この手が生み出すキセキ ~ハンクラ魔女のお店にようこそ~

あきづきみなと

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ビーズ細工・7

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「ねえ、ヴィオラ。あなたのこのビーズ、とても素晴らしいと思うの」
その日訪ねてきたアンリエッタがそう言い出すことはまあヴィオラの方も予想はしていた。見せたその日のうちに、目の色を変えていたのは記憶に新しいところだ。
「お気に召したなら幸いですね」
「それでね。……スキル持ちのあなたには、失礼だと思うのですけれど……この、ビーズ作りのスキル、他の者に教える気はなくて!?」
ぐっ、と互いを隔てるテーブルに身を乗り出して言うアンリエッタに、さすがにヴィオラも返す言葉に迷う。
このご令嬢、アンリエッタは可憐な美少女ではあるが、なかなか商売については鼻が効く。本人もそれが自分の成すべきこと、という自覚があるらしく、熱心に取り組んでもいる。
そしてその彼女がこう言い出すということは、それなりに準備を整えてきているのだろう。
「えぇと……確かに、私一人では手に余る部分もありますね」
苦笑を交えて肯定すれば、アンリエッタは目を輝かせた。
「……アンリエッタ様なら、教える職人にも心当たりがおありかと思いますが」
「ええ、そうなの。あなたのビーズを見たうちの職人たちも、是非やってみたいといって。……必要なスキルはあるかしら」
「出来れば『錬金術』スキルが。……細かい区分だとガラス細工、鉱石研磨や彫金のある人が望ましいかと」
この世界の職人は概ねスキルを持ち、それを研鑽して最終的には自分だけの固有スキルを目指している。そうした固有スキルは、その持ち主にしか出来ない超絶技巧を可能にすると言われ、また同じように研鑽を積んでも個人の資質によって顕現のしかたや効果は異なる。
つまりヴィオラが他の錬金術スキル持ちにビーズ作りを教えても、彼女と全く同等のスキルにはならないだろうし、最終的に出来る品も違う可能性が高い。
しかしその一方で汎用的な品なら、スキルを伸ばせば同じように作れるはずだ。また究極的な品はそれぞれが自分だけのものを作り出せるならば、それも良い。
アンリエッタお抱えの職人ならば、その職業上の基礎スキルは十分だろう。一番数が欲しい、色や形が均等な小粒ビーズならそこまで高いスキルは要らないとも判断している。
さすがにヴィオラが最近作れるようになってきた、クリスタルガラスのように透明感あって輝きの強いビーズの量産は難しそうだが、それは秘匿したいのでむしろ有難い。
「ご理解いただけるかと思いますが、お教えするのは基礎的なことだけにさせてもらえますか。スキルがある人なら、コツさえ掴めば自分でスキルを成長させられるでしょう」
「そうね……ええ、もちろん。逆にスキルが成長しなくとも、基礎的なことが出来るだけでも使い物になるでしょうし」
「或いは、独自のスキル進化が起こればその人だけのスキルが得られる可能性もあります」
「そうね、そう……嫌だわ、そう考えるとなんだかいいこと尽くめじゃない?」
眼をキラキラさせているアンリエッタは可憐なご令嬢なのだが、その目の輝きは商機を見出した熟練商人のそれだ。

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