25 / 33
B品・2
しおりを挟む
「もう、みんなどうしちゃったのよ」
ぶつぶつ文句をこぼしているリリィは、自分が同じ学生たちから遠巻きにされていることを気づいていない。ただ、攻略を進めていたはずの対象が姿を見せなくなったことに苛立っている。
リリィが前世でやっていたゲームには、彼女が現在攻略中(と本人は認識している)優等生王子と脳筋騎士、チャラ男という三人が攻略対象だが、隠し攻略キャラがもう一人いる。
その最後の一人は学生ではない。世界を股にかける大商人で、とてもお金持ち、という設定だった。正直なところ、それ以上詳しい設定はリリィもあまり覚えていない。後はただ学生キャラとは違う、大人の魅力あふれる美形だったことくらい。
もっとも他のキャラだって皆それぞれタイプの違うイケメンだ。正統派美形の王子に野性的な騎士、華やかな令息。その誰もがステキで選べないー!というのがリリィの本音なのだが、しかし肝心なその相手が見つからない。
王子はたまにしか学校に来ないし(「公務」とやらで仕事をしながら学校に通っているそうだ)騎士は大概自分と同じくらいごつい連中とつるんでいて近寄りがたいし、そもそも目も合わない。失礼なことに、自分に気づいていないのではないか。令息の方も顔を見ない訳ではないが、終始何やら忙しそうで、リリィが思い切って声をかけてもあっさりあしらわれる。
「大体、好感度チェックが出来ないのがイタいのよね、初っ端のイベントもスルーされちゃったし」
リリィはあくまでこの世界を、前世でクリアした乙女ゲームの世界だと思っている。自分がその主人公で、世界に愛される唯一無二の女の子、という認識だ。
しかし実際のところ、そのゲーム世界と今この現実との間には大きな隔たりがある。
そもそもリリィは前世から、ゲームをするのに不正データやバグでチートすることを好むタイプだった。地道なステ上げやイベントを重ねて好感度を稼ぐより、数値だけいじって一気にゴールを目指すタイプ、途中経過を楽しむ気持ちがない。
なので細かい設定やストーリーは興味もないしあまり覚えていない。その状況でも、自分が主人公であることだけは揺るぎない真実だと思い、その自分はこの世界で絶対に幸せになると信じている。
「うーん、悪役令嬢どもも、あんまり関わってこないし。どうしたもんかしら」
悪役令嬢、とリリィが勝手に呼んでいるのは攻略対象の婚約者である令嬢たちだ。正直、リリィは彼女たちの顔と名前もちゃんと認識していない。
「ったく、ちゃんと悪役の仕事もできないんだから」
身勝手にぶつぶつ言っているリリィは、彼女たちがリリィの実家、フィールズ家について調査していたことも知らない。それによれば貧窮したフィールズ家は、領地と爵位を担保に外国の商家から借金を負っている。かなりの額で返済の見込みは薄く、将来的にその商家の息子がリリィに婿入りすることで帳消しにする予定であるらしい。
問題は、当のリリィ本人そのことを全く知らないことだ。
ぶつぶつ文句をこぼしているリリィは、自分が同じ学生たちから遠巻きにされていることを気づいていない。ただ、攻略を進めていたはずの対象が姿を見せなくなったことに苛立っている。
リリィが前世でやっていたゲームには、彼女が現在攻略中(と本人は認識している)優等生王子と脳筋騎士、チャラ男という三人が攻略対象だが、隠し攻略キャラがもう一人いる。
その最後の一人は学生ではない。世界を股にかける大商人で、とてもお金持ち、という設定だった。正直なところ、それ以上詳しい設定はリリィもあまり覚えていない。後はただ学生キャラとは違う、大人の魅力あふれる美形だったことくらい。
もっとも他のキャラだって皆それぞれタイプの違うイケメンだ。正統派美形の王子に野性的な騎士、華やかな令息。その誰もがステキで選べないー!というのがリリィの本音なのだが、しかし肝心なその相手が見つからない。
王子はたまにしか学校に来ないし(「公務」とやらで仕事をしながら学校に通っているそうだ)騎士は大概自分と同じくらいごつい連中とつるんでいて近寄りがたいし、そもそも目も合わない。失礼なことに、自分に気づいていないのではないか。令息の方も顔を見ない訳ではないが、終始何やら忙しそうで、リリィが思い切って声をかけてもあっさりあしらわれる。
「大体、好感度チェックが出来ないのがイタいのよね、初っ端のイベントもスルーされちゃったし」
リリィはあくまでこの世界を、前世でクリアした乙女ゲームの世界だと思っている。自分がその主人公で、世界に愛される唯一無二の女の子、という認識だ。
しかし実際のところ、そのゲーム世界と今この現実との間には大きな隔たりがある。
そもそもリリィは前世から、ゲームをするのに不正データやバグでチートすることを好むタイプだった。地道なステ上げやイベントを重ねて好感度を稼ぐより、数値だけいじって一気にゴールを目指すタイプ、途中経過を楽しむ気持ちがない。
なので細かい設定やストーリーは興味もないしあまり覚えていない。その状況でも、自分が主人公であることだけは揺るぎない真実だと思い、その自分はこの世界で絶対に幸せになると信じている。
「うーん、悪役令嬢どもも、あんまり関わってこないし。どうしたもんかしら」
悪役令嬢、とリリィが勝手に呼んでいるのは攻略対象の婚約者である令嬢たちだ。正直、リリィは彼女たちの顔と名前もちゃんと認識していない。
「ったく、ちゃんと悪役の仕事もできないんだから」
身勝手にぶつぶつ言っているリリィは、彼女たちがリリィの実家、フィールズ家について調査していたことも知らない。それによれば貧窮したフィールズ家は、領地と爵位を担保に外国の商家から借金を負っている。かなりの額で返済の見込みは薄く、将来的にその商家の息子がリリィに婿入りすることで帳消しにする予定であるらしい。
問題は、当のリリィ本人そのことを全く知らないことだ。
3
あなたにおすすめの小説
婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
過程をすっ飛ばすことにしました
こうやさい
ファンタジー
ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。
どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?
そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。
深く考えないでください。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
とある執事の日常 ~お嬢様の中身は恐らくギャル~
冬兎
ファンタジー
うちのお嬢様は絶対におかしい。
「道路やばくない? 整備しよ」
「孤児院とか作ったら?」
「困ってる人助けるのなんか当たり前っしょ」
貴族令嬢らしからぬ口調で突拍子もない提案を次々とぶつけてくるお嬢様、レティシア・リオネール。執事の俺、クラウスは今日も彼女の無茶振りに振り回される。
不思議なことに、お嬢様の理想論は必ず実現し効果を発揮する。
孤児院は完成し、医療制度は整い、領地は驚異的に発展していく。
元勇者の伯爵様、脳筋騎士団長、くのいちメイド長、双子の妹たち――
濃すぎる面々に囲まれながら、俺は今日もお嬢様の思いつきを形にしていく。
気づけば、振り回されることに悦びを感じ始めている俺はもう手遅れかもしれない。
R8.1.20 投稿開始
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる