この手が生み出すキセキ ~ハンクラ魔女のお店にようこそ~

あきづきみなと

文字の大きさ
31 / 33

B品・4

しおりを挟む
最近、リリィ・フィールズはますます不機嫌なことが増えた。
本当なら学園内の貴公子たちに愛を乞われ、いちゃいちゃ甘甘の誰からもうらやましがられる学園生活を送っているはずだった、のに。
肝心なその貴公子たち、つまりリリィにとっての『攻略対象』たちとは、ろくに接点さえない。今や顔を見ることさえ稀な状態だ。もっと言ってしまえば、リリィには学園内で友人と言える存在もいない。

リリィが記憶では、前世のゲームに出てきた『隣国の商会の息子』は隠れキャラだった。ただ、攻略はできていない。隠れキャラだけあってかなり難易度が高かった。一応、出現条件とか大体の攻略方法についてはネットで漁って一通り記憶はしているが。
そもそも、その隠れキャラは基本的に1周目では出てこない。ある程度パラメータを上げた状態のまま2周目に入れば、後半でやっと出てくるレベルだ。
隣国の商会の、当主が愛人との間に作った子どもで世間からは隠されている。しかし実際は父の隠し球として、後ろ暗いことをしたり相手を誑しこんだりとなかなか活躍していた。だが主人公ヒロインに、「あなたは、自分のために生きていいのよ……?」と囁かれ、彼女を守るため父や兄に立ち向かっていく、と言うキャラクターだった。
しかし、実際にはリリィが持ちかけられた婚約の相手はその後継者である長男の方。まだ十代半ばのリリィに対し、三十も超えた小太りでニキビだらけの男を紹介され、さすがに動揺して叫んだものだ。
「あたし、貴族学園に行くんです!もっとお金持ちで、身分も高い人が婚約申し込んできたらどうすればいいの!?」
「その時は、そのお相手とこちらも相談させていただきますよ。……お話し合いは、大事ですから」
にこやかに応じる会長は、しかしその目が笑っていないことにリリィも両親も気づかなかった。
リリィは自分が魅了のスキル持ちであることはわかっている。しかし教会に届けてもいないし一番深く術がかかっている両親もそれに気づいていない(おそらくかかり方が深すぎて認識できない状態)ので、誰にも知られていない、と慢心している。

しかし、その学園に入っても肝心な攻略対象は殆ど関わり合えず、彼女の目論見はいっこうに上手くいかない。
学園内では些か浮いてもいる。魅了のスキルも、殆ど意識しないほど当たり前に使っているのに、彼女に好意を示すのはなんというか魅力的とは言い難いレベルの面子で、それもあまり熱心とは言えない。ある程度熱をあげると、まるでスイッチが切れるようにスッと引いてしまう。甘い言葉を囁かれ幾らか貢がせたりするのが関の山で、それ以上に積極的になる人間は今のところ出てこない。
リリィは知識に欠けが多い。貴族子女としては致命的にものを知らず、なおかつ知ろうとするその心構えもない。彼女が知らないこと、知らなければならないことは当人が思っているより遥かに多いのだ。
その一つがスキル。ゲーム内では『魅力値』と表現されたが、実際今の世界では、他者のスキルを無効化する手段はいろいろある。特にリリィの魅了のような、精神に作用する力には十全の対策がなされているのが現状だ。特に高位貴族の子弟には顕著で、逆を言えばそこまでの家柄ではないと警戒が緩い場合もある。しかし、異常を察知されたらすぐ対策をとられる、のも現実なのだ。
その意味で、彼女は学園内のみならずこの国の貴族社会およびそれに連なる社交界に於いて危険人物と見なされている。当人の全く預かり知らぬところで。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

とある執事の日常 ~お嬢様の中身は恐らくギャル~

冬兎
ファンタジー
うちのお嬢様は絶対におかしい。 「道路やばくない? 整備しよ」 「孤児院とか作ったら?」 「困ってる人助けるのなんか当たり前っしょ」 貴族令嬢らしからぬ口調で突拍子もない提案を次々とぶつけてくるお嬢様、レティシア・リオネール。執事の俺、クラウスは今日も彼女の無茶振りに振り回される。 不思議なことに、お嬢様の理想論は必ず実現し効果を発揮する。 孤児院は完成し、医療制度は整い、領地は驚異的に発展していく。 元勇者の伯爵様、脳筋騎士団長、くのいちメイド長、双子の妹たち―― 濃すぎる面々に囲まれながら、俺は今日もお嬢様の思いつきを形にしていく。 気づけば、振り回されることに悦びを感じ始めている俺はもう手遅れかもしれない。 R8.1.20 投稿開始

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...