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存在意義

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「皆が喜んでくれるので、私も嬉しいです」
笑う紗江に、薬師のおばばは苦笑する。
「そりゃ今更だね、皆あんたには感謝してるんだよ。薬師の若い子達も、今まで習ってきたことが無駄じゃなかったって納得したし。魔法使い達だってそうだろうさ」
「もちろんよ。サエのおかげで色んな発見もあったし新しい魔法の活用方法も出来た。それに何より美味しいもの沢山教えてくれたじゃない、皆大喜びよ」
リリの言葉に紗江は首を傾げた。
「……私のすること、役に立ってました?」
「もちろんよ、当たり前じゃない」
「皆おまえさんには感謝しとるよ」
二人だけでなく、他の誰彼にも助かってるとか良くやってくれてるとか、口々に言われて紗江は微笑む。
「良かったです。本当に」
不意にその眦からぽろりと水滴がこぼれた。
「!?」
「さ、サエ!?どうしたの!?」
動揺する一同の中、大慌てながらリリが問い質してきた。紗江自身、目をしばたたいて硬直していたが、その間にも涙はほろほろ伝い落ちる。
「わ、わかりません……何で、だろう……なんだか、安心したのかな……」
「安心、て……」
リリは呆然としているし、他の魔法使いや薬師達もおろおろしているばかりだったのだが。おばばはさすがに年の功というべきか、苦笑混じりで紗江を抱き寄せ、宥めるようにぽんぽんと背中を叩いてやる。
「安心したのなら良かったよ。……あんたのおかげで、皆自分の作るものを認められたんだ。本当にありがとう」
皺深い手は薬作りで荒れてはいても温かい。本格的に泣きじゃくる紗江に、おばばだけでなくリリやエルス他の女性の魔法使いや薬師達が宥めるように触れてくる。
「そうよ、サエ。貴女が来てくれて良かったわ」
「すごく助かったし、食べ物美味しいし!」
宥める言葉は男性陣からも向けられる。
「そうだそうだ、あんたの作る飯は美味い」
「食べることが楽しみだという、それがわかったよ」
「そうだな、それがあったからこそ……魔物の肉も食ってみる気になったし色々他のものも試してみようと思えた」
口々に告げられる言葉は、紗江に感謝し、彼女の伝えたことやその可能性を喜ぶものだ。
この世界に来てくれて良かった、いてくれて嬉しい、と。
元より紗江自身が望んで来た訳ではない。巻き込まれ、流されるように辿り着いたここだ。
けれどそこで、知識を提供し、アイデアを出して色々試すこと、試行錯誤を繰り返して様々な食材を使うのは楽しく、食べた人達の驚き喜ぶ様子が励みになった。
そうしてその人達から、認めてもらえることはとても嬉しかった。ここで生きていけると、そう思う。
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