。
もっとも他のキャラだって皆それぞれタイプの違うイケメンだ。正統派美形の王子に野性的な騎士、華やかな令息。その誰もがステキで選べないー!というのがリリィの本音なのだが、しかし肝心なその相手が見つからない。
王子はたまにしか学校に来ないし(「公務」とやらで仕事をしながら学校に通っているそうだ)騎士は大概自分と同じくらいごつい連中とつるんでいて近寄りがたいし、そもそも目も合わない。失礼なことに、自分に気づいていないのではないか。令息の方も顔を見ない訳ではないが、終始何やら忙しそうで、リリィが思い切って声をかけてもあっさりあしらわれる。
「大体、好感度チェックが出来ないのがイタいのよね、初っ端のイベントもスルーされちゃったし」
リリィはあくまでこの世界を、前世でクリアした乙女ゲームの世界だと思っている。自分がその主人公で、世界に愛される唯一無二の女の子、という認識だ。
しかし実際のところ、そのゲーム世界と今この現実との間には大きな隔たりがある。
そもそもリリィは前世から、ゲームをするのに不正データやバグでチートすることを好むタイプだった。地道なステ上げやイベントを重ねて好感度を稼ぐより、数値だけいじって一気にゴールを目指すタイプ、途中経過を楽しむ気持ちがない。
なので細かい設定やストーリーは興味もないしあまり覚えていない。その状況でも、自分が主人公ヒロインであることだけは揺るぎない真実だと思い、その自分はこの世界で絶対に幸せになると信じている。
「うーん、悪役令嬢どもも、あんまり関わってこないし。どうしたもんかしら」
悪役令嬢、とリリィが勝手に呼んでいるのは攻略対象の婚約者である令嬢たちだ。正直、リリィは彼女たちの顔と名前もちゃんと認識していない。
「ったく、ちゃんと悪役の仕事もできないんだから」
身勝手にぶつぶつ言っているリリィは、彼女たちがリリィの実家、フィールズ家について調査していたことも知らない。それによれば貧窮したフィールズ家は、領地と爵位を担保に外国の商家から借金を負っている。かなりの額で返済の見込みは薄く、将来的にその商家の息子がリリィに婿入りすることで帳消しにする予定であるらしい。
問題は、当のリリィ本人そのことを全く知らないことだ。
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